2018年3月28日水曜日

天宮1号が大気圏に突入する時刻を4月1日〜2日前後

 地球の大気圏突入まであと数日に迫った中国版宇宙ステーション「天宮1号」を、ドイツの宇宙観測レーダーが撮影に成功した。地上200キロ付近をクルクルまわる機体には太陽光パネルの姿がはっきりと映っており、回転速度を次第に早めているという。

 制御不能になった「天宮1号」をとらえたのは、ドイツのボン近郊にある「フラウンホーファー高周波物理学・レーダー技術研究所(FHR)」の宇宙観測レーダー「TIRA」だ。

 TIRAは、地球上空を周回する引退したロケットや衛星のゴミ(宇宙デブリ)などを探知するために開発された、直径34メートルのレーダーアンテナを備えた観測所で、天宮1号が高度270キロまで降下した先月下旬、はっきりとその姿をとらえた。

 天宮1号が地球上空を周回する速度は時速2万9000キロ。円筒形の機体の大きさは、直径3.4メートル、長さ10.5メートル、重量8.5トンと、ちょうどバス1台分くらいで、昆虫の羽根のように巨大な太陽光パネルを2枚広げている。

 27日に公開された最新画像では、上空205キロ付近まで到達しているのが確認された。天宮1号はクルクルと機体を回転しながら降下を続けており、FHRの研究チームは「大気や気象状況、回転速度によって、数日前にならなければ、正確な落下ポイントが絞れない」と話している。

 米国やイタリアの監視チームは、「天宮1号が大気圏に突入する時刻を4月1日〜2日前後」としている。機体が居住区域に直撃する危険性はかなり低いが、万が一落下物を発見しても、有毒な「ヒドラジン」が付着している場合があるので決して触れず、最寄りの警察か自治体に届け出てほしいとしている。

IBMが予測。近未来を変革する5つの技術

 IBM基礎研究所が、「5 in 5(ファイブ・イン・ファイブ)」と呼ぶ未来予測を発表した。これは、今後5年以内に、ビジネスと社会を根本的に変える5つのテクノロジーについて予測するもので、毎年恒例となっているものだ。

 2018年版は、2018319(現地時間)から、米ラスベガスで開催中の年次イベント「Think 2018」にあわせて発表され、IBM基礎研究所のアーヴィン・クリシュナディレクターは、「かつてないほどに、コンピュータの技術革新を期待させるものになっている」と総括した。

 1つめは、「暗号アンカーとブロックチェーンによる偽造防止」である。

 ここでは、今後5年以内に、日用品やデバイスに埋め込むことができる暗号アンカーが開発され、これによって偽造防止が可能になるという。

 暗号アンカーは、ブロックチェーンの分散台帳技術を用いることで、製品の製造段階から、顧客に到達するまでのサプライチェーン全体を管理。製品が本物であることを保証するという。IBM基礎研究所では、これらの技術を活用することで、食品の安全性保証や製造部品の真贋確認、遺伝子組み換え食品の追跡、偽物の特定、ラグジュアリー製品やブランド品の製造元確認などを行う新たなソリューションを提供できるという。

 また、暗号アンカーを動作させるために、IBMでは世界最小となるコンピュータを開発したことも発表した。約1×1mmというサイズは、インクの点や、塩粒よりも小さいコンピュータであり、1990年代のx86チップで数千個相当の性能を持つという。コストは10セント以下になる見込みだ。このコンピュータを使用するとともに、64枚のマザーボードを搭載した指先に載るボードも同時に公開した。

【お詫びと訂正】初出時に暗号アンカーがインクの点よりも小さいコンピュータとしておりましたが、暗号アンカー自体はコンピュータではありません。お詫びして訂正させていただきます

 2つめは、「ハッカー攻撃を、格子暗号により阻止する」技術である。

 今後、量子コンピュータの登場が見込まれるが、「将来的には、量子コンピュータによって、現在の暗号化プロトコルがすべて解読されてしまうといったことが考えられる。そこで、IBMは、量子コンピュータなどの最新テクノロジーに対応できる暗号化方式を開発しており、現在のコンピュータも、将来の量子コンピュータも解読できない強固な暗号化方式を提供することになる」とした。

 これは、格子暗号化方式と呼ぶもので、この暗号化方式は、すでに米国政府が採用している。「格子暗号を使用し、暗号化した作業ファイルによって、機密データがハッカーに漏洩することはない」と断言した。

IBMが試作した50量子ビットの量子コンピュータ

 3つめは、「海の汚染に、人工知能搭載の顕微鏡で対処する」といった技術だ。

 自律式の人工知能搭載小型顕微鏡を開発し、これにより、水の状態を継続的に監視。自然環境におけるプランクトンの動きを3次元で追跡し、得た情報をもとに、プランクトンの振る舞いと健康状態を予測。

 ここから、石油流出や地表からの汚染源などを特定することができたり、赤潮などの脅威を予測することができたりする。人工知能搭載小型顕微鏡から収集したデータは、クラウドネットワークで管理され、世界中に展開されることになる。

 そして、4つめが、「AIの偏向が急増するなか、偏向のないAIのみが生き残る」というものだ。

 IBM基礎研究所では、5年以内に偏向を持ったAIシステムやアルゴリズムの急増に対抗するための新たなソリューションが登場すると予測。AIの進化には、数多くのデータを使った学習が必要だが、現在の仕組みのままでは、偏向を生むAIが生まれると指摘する。

 そこでIBM基礎研究所では、トレーニングデータセットに内在する偏向を減らす方法を新たに開発したという。これにより、その後、学習するAIアルゴリズムは、不公正が永続されないという。現在、検索エンジンで「ティーンエイジャー」を検索すると白人女性ばかりが表示されるといったことが起こる。IBMでは、「人種、性別、またはイデオロギー的に偏向のないデータで、AIシステムを開発し、教え込むことが極めて重要だと考えている。信頼できるAIシステムを開発するうえで、公平なデータが重要になる」とする。

 また、IBMでは、新たな領域への応用などの際に、トレーニングデータが利用できない場合でも、AIシステムの公平性をテストする方法を考案したという。

 最後が、「5年以内には、量子コンピューティングは主流になる」という予測だ。

 「いまの量子コンピュータは、研究者の遊びの場に過ぎないが、5年以内には、解決不能と考えられていた問題を解決するために、幅広く使われるようになる」とした。

 今回の予測では、量子コンピュータは、大学の教室のあらゆる場所に置かれ、高校でも、ある程度利用できるようになるという。

 IBMでは、水素化ベリリウム(BeH2)での原子結合のシミュレーションに成功。これは量子コンピュータでシミュレートされた最も複雑な分子になり、量子化学における重要な節目になると位置づけている。

 「量子コンピュータは、ますます複雑化する問題に対処し続けることになる」と予測する。

 IBM基礎研究所のクリシュナディレクターは、「これらの技術は、今後のIBM基礎研究所における研究や、顧客企業との最先端テクノロジーの共同開発、AIやブロックチェーン、格子暗号、量子コンピューティングなどのテクノロジー、あるいはビジネスのトレンドによって徐々に明らかになっていくものになる。IBM基礎研究所は、これらの分野に対して、継続的に多大な投資を行っていく」などと述べた。