2018年5月15日火曜日

Pepperの手と人の“触覚”がリアルタイムにリンク——ソフトバンクと慶應大、5Gによる力触覚の伝送実験を実施

 ソフトバンクは2018年5月11日、慶應義塾大学ハプティクス研究センターと共同で、物に触れたり、持ったりしたときの「硬い」や「柔らかい」といった感覚「力触覚(りきしょっかく)」の情報を無線通信で伝送する実証実験を実施し、第5世代移動通信システム(5G)による力触覚伝送の有用性を確認したと発表した。

 今回の実証実験は、同センターが開発した、力触覚の情報を伝送して再現する「リアルハプティクス技術」をコミュニケーションロボットに応用する共同研究の一環として実施したもの。同技術では、現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送することで、力触覚を再現するという。

 実証実験では、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」が装着した力触覚伝送用のグローブと、遠隔地にいる人間が装着した遠隔操作用グローブの間で、力触覚の情報を伝送、再現する実験を、5Gと4Gの無線通信環境下で実施。

 リアルハプティクス技術では、リアルタイムかつ双方向に情報を伝送することが必須で、同期性と双方向性が成立しないと、力触覚を再現できなくなる。

 実験の結果、4Gでは遅延による影響で双方のグローブの動きにずれが発生し、正確に力触覚を再現できなかった。5Gではその特長である1ms(1000分の1秒)以下の超低遅延性により、遅延による影響を受けることなく、高精度な力触覚の伝送、再現に成功した。

 この結果、5Gによる力触覚伝送を活用することで、繊細な力加減が必要とされるロボットなどの遠隔操作が可能になることが分かったとしている。

 また、5Gではリアルタイム映像の伝送も可能なため、遠隔地から操作しながら、その様子をリアルタイムにモニターで確認するなど、今後、ロボット分野のさまざまなシーンで活用されることが期待できるという。

2018年5月12日土曜日

中国がAI教育を本格化、40校がモデルケースに

中国では、政府、大学、企業がサポートする形で、高校生たちへの人工知能(AI)教育が本格化していく気配だ。

中国国内および海外各メディアによれば、上海にある華東師範大学が中国初となる高校生用AI教材を発表したという。教材はまず、中国国内にある40の高校で採用されるが、該当校は「モデルケース」の役割を果たしていくとされている。つまり今後、中国全土の高校生を対象としたAI教育カリキュラムのベースになるのが、今回開発された教材および導入校の経験&ノウハウというわけだ。

なお教材は、中国が誇るユニコーンAI企業「センスタイム」(商湯科技)と華東師範大学が共同で開発したもの。センスタイムは、顔認識AIおよび関連サービスの分野で頭角を現している企業で、日本の自動車メーカー・ホンダなどとも共同研究を行っている。

現在、世界的にAIへの関心が高まる一方、研究・開発をリードする人材が不足しているという実情が世界各国で伝えられている。そんななか、米国を追い抜きAI産業で覇権を握りたい中国が、基礎教育段階に一策を投じてきたということになりそうだ。

中国では、「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」の一角、バイドゥが、3年以内に中国国内で10万人のAI人材を育成するとも宣言している。最近では、李彦宏会長夫婦が北京大学に6.6億元(約110億円)を寄付した。同資金は「北京大学百度基金」としてAI研究に活用される。ちなみに、リー会長自身は、1991年に北京大学情報管理学科を卒業したOBだ。

シャオミも武漢大学と提携しAIラボを設立。共同で理論および技術研究を進めながら、人材も育成する。シャオミは、同プロジェクトのために1000万元を投じる予定だ。

このように、スピード感や圧倒的な物量で攻勢をしかける中国が、いずれ政界のAI産業をリードしていくのではないかとの憶測が流れるなか、欧米からは否定的な意見も出てきている。

英オックスフォード大学は今年3月、レポート「Deciphering Chinas AI-Dream」(中国のAIの夢を読み解く)を公開。米国と中国の「AI潜在指数」(以下、AIPI)を比較し、中国の人工知能の力量は、米国の半分だと評価した。なお、AIPIは、「ハードウェア」「データ」「アルゴリズム」「商業化」の4側面から、国家のAI能力を総合的に測定した指標だ。

レポートでは、AI研究人材の数で中国(3.9万人)は米国(7.8万人)のおよび半分に過ぎず、論文の引用数や特許活用数でも米国が大きく上回っていると分析している。

レポートが唯一中国の優位を認めたのは「データ量」だった。今後、AI教育を高校から取り入れることで、豊富なデータを活かせるAI人材を効率的に生み出していくことができるのだろうか。人材不足という課題解決に向かう中国の動きに注目したい。