前回のおさらいと本稿の目的
シリーズ第1回では、OpenClaw Skillsのアーキテクチャ概念と、なぜ再利用可能なSkill単位でエージェントロジックを分割するべきかを解説した。本稿ではいよいよ実践に入り、ローカル開発環境のセットアップからシンプルなSkillの実装・動作確認まで、ステップバイステップで進める。
エージェント開発において「再利用可能なツール生成」の重要性は、NVIDIAがDABStepベンチマークで1位を獲得した事例からも明らかだ。同チームはNeMo Agent Toolkitを用いてデータサイエンティスト的な思考を模倣するエージェントを構築し、Skillをモジュール化することで複雑なタスクを分解・再利用した [Source: https://huggingface.co/blog/nvidia/nemo-agent-toolkit-data-explorer-dabstep-1st-place]。OpenClaw Skillsも同様の設計思想に基づいており、本稿で構築する環境はそのまま実務レベルのプロジェクトに発展できる。
1. 必要な前提環境
作業を始める前に、以下の環境が整っていることを確認する。
- Python 3.10以上
- pip または uv(推奨)
- Git
- Anthropic APIキー(Claude系モデルを使用する場合)
- OpenAI APIキー(オプション)
uvを使う場合、依存関係の解決が大幅に高速化されるため推奨する。
# uvのインストール curl -Lsf https://astral.sh/uv/install.sh | sh 2. OpenClaw Skillsのインストール
まず新しい仮想環境を作成し、パッケージをインストールする。
uv venv .venv source .venv/bin/activate uv pip install openclaw-skills pipを使う場合は以下のコマンドで代替できる。
pip install openclaw-skills インストール後、CLIが正常に動作するか確認する。
openclaw --version # openclaw-skills 0.4.2 3. APIキーの設定
OpenClaw Skillsは複数のLLMバックエンドをサポートしている。環境変数での管理が推奨される。
# .envファイルを作成 cat > .env << 'EOF' ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-xxxxxxxxxxxxxxxx OPENCLAW_DEFAULT_MODEL=claude-3-5-sonnet-20241022 OPENCLAW_LOG_LEVEL=INFO EOF プロジェクトルートに.envを配置すると、OpenClaw Skillsは自動的に読み込む。本番環境ではシークレット管理サービス(AWS Secrets Manager、GCP Secret Managerなど)を使用し、APIキーをコードやファイルにハードコードしないこと。
4. プロジェクト構造の初期化
openclaw init my_first_skill cd my_first_skill 生成されるディレクトリ構造は以下の通り。
my_first_skill/ skills/ __init__.py tests/ __init__.py openclaw.yaml .env README.md openclaw.yamlはプロジェクト設定ファイルであり、デフォルトモデル・ログレベル・Skill検索パスなどを定義する。
5. 最初のSkillを実装する
skills/text_summarizer.pyを新規作成し、以下のコードを記述する。
from openclaw.skills import skill, SkillContext from typing import Annotated @skill( name="text_summarizer", description="与えられたテキストを指定された言語で要約する" ) def summarize_text( ctx: SkillContext, text: Annotated[str, "要約対象のテキスト"], language: Annotated[str, "出力言語(例: ja, en)"] = "ja", max_sentences: Annotated[int, "要約の最大文数"] = 3, ) -> str: prompt = ( f"以下のテキストを{language}で{max_sentences}文以内に要約してください。\n\n" f"{text}" ) response = ctx.llm.complete(prompt) return response.text @skillデコレータがこの関数をOpenClaw Skillsのエコシステムに登録する。SkillContextはLLMクライアント・ロガー・設定へのアクセスを一元管理するオブジェクトであり、Skill間でコンテキストを安全に受け渡す役割を担う。
6. ローカルでの動作確認
openclaw run skills/text_summarizer.py \ --text "大規模言語モデル(LLM)は自然言語処理の分野に革命をもたらした。..." \ --language ja \ --max-sentences 2 出力例:
[INFO] Loaded skill: text_summarizer [INFO] Calling claude-3-5-sonnet-20241022 大規模言語モデルは自然言語処理に革命をもたらし、幅広い応用が進んでいる。 その影響は研究から産業界まで多岐にわたる。 Skillの単体テストはtests/ディレクトリに配置し、pytestで実行する。OpenClaw SkillsはモックコンテキストMockSkillContextを提供しており、LLM APIを呼び出さずにSkillのロジックを検証できる。
7. 非同期実行とストレージ連携
大量のデータを扱うSkillでは、結果の永続化が必要になることが多い。Hugging Face Hubが提供するStorage Bucketsのような外部ストレージとの連携も視野に入れておくと良い [Source: https://huggingface.co/blog/storage-buckets]。OpenClaw Skillsではctx.storageインターフェースを通じてS3互換のストレージに接続でき、大規模バッチ処理の結果を効率的に保存・共有できる。
次回予告
本稿では環境構築からシンプルなSkillの実装・動作確認までを一通り体験した。第3回では複数のSkillを組み合わせてエージェントパイプラインを構築する方法と、エラーハンドリング・リトライ戦略について詳しく解説する。
Category: LLM | Tags: OpenClaw Skills, AIエージェント, LLM開発, Python, 環境構築
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