デザインと聞くと、真っ先に思い浮かべるのはアイコンやボタン、スプラッシュスクリーンなど「グラフィックデザイン」ではないだろうか。しかし、英単語「design」では、「設計」という意味合いが強い。つまり、グラフィックだけではなく、画面の構成やユーザーの行動、機能の取捨選択といったものも含めて「デザイン」なのだ。
本来の意味での「デザイン」をするためは、どんな知識が必要なのか?。
「タップ可能なUI要素の快適な最小サイズは、44×44ポイント」と、AppleはUIデザインのガイドラインで定義している。44×44ピクセル未満のボタンは「タップしにくい」と、ばっさり切り捨てているのだ。ユーザーの快適さがUIデザインの肝である以上、快適さよりも優先すべき事項がない限り、このサイズを守るのがセオリーだろう。
44ピクセルのUIパーツを並べていくと「44ピクセルのリズム」が生まれる。実際に「44ピクセル」の注釈を入れた「メール」と「計算機」のスクリーンショットを見た時は、見慣れた画面であるはずなのに「なるほど!」と思わずうなった。
具体例を見ると、「Appleの優秀な開発者たちが試行錯誤の末にたどり着いたマジックナンバー44には、積極的に従う方が良さそうだ」と思えてくる。「人生、宇宙、すべての答え」ほど大げさではないが、「44ピクセルのリズム」がiPhoneアプリ開発において1つの"極意"であることは間違いないだろう。
アプリのアイデアとして出てきた多くの機能案のうち、ほとんどは捨ててしまうべきだというのだ。「限られたリソースの中で、真に価値がある機能を実装せよ」と本書はうたっている。
ここでいうところのリソースとは、iPhoneのハードウェアリソース(画面、メモリ、CPU)だけではなく、ユーザーのリソース(時間や注意力)も含める。ハードウェア的な制約はもちろんだが、ユーザーのアテンションも貴重なリソースだ。考えてみれば当たり前なのだが、今までなかなか持ちにくかった視点である。
「仮説検証」という思考手法からペーパープロトタイピング、UIのブラッシュアップまで、プログラミングに着手する直前までの流れを紙面で体験できる。この付録だけでも、本書を一読する価値がある、といっても過言ではない。特に、操作の簡単さとミス防止、セキュリティについてバランスを取りながら改善していく「送金画面」には、たくさんの学ぶべき点があった。
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