ウェザーニューズは、米NVIDIAと連携し、気象災害による被害軽減を目的に、全世界の雨の状況を高精度に可視化、予測するAIプロジェクトを開始する。
同社によると、近年、気候変動などの影響から、世界各地で気象災害が多発しており、特に東南アジアなどの大雨災害の多い地域では、気象状況の把握や詳細な予測が重要なテーマとなっている。
一方、世界の降水分布を可視化、予測するには、気象レーダーなどの気象観測インフラの整備が進んでいない地域が多く、海上など気象レーダーの観測範囲外では雨を捉えられないといった課題がある。また、既存の物理モデルをベースとした予測技術は限界に近づいているという課題もあるという。
今回、ウェザーニューズが開始するプロジェクトでは、NVIDIAのAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX-1」とディープラーニング技術を活用。日本が保有する高精度な気象衛星画像と雨雲レーダー画像を教師データとして用いて、衛星画像をベースに雨雲レーダー画像を生成し、雨の状況を可視化、予測する。
この技術を利用すれば気象観測インフラの整備は必要がないため、インフラ整備が進んでいないエリアや海上についても、雨の状況を高精度に把握できるようになる。
同プロジェクトでは、第1段階として東南アジアを解析対象エリアとし、その後、他のエリアへも順次拡大していく計画。現地の気象局などへの情報提供やコラボレーションを通して、大雨災害の被害軽減に向けて貢献していく考えだ。
同プロジェクトでは、NVIDIAは、GPUコンピューティングのためのハードウェア、ソフトウェアスタック、そのノウハウを提供。技術協力として、NVIDIAが展開するAIやディープラーニングを使ったスタートアップ事業の支援プログラム「NVIDIA Inception Program」に参画するdAignosis(デエイアイグノシス)がNVIDIA DGX-1を活用したディープラーニング技術を開発する。ウェザーニューズは、新たな気象モデルの開発と運営を行う。
現在気象レーダーでカバーされている地域は地球上の約17%に限られており、地球全体をカバーするには、4000基の気象レーダーが必要だという。これに対し、DGX-1を50台用いれば、世界の1分ごとの気象データを「バーチャルレーダー」で生成できるようになり、コストは8000分の1に抑えられるという。
2018年9月20日木曜日
「ファーストリテイリングがGoogle Cloudと協業」の本当のインパクトは何か
「情報製造小売業」を目指すファーストリテイリングが、「有明プロジェクト」でGoogle Cloudと協業していることを明らかにした。具体的には何をやろうとしているのだろうか。
ファーストリテイリング 代表取締役 会長 兼 社長の柳井正氏が2018年9月19日、同社の進める「有明プロジェクト」でGoogleのクラウド部門であるGoogle Cloudと協業していることを明らかにした。
柳井氏はGoogle Cloudが東京都内で開催しているイベント、「Google Cloud Next Tokyo 2018」の基調講演に登場、「衣料の開発・製造・販売でナンバーワンだと思っている私たちが、検索やインターネット、AIでナンバーワンのGoogleと一緒になって開発していく」と述べた。また柳井氏は、「こうしたパートナーシップは、似た考え方を持つ企業同士でしかできない」などと、今回の協業の奥深さを強調した。
ファーストリテイリングのプレスリリースでは、「情報製造小売業の実現に向けては、世界中のデジタルパートナーと協業し、最先端のデジタルイノベーションを活用し続けることが原動力となります。Googleとの協業は、その中の重要な取り組みの一つであり、すでに様々な分野でプロジェクトを始めています。具体例の一つとして、Google CloudのASL(Advanced Solutions Lab)チームと、日本初となるパートナーシップを組み、世界最先端の機械学習や画像認識技術を使った、商品のトレンドや具体的な需要の予測をする取り組みを進めています(原文ママ)」としている。
では、この発表は単純に、需要予測のためにGoogleのAIエンジニアによるコンサルティングを受けるということなのか。あるいはパブリッククラウドについてはAmazon Web Services(AWS)を使ってきたファーストリテイリングが、AIのみについてGoogle Cloudを使うというだけの話なのか。どちらの言い方も、実際の2社の関係を表してはいない。
柳井氏は今回のイベントで、「超情報革命の時代になった。産業を変えた人がその産業の勝者になる。1位になるにはデジタル変革が必要。親父の言っている通りにやっていたら成功しない」と話した。つまり、単純な需要予測の話ではない。ビジネス全体を変える武器として、データを活用しなければならないというのが同氏の考えだ、
一般的な需要予測では単なるトレンド分析。だが、後述するように、ファーストリテイリングでは大量生産商材の大量消費を前提とした需要予測だけを考えてはいない。マスカスタマイザーションおよびテイラーメイドに近いビジネス形態にも対応し、場合によってはニーズを先取りして、新たな製品を開発するのに適した予測を常時行う。これを全世界で、各地域に最適化した形で実行できるというのが、ファーストリテイリングの狙いだ。
柳井氏は、「全世界を対象とした生産、物流、販売をリアルタイムで最適化していくためには、ファーストリテイリングが提供する商品の需要に関わるあらゆるデータを集め、解析していく必要がある。しかも(予測は)毎日変わっていくことになる」と話している。
では、柳井氏が「一緒に開発する」と表現したのはなぜか。文字通り、これが「共同製品開発」だからだ。
Google Cloudグローバルアライアンス&インダストリープラットフォーム部門プレジデントのタリク・シャウカット氏によると、最初にアプローチしてきたのはファーストリテイリングだ。約2年前に柳井氏が米国のGoogle Cloud本社を訪れ、自身の事業とAIに関する思いを語り、Google CloudのAIエンジニアとどう協業できるかを打診してきたという。ちょうど業種別のソリューションを製品化する取り組みを進めようとしていたGoogle Cloudは、両社で小売業に広く適用可能なソリューションを開発していくことに合意した。
「(2社の話し合いで、)需要予測は協業のテーマとして面白いという話になった。そこでまず、ファーストリテイリングのエンジニアチームがカリフォルニアに来て、コラボレーションが始まった。だが、マーチャンダイジングや計画、クリエイティブなど、同社の事業ノウハウは東京の本社にある。そこで次にGoogle Cloudのエンジニアチームを東京に送り込み、共同作業を続けている。このことがきっかけで、ASLの拠点を東京にオープンすることになった」
ファーストリテイリングのプレスリリースにも登場する「ASL」とは、Google Cloudが主要業界の顧客と個別に連携し、各業界に特化した最先端の機械学習/AIソリューションを生み出すプログラムだ。今回の協業を、Google CloudはASLの一環として位置づけている。
「各企業に個別の問題解決であれば、コンサルティング的な仕事であり、一般的には当社のパートナーが担当する。しかし、(今回のように)先端的な取り組みであり、当社がプロダクトとして開発したいと考えたとき、それはASLの取り組みになる」(シャウカット氏)
今回の協業の成果は、いずれGoogle Cloudのソリューションプロダクトとして、他の企業も活用できるようになる。それでもファーストリテイリングは、英語でいう「first mover advantage」、つまりネットの世界ではよく見られる「早いもの勝ち」のメリットを享受できる。前出の「産業を変えた人がその産業の勝者になる」という柳井氏の言葉は、これにつながってくる。
シャウカット氏によると、ファーストリテイリングは予測を継続的に自動で自己修正していくようなシステムを目指しているという。
「柳井氏が今回の協業で求めているのは、自己学習、自己修正機能を備えた需要予測システムだ。一般的な需要予測システムは単純なトレンド分析の域を出ない。そこでファッション業界では結局、クリエイティブスタッフが、『この地域ではどの色が流行しそうか』などさまざまな点を考慮して、直感で判断するところが大きい。これに対し、今回はディープラーニングに基づく自己学習的なモデルの開発で、高い予測精度を実現することを目指している」(シャウカット氏)
Google Cloudは2社の関係が、需要予測にとどまらず、オンラインストア/Webサイト、そしてストアオペレーションにも広がっていく可能性があると話している。
なお、ファーストリテイリングは今回、Google Cloudの「G Suite」を全世界で導入するつもりであることも明らかにした。柳井氏によると、情報を全世界のあらゆる部門のスタッフに行きわたらせるとともに、権限を委譲することで、同時並行的に業務を進められるようにし、事業スピードを高めることが採用の目的だという。加えて、店舗における顧客のフィードバックを吸い上げるツールとしても、G Suiteを活用しようとしていると、シャウカット氏は話している。
柳井氏は、日本企業に対するメッセージとして、「日本企業はコンサーバティブだが、勇気を持って決断していかないと、世の中は変わっていってしまう。『今の最新技術は何か』を考えて顧客のために適用すべき。新しいことをやると失敗するのは当然。早く失敗して早く新しいことを考えるべき。あきらめなければ成功する」と話した。
ファーストリテイリング 代表取締役 会長 兼 社長の柳井正氏が2018年9月19日、同社の進める「有明プロジェクト」でGoogleのクラウド部門であるGoogle Cloudと協業していることを明らかにした。
柳井氏はGoogle Cloudが東京都内で開催しているイベント、「Google Cloud Next Tokyo 2018」の基調講演に登場、「衣料の開発・製造・販売でナンバーワンだと思っている私たちが、検索やインターネット、AIでナンバーワンのGoogleと一緒になって開発していく」と述べた。また柳井氏は、「こうしたパートナーシップは、似た考え方を持つ企業同士でしかできない」などと、今回の協業の奥深さを強調した。
ファーストリテイリングのプレスリリースでは、「情報製造小売業の実現に向けては、世界中のデジタルパートナーと協業し、最先端のデジタルイノベーションを活用し続けることが原動力となります。Googleとの協業は、その中の重要な取り組みの一つであり、すでに様々な分野でプロジェクトを始めています。具体例の一つとして、Google CloudのASL(Advanced Solutions Lab)チームと、日本初となるパートナーシップを組み、世界最先端の機械学習や画像認識技術を使った、商品のトレンドや具体的な需要の予測をする取り組みを進めています(原文ママ)」としている。
では、この発表は単純に、需要予測のためにGoogleのAIエンジニアによるコンサルティングを受けるということなのか。あるいはパブリッククラウドについてはAmazon Web Services(AWS)を使ってきたファーストリテイリングが、AIのみについてGoogle Cloudを使うというだけの話なのか。どちらの言い方も、実際の2社の関係を表してはいない。
柳井氏は今回のイベントで、「超情報革命の時代になった。産業を変えた人がその産業の勝者になる。1位になるにはデジタル変革が必要。親父の言っている通りにやっていたら成功しない」と話した。つまり、単純な需要予測の話ではない。ビジネス全体を変える武器として、データを活用しなければならないというのが同氏の考えだ、
一般的な需要予測では単なるトレンド分析。だが、後述するように、ファーストリテイリングでは大量生産商材の大量消費を前提とした需要予測だけを考えてはいない。マスカスタマイザーションおよびテイラーメイドに近いビジネス形態にも対応し、場合によってはニーズを先取りして、新たな製品を開発するのに適した予測を常時行う。これを全世界で、各地域に最適化した形で実行できるというのが、ファーストリテイリングの狙いだ。
柳井氏は、「全世界を対象とした生産、物流、販売をリアルタイムで最適化していくためには、ファーストリテイリングが提供する商品の需要に関わるあらゆるデータを集め、解析していく必要がある。しかも(予測は)毎日変わっていくことになる」と話している。
では、柳井氏が「一緒に開発する」と表現したのはなぜか。文字通り、これが「共同製品開発」だからだ。
Google Cloudグローバルアライアンス&インダストリープラットフォーム部門プレジデントのタリク・シャウカット氏によると、最初にアプローチしてきたのはファーストリテイリングだ。約2年前に柳井氏が米国のGoogle Cloud本社を訪れ、自身の事業とAIに関する思いを語り、Google CloudのAIエンジニアとどう協業できるかを打診してきたという。ちょうど業種別のソリューションを製品化する取り組みを進めようとしていたGoogle Cloudは、両社で小売業に広く適用可能なソリューションを開発していくことに合意した。
「(2社の話し合いで、)需要予測は協業のテーマとして面白いという話になった。そこでまず、ファーストリテイリングのエンジニアチームがカリフォルニアに来て、コラボレーションが始まった。だが、マーチャンダイジングや計画、クリエイティブなど、同社の事業ノウハウは東京の本社にある。そこで次にGoogle Cloudのエンジニアチームを東京に送り込み、共同作業を続けている。このことがきっかけで、ASLの拠点を東京にオープンすることになった」
ファーストリテイリングのプレスリリースにも登場する「ASL」とは、Google Cloudが主要業界の顧客と個別に連携し、各業界に特化した最先端の機械学習/AIソリューションを生み出すプログラムだ。今回の協業を、Google CloudはASLの一環として位置づけている。
「各企業に個別の問題解決であれば、コンサルティング的な仕事であり、一般的には当社のパートナーが担当する。しかし、(今回のように)先端的な取り組みであり、当社がプロダクトとして開発したいと考えたとき、それはASLの取り組みになる」(シャウカット氏)
今回の協業の成果は、いずれGoogle Cloudのソリューションプロダクトとして、他の企業も活用できるようになる。それでもファーストリテイリングは、英語でいう「first mover advantage」、つまりネットの世界ではよく見られる「早いもの勝ち」のメリットを享受できる。前出の「産業を変えた人がその産業の勝者になる」という柳井氏の言葉は、これにつながってくる。
シャウカット氏によると、ファーストリテイリングは予測を継続的に自動で自己修正していくようなシステムを目指しているという。
「柳井氏が今回の協業で求めているのは、自己学習、自己修正機能を備えた需要予測システムだ。一般的な需要予測システムは単純なトレンド分析の域を出ない。そこでファッション業界では結局、クリエイティブスタッフが、『この地域ではどの色が流行しそうか』などさまざまな点を考慮して、直感で判断するところが大きい。これに対し、今回はディープラーニングに基づく自己学習的なモデルの開発で、高い予測精度を実現することを目指している」(シャウカット氏)
Google Cloudは2社の関係が、需要予測にとどまらず、オンラインストア/Webサイト、そしてストアオペレーションにも広がっていく可能性があると話している。
なお、ファーストリテイリングは今回、Google Cloudの「G Suite」を全世界で導入するつもりであることも明らかにした。柳井氏によると、情報を全世界のあらゆる部門のスタッフに行きわたらせるとともに、権限を委譲することで、同時並行的に業務を進められるようにし、事業スピードを高めることが採用の目的だという。加えて、店舗における顧客のフィードバックを吸い上げるツールとしても、G Suiteを活用しようとしていると、シャウカット氏は話している。
柳井氏は、日本企業に対するメッセージとして、「日本企業はコンサーバティブだが、勇気を持って決断していかないと、世の中は変わっていってしまう。『今の最新技術は何か』を考えて顧客のために適用すべき。新しいことをやると失敗するのは当然。早く失敗して早く新しいことを考えるべき。あきらめなければ成功する」と話した。
2018年9月19日水曜日
AIと機械学習、多くの企業でストレージ支出が増加へ
調査会社のIDC Japanは2018年9月、AI(人工知能)とML(機械学習)がストレージ支出に与える影響をユーザー調査した。この結果、調査した国内企業611社のうち、70%が「大きな影響を与える」と認識していることが分かった。
ユーザー調査では611社のうち、AI/MLを「本番導入済み」「開発/試験中」「1~2年以内に導入を計画」「時期は未定だが導入を検討中」と回答した企業は73.3%(448社)に達した。この448社に、「2018~2020年の期間でAI/MLがストレージ支出に与える影響度合い」を聞いた。そうしたところ、25.4%の企業が「非常に大きな影響を与える」、44.6%の企業が「大きな影響を与える」と回答した。この2つを合わせると70.0%に達する。
この448社に対し、AI/MLを導入したことによるストレージ支出の変化として、想定している課題を聞いた。回答率が50.3%と過半数に達したのが「AI/MLデータの増大への対応が求められる」ことである。その次に46.2%を占めたのは「AI/MLのストレージ予算の増加」、そして39.8%の回答率となったのが「AI/MLデータの統括的な管理が求められる」である。
技術的な課題としては、「オブジェクトストレージの導入の増加」(33.8%)、「Software-Defined Storageの導入の増加」(31.2%)、「オールフラッシュアレイの導入の増加」(26.1%)などが上位を占めた。「NVMe(Non-Volatile Memory Express)やNVMe over Fabricsの利用の増加」といったフラッシュメモリの接続環境(22.6%)なども挙がったという。
今回のユーザー調査から、自社ITインフラの運用管理に、AI/MLを利用する意向が高いことも分かった。回答を得た454社のうち、既に「利用している」と答えた企業は8.2%だったが、「1~2年以内に利用を計画している」企業は44.8%、「時期は未定だが利用を計画している」のは21.3%となった。これらの合計は74.3%に達した。
AI/MLを自社ITインフラ管理に利用する理由 出典:IDC Japan
自社ITインフラ管理にAI/MLを利用する理由として、「保守サポートコストの抑制」(49.3%)、「ビジネス要求への迅速な対応」(43.0%)、「人員コストの抑制」(40.7%)などを挙げた。
今回発表した調査データは、IDCが発行する調査レポート「2018年イノベーションアクセラレーターが国内ストレージ支出に与える影響」で、詳細に紹介している。
ユーザー調査では611社のうち、AI/MLを「本番導入済み」「開発/試験中」「1~2年以内に導入を計画」「時期は未定だが導入を検討中」と回答した企業は73.3%(448社)に達した。この448社に、「2018~2020年の期間でAI/MLがストレージ支出に与える影響度合い」を聞いた。そうしたところ、25.4%の企業が「非常に大きな影響を与える」、44.6%の企業が「大きな影響を与える」と回答した。この2つを合わせると70.0%に達する。
この448社に対し、AI/MLを導入したことによるストレージ支出の変化として、想定している課題を聞いた。回答率が50.3%と過半数に達したのが「AI/MLデータの増大への対応が求められる」ことである。その次に46.2%を占めたのは「AI/MLのストレージ予算の増加」、そして39.8%の回答率となったのが「AI/MLデータの統括的な管理が求められる」である。
技術的な課題としては、「オブジェクトストレージの導入の増加」(33.8%)、「Software-Defined Storageの導入の増加」(31.2%)、「オールフラッシュアレイの導入の増加」(26.1%)などが上位を占めた。「NVMe(Non-Volatile Memory Express)やNVMe over Fabricsの利用の増加」といったフラッシュメモリの接続環境(22.6%)なども挙がったという。
今回のユーザー調査から、自社ITインフラの運用管理に、AI/MLを利用する意向が高いことも分かった。回答を得た454社のうち、既に「利用している」と答えた企業は8.2%だったが、「1~2年以内に利用を計画している」企業は44.8%、「時期は未定だが利用を計画している」のは21.3%となった。これらの合計は74.3%に達した。
AI/MLを自社ITインフラ管理に利用する理由 出典:IDC Japan
自社ITインフラ管理にAI/MLを利用する理由として、「保守サポートコストの抑制」(49.3%)、「ビジネス要求への迅速な対応」(43.0%)、「人員コストの抑制」(40.7%)などを挙げた。
今回発表した調査データは、IDCが発行する調査レポート「2018年イノベーションアクセラレーターが国内ストレージ支出に与える影響」で、詳細に紹介している。
いまさら聞けない「機械学習」とは何か? 「AI」との関係は?
ITを活用した経済活動「デジタルエコノミー」の拡大に伴い、企業は全面的または部分的に、"ソフトウェア企業"としての自社の在り方を見直している。ここ数十年で、ITはビジネスの一部になった。ただしその役割は変化している。データと技術は、ビジネス戦略の中核要素になる。
ITでビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は、単にデータを用いてビジネスを運用することではない。競走上の強みを得るために、データとITサービスを利用することだ。例えば業務効率を上げ、顧客を適切に理解し、新たな収益の流れにつながるデジタル製品やサービスを生み出すために、データを活用したりする。
DXに不可欠なのは、新たに登場した、変革につながるワークロード(システム)を導入することだ。こうしたワークロードには、ビジネスインテリジェンス(BI)をはじめとする分析用システムに加え、モノのインターネット(IoT)戦略の一環として企業のネットワークエッジ(末端)でデータを収集するシステムなどがある。
こうしたワークロードのカテゴリーは変化し、成長を続けるだろう。そうした中で機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術が勢いを増している。そしてAI技術が、IT投資の次の波を引き起こす可能性がある。
包括的な「AI」、方法論としての「機械学習」
用語としての「AI」と「機械学習」の関係について整理しておこう。AIは、包括的かつ汎用(はんよう)的な用語で、ソフトウェアで人間の知能そのもの、またはその一部を再現する技術全般を指す。深層学習(ディープラーニング)をはじめとする機械学習は、こうしたソフトウェアによる知能を生み出すために使用する、具体的な方法論だ。
大まかに言えば機械学習は、データを基に何らかの結果を予測するアルゴリズムの作成を指す。顧客の購入履歴を調べて、その顧客が購入しそうな商品を薦めるアルゴリズムがその例だ。機械学習では、アルゴリズムそのものを記述するのではなく、データによる学習を通じてアルゴリズムのトレーニングをする。こうしたトレーニングには、通常は膨大な量のデータ処理と、データを格納したストレージへの高速なアクセスが必要になる。
企業や業界によってその違いはさまざまだが、機械学習では一般的に、使用するデータ量と作成するアルゴリズムの質との間に、直接的な相関関係がある。アルゴリズムを用いて収益を生み出す速度を上げ、収益の新たな流れを生み出そうとするならば、少しでも多くのデータを収集する必要がある。そうすれば作成するアルゴリズムの質も向上できる。その結果、早期導入によって競争上の大きな強みがもたらされる。
調査会社Enterprise Strategy Groupによる最近の調査では、機械学習をはじめとするAI技術に積極的な戦略を展開している企業の38%が、ビジネス上の重要な成果が短期間で目に見える形として表れるようになったと答えている。新技術に投資する企業にとってAI技術は、短期間で見返りを期待できる確率が高いといえる。
AI技術の優先度の高さは、ここ数年の雇用にも表れている。AI技術の専門知識に対する関心が非常に高く、求人情報検索サイトのGlassdoorは、データサイエンティストを3年連続で米国最高の仕事に認定している。
AI技術の次のステップ
機械学習などのAI技術に投資する企業にとっての次のステップは、担当者のために適切なツールとインフラを用意することだ。ただし、ここには問題がある。
Enterprise Strategy Groupは、AI技術の戦略に詳しい意思決定者に、戦略の妨げになる要素を調査した。その答えはインフラだった。例えばAI技術のプロジェクトを積極的に展開している企業の44%が、上位3つの課題の1つとして、インフラのコストやインフラ機能の欠如を挙げた。インフラに十分な能力が備わっていないことが、大きな懸念になっているのだ。
AI技術に関する情報をまとめると、次のようになる。
AI技術の活用戦略を進めている企業の38%は、ビジネスの重要な成果が短期間で目に見える形として表れることを期待している
AI技術の活用戦略を進めている企業は、人材確保に大きな投資をしている
AI技術のワークロード固有の性質が、特定の業界に競走上の大きな強みを提供する。適切なアルゴリズムは高いビジネス成果を生み出す。データ量が増えるほど、優れたアルゴリズムが生み出される
AI技術の活用戦略を進めている企業の半分近く(44%)で、インフラが妨げになっている
4つ目のインフラの複雑性には、ITベンダーコミュニティーが迅速に対処することが見込まれる。計算速度を上げ、全ての処理を支える高性能で並列度の高いストレージを管理するために、GPU(画像処理プロセッサ)やFPGA(プログラム可能な集積回路)を使用すれば、こうした複雑さの一部は解消できる。
ITベンダーはインフラに関する懸念の解消に向けて、既に動き始めている。ほぼ全ての大手ストレージベンダーが、AI技術のワークロード用にレファレンスアーキテクチャを用意している。例えばNVIDIAと提携したPure Storageは最近、AI技術向けのインフラ製品を発表した。
AI技術のワークロードを使用してDXを追求するデータ駆動型企業は、すぐにインフラの課題に気付いて、その課題に対処し始めるようになる。AI技術に取り組み始めたばかりの企業は、インフラが戦略に及ぼす影響を理解することが重要だ。
インフラの構成は、どれくらい難しいのだろうか。パフォーマンスが成果物の品質にどの程度影響するのだろうか——。たとえ小規模な環境でも、こうした検討課題に対処するために、インフラの管理と構成の担当者を考えておくことが重要になる。
AI活用戦略を始めたら、従来のIT部門以外がハードウェアを管理することは珍しくなくなる。だが高給のデータサイエンティストにハードウェアの管理まで任せると、相当な時間を要し、かえってコストが高くつくこともある。AI技術のワークロードと、それによって生み出されるDX戦略は非常に重要で、企業は人件費にかなり投資することになる。成功の妨げになるインフラを、そのままにしておくわけにはいかない。
ITでビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は、単にデータを用いてビジネスを運用することではない。競走上の強みを得るために、データとITサービスを利用することだ。例えば業務効率を上げ、顧客を適切に理解し、新たな収益の流れにつながるデジタル製品やサービスを生み出すために、データを活用したりする。
DXに不可欠なのは、新たに登場した、変革につながるワークロード(システム)を導入することだ。こうしたワークロードには、ビジネスインテリジェンス(BI)をはじめとする分析用システムに加え、モノのインターネット(IoT)戦略の一環として企業のネットワークエッジ(末端)でデータを収集するシステムなどがある。
こうしたワークロードのカテゴリーは変化し、成長を続けるだろう。そうした中で機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術が勢いを増している。そしてAI技術が、IT投資の次の波を引き起こす可能性がある。
包括的な「AI」、方法論としての「機械学習」
用語としての「AI」と「機械学習」の関係について整理しておこう。AIは、包括的かつ汎用(はんよう)的な用語で、ソフトウェアで人間の知能そのもの、またはその一部を再現する技術全般を指す。深層学習(ディープラーニング)をはじめとする機械学習は、こうしたソフトウェアによる知能を生み出すために使用する、具体的な方法論だ。
大まかに言えば機械学習は、データを基に何らかの結果を予測するアルゴリズムの作成を指す。顧客の購入履歴を調べて、その顧客が購入しそうな商品を薦めるアルゴリズムがその例だ。機械学習では、アルゴリズムそのものを記述するのではなく、データによる学習を通じてアルゴリズムのトレーニングをする。こうしたトレーニングには、通常は膨大な量のデータ処理と、データを格納したストレージへの高速なアクセスが必要になる。
企業や業界によってその違いはさまざまだが、機械学習では一般的に、使用するデータ量と作成するアルゴリズムの質との間に、直接的な相関関係がある。アルゴリズムを用いて収益を生み出す速度を上げ、収益の新たな流れを生み出そうとするならば、少しでも多くのデータを収集する必要がある。そうすれば作成するアルゴリズムの質も向上できる。その結果、早期導入によって競争上の大きな強みがもたらされる。
調査会社Enterprise Strategy Groupによる最近の調査では、機械学習をはじめとするAI技術に積極的な戦略を展開している企業の38%が、ビジネス上の重要な成果が短期間で目に見える形として表れるようになったと答えている。新技術に投資する企業にとってAI技術は、短期間で見返りを期待できる確率が高いといえる。
AI技術の優先度の高さは、ここ数年の雇用にも表れている。AI技術の専門知識に対する関心が非常に高く、求人情報検索サイトのGlassdoorは、データサイエンティストを3年連続で米国最高の仕事に認定している。
AI技術の次のステップ
機械学習などのAI技術に投資する企業にとっての次のステップは、担当者のために適切なツールとインフラを用意することだ。ただし、ここには問題がある。
Enterprise Strategy Groupは、AI技術の戦略に詳しい意思決定者に、戦略の妨げになる要素を調査した。その答えはインフラだった。例えばAI技術のプロジェクトを積極的に展開している企業の44%が、上位3つの課題の1つとして、インフラのコストやインフラ機能の欠如を挙げた。インフラに十分な能力が備わっていないことが、大きな懸念になっているのだ。
AI技術に関する情報をまとめると、次のようになる。
AI技術の活用戦略を進めている企業の38%は、ビジネスの重要な成果が短期間で目に見える形として表れることを期待している
AI技術の活用戦略を進めている企業は、人材確保に大きな投資をしている
AI技術のワークロード固有の性質が、特定の業界に競走上の大きな強みを提供する。適切なアルゴリズムは高いビジネス成果を生み出す。データ量が増えるほど、優れたアルゴリズムが生み出される
AI技術の活用戦略を進めている企業の半分近く(44%)で、インフラが妨げになっている
4つ目のインフラの複雑性には、ITベンダーコミュニティーが迅速に対処することが見込まれる。計算速度を上げ、全ての処理を支える高性能で並列度の高いストレージを管理するために、GPU(画像処理プロセッサ)やFPGA(プログラム可能な集積回路)を使用すれば、こうした複雑さの一部は解消できる。
ITベンダーはインフラに関する懸念の解消に向けて、既に動き始めている。ほぼ全ての大手ストレージベンダーが、AI技術のワークロード用にレファレンスアーキテクチャを用意している。例えばNVIDIAと提携したPure Storageは最近、AI技術向けのインフラ製品を発表した。
AI技術のワークロードを使用してDXを追求するデータ駆動型企業は、すぐにインフラの課題に気付いて、その課題に対処し始めるようになる。AI技術に取り組み始めたばかりの企業は、インフラが戦略に及ぼす影響を理解することが重要だ。
インフラの構成は、どれくらい難しいのだろうか。パフォーマンスが成果物の品質にどの程度影響するのだろうか——。たとえ小規模な環境でも、こうした検討課題に対処するために、インフラの管理と構成の担当者を考えておくことが重要になる。
AI活用戦略を始めたら、従来のIT部門以外がハードウェアを管理することは珍しくなくなる。だが高給のデータサイエンティストにハードウェアの管理まで任せると、相当な時間を要し、かえってコストが高くつくこともある。AI技術のワークロードと、それによって生み出されるDX戦略は非常に重要で、企業は人件費にかなり投資することになる。成功の妨げになるインフラを、そのままにしておくわけにはいかない。
2018年9月18日火曜日
なぜ日本は人工知能研究で世界に勝てないか 東大・松尾豊さんが語る“根本的な原因”
ディープラー二ング(深層学習)の登場で"第3次人工知能(AI)ブーム"が訪れ、数年が経過しました。今では多くの企業がAIのプロジェクトを進め、自社製品やサービスに取り入れようと動いています。
世界で繰り広げられている人工知能開発競争の中心にいるのが、米国や中国です。米国ではGoogle、Apple、Facebook、Amazon.com(GAFA)や、IBM、MicrosoftなどのIT企業が、し烈なAI人材の獲得競争を繰り広げています。日本は米中に比べると、AIの研究開発において世界で存在感を示せていないのが現状です。
日本における第3次人工知能ブームのキッカケとなった「人工知能は人間を超えるか」(2015年)の著者・東京大学の松尾豊特任准教授は、「日本は今のままでは世界に勝てない。その現実と向き合う所から始めないといけない」と言っています。
日本がAI開発で世界と戦うにはどうすればいいのか。今の日本が抱える問題や現状、これから日本が取るべき戦略について、松尾さんに聞きました。
「日本は勝てない」現実と向き合う所からスタート
日本のディープラーニング研究の第一人者、東京大学の松尾豊特任准教授
――米国や中国に比べ、日本は人工知能開発で遅れているといわれています。なぜ日本はこの競争に負けているのでしょうか。
松尾さん それは、日本がインターネットで世界に負けた理由と似ているのではないでしょうか。
一つは、技術の取り入れ方が非常に遅い点。1990年代後半には若者たちが「これからはネットの時代だ!」と言っていたのに、上の年代の人たちが理解しませんでした。「信用できない」「オタクが使うだけ」と否定し、新しいものが生まれなかった。
今もそれは同じです。一口にAI、人工知能といっても、新しい技術の中心であるディープラーニングに対して、従来の分野へのこだわりが強く、拒否感が強い人も大勢います。
もう一つは、若い人が力を持っていない点。若い人が自分の裁量で自在に動けるような社会環境になっていません。彼らに裁量を与えて何かやらせれば絶対に何か起こるんですけど、それをやらせないから変化が起こらない。
現状は、基本的にもう勝ちようがありません。その現実と向き合うところからスタートです。この25年、グローバルで勝った日本のIT・Web系企業はないじゃないですか。ずっと負け続けて、人工知能でも負け続けてますよね。
日本のお家芸だった半導体や家電も海外勢に負け、自動車が何とか健闘しているという状況です。
――8月31日放送の「朝まで生テレビ!」は、人工知能がテーマでした。番組内で松尾さんは「日本も若手研究者は優秀だが、社会が彼らに裁量を与えていないことが問題だ」と主張されていました。
「朝まで生テレビ!」公式サイトより
日本には「イノベーションが起こらない」と悩んでいる経営者や管理職がいっぱいいますが、若手に任せてみれば良いんですよ。変な失敗もいっぱいするでしょうけど、行動は起こします。
若手の中には、頭が良くて先を読むのがうまい人がいっぱいいる。昔は松下幸之助、井深大、盛田昭夫、本田宗一郎などの実業家が、いろいろありながらも乗り越えてきたのに、なぜ今は同じような年齢の人たちが動けないのか。
――日本は、人工知能を使って稼ぐ、もうけるという意識が他国に比べて低いのでしょうか。
資本主義の世の中ですから、食わなきゃ殺されるんです。強いやつが生き残って弱いやつが死ぬ。そうしたルールで世界中の人たちが戦っているのを、日本人が全く感じていませんよね。いざ殺されそうになると、「フェアじゃない」「社会が悪い」と言い出してしまう。
こうした意識は、第二次世界大戦の敗戦から立ち上がった当時の日本も痛感したはずなんです。でも、高度経済成長を経て先進国の仲間入りを果たし、いつの間にか社会が守ってくれると勘違いしちゃったのかもしれませんね。
だらしない大企業 ベンチャー企業はチャンス
――そうした「日本人が持つ危機感のなさ」について、どう考えればいいのでしょうか。
特に大企業の動きに対して思うところはありますが、この話は国家、企業、個人に分けて考えた方がいいでしょう。
国家レベルではこの数年間、僕なりにいろいろと努力してきましたが、かなり限界を感じており、なかなかいい方向に向かうのは難しいと思っています。
しかし、企業レベルではまだやりようがあり、大企業はやり方によって大きな可能性があります。ところが、現状は大企業できちんと動けているところはごく少数です。大企業がだらしないから、ベンチャー企業はさまざまなチャンスに恵まれている。大企業がまともに動いていたら、ベンチャーが入る余地はありませんから。
個人レベルでも、周りがおかしな動きをしていればしているほど、まともに動ける人はそれだけでバリューが出せます。今の時代は、技術を使ってどのようなバリューを提供できるか考え、先読みして動けるプレイヤーが強いです。
――大企業がうまく動けないのはなぜでしょうか。上層部が人工知能を正しく理解していない、全体的に勉強不足、といった声もありますが。
まぁ、そうなんですけど、そこはもういいんじゃないですかね(笑)
もちろん、大企業の上層部も国全体も、もっと技術を勉強した方がいいです。中国は全員が試験勉強中みたいな状態ですが、日本は勉強しませんよね。今持っている知識から1歩先、2歩先になってしまうと、もう分からない。勉強すれば理解できるのに、それをしない。普通に考えると勝てるわけないですよね。
今は「自動車の仕組みを知らないのに、自動車立国になろう!」と言っているようなものですよ。「油で走るらしい」くらいの理解では立国は無理です。
――AIを理解している研究者や技術者と、よく分かっていない官僚、経営者、管理職という分断が起きている。
そういう状況で困っているベンチャー企業は、たくさんいると思いますよ。「AIはブラックボックスだから怖い」と言う人がいますが、僕からすると「ブラックボックスの意味分かってますか?」と言いたい。数式はちゃんと出ていて、数式の意味が解釈できないということなのですが、そこも勘違いしている人がいます。
今の日本を取り巻く状況を考えると、きちんとアービトラージ(裁定取引、サヤ取り)のゲームをすべきだと思います。日本は後進国化しつつあって、基本的には単独で問題解決できない構造になっている。それを他のプレイヤーが悪いからだと言っても仕方ないです。
本来やるべきことをできていないので、自分自身で人や知識、技術をつなぎ、全体としてのバリューチェーンを作っていく活動を日本中でやれば、経済全体が少しずつ良くなっていくでしょう。繰り返しになりますが、大企業がトンチンカンな行動をしているうちは、率先して動くベンチャー企業が勝てるんです。
大企業が動けるようになれば、アービトラージのギャップが埋まってきたということですから、残念ながらベンチャー企業は勝てなくなってしまう。でも、それは全体から見れば良いことです。
僕は若い人は本当に優秀だと思っていて、「教育を受けてみんな頑張れ!」と言っていますが、こうした若手育成もみんながまだ理解していないから成り立っています。
その大切さを理解すれば、みんなが率先して若い人を教育し、育てた人材を獲得しようとする。それだと僕は得しないですが(笑)、それは社会として良いことでしょう。
――行政の政策や大企業の動きの遅さに対する不満を述べるより、自ら手を動かすべきだと。
そうです。よく大企業向けに講演もしますが、「話してもどうせ行動しないだろうな」という気持ちもあります(笑)。一体いつまで僕の初歩的な話を聞いてるのだろうと。
人材獲得競争は「2013年に勝負はついていた」
――先ほどから出ている「人工開発」には2種類あると思っていて、1つはTensorflowのような人工知能を開発するためのソフトウェアライブラリの開発、もう一つはそうしたライブラリ群を利用した製品・サービスの開発です。それぞれ日本が勝つのは難しいでしょうか。
ライブラリ開発での勝ち負けを競っても、あまり意味がないんじゃないでしょうか。
例えば、Googleは公開してはいけない仕組みは絶対に公開しません。検索アルゴリズムなどはGoogleの中でも限られた一部の人間しか知りません。
でも、競争上の差別化にならない場合、あるいは広げていくことが重要な場合には公開するんですよ。だからGoogleがTensorflowを出したのは、そこが勝負ポイントじゃないと思っているからでしょう。
――Googleには今でもAI人材が集まっています。日本は人材獲得の点でも負けているということでしょうか?
Tensorflowを公開する前の2013年にはニューラルネットワークの研究者であるトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の会社を買収しました。その後、デミス・ハサビスさんが創業したAI企業DeepMindを買収し、17年にはデータサイエンティスト向けコミュニティーKaggleを買収しました。Facebookもニューラルネットワーク研究者のヤン・ルカンさんを招聘(しょうへい)し、人工知能研究ラボのトップに据えています。
実際のところ、もうその時点で人工知能を巡る人材獲得の勝負はついています。そこから人がどんどん集まっていきましたね。
シリコンバレーで起業し、成功した日本人はいるでしょうか? 日本のどこかの企業が、グローバルで通用するプラットフォームを提供できているでしょうか?
それと同じように、人工知能の技術開発の人材でも、ディープラーニングに関する研究・開発では米中が完全に上を行っています。個人でそこそこ戦っている人はいらっしゃるのですが、孤軍奮闘と言ってもいいでしょう。
――日本のAI系スタートアップの中には「日本も技術力は負けてない」と自負する声もあります。しかし、世界的に見ると日本はあまり存在感を出せていないようです。国際会議で論文を発表することなどは存在感を高めるのに重要なのでしょうか。
確かに論文は重要ですが、数だけでなくその内容も大事です。数でいえば、10年以上前から、情報系のトップ国際会議での日本からの論文の採択数は、分野にもよりますがおおむね5%くらいで、それが今では2~3%にまで下がっていると思います。また、ヒントン先生やヨシュア・ベンジオ先生やその周りの人たちは、インパクトの強いテーマの論文を出し、多数の引用も得て、海外で存在感を示しています。
もう一つ重要なことは、15年くらい前からビジネスの世界で勝った企業がアカデミックの世界でも勝つという因果関係になってきていることです。鶏と卵ではない。ビジネスで勝った企業が、良い人を集め、良い論文を出している。
だから論文が少ないのは結果に過ぎなくて、ビジネスで負けているのが一番大きな問題でしょう。
大企業が挑戦しない理由
グポイントのようなものはありますか?
国内でも、良い研究者がいっぱいいて、画像認識領域で世界に存在感を示していた企業はあります。ですが、ディープラーニングが出てきたタイミングで拒否反応が出て、苦戦しています。インターネットが出てきたときに、通信業界の人が「(パケット伝送を保証しない)ネットの仕組みは信頼できない」と拒否反応を示したのと一緒です(参考記事:@IT)。
――なぜディープラーニングという新しい技術が登場したときに、「面白そうなものが出てきた」と取り入れなかったのでしょうか。
研究者って、自分のやってきた研究や業績を壊されるのが嫌なんですよね。だから新しい技術が出てきたときにどうしても拒否反応を起こしてしまう。
保身もあります。若い人は守るものがないので、新しい技術を柔軟に取り入れますが、立場があればあるほど保身に走ってしまう。それは経営者にしても同じでしょう。日本の経営は短期のP/L(損益計算書)を気にするので、新しい挑戦をしたがりません。
この20年間で、日本の技術者は自信を失っていると思います。成功体験をしていないので、新しい技術を見たときに、これを使って大きな事業を起こしてやるんだという発想が湧いていないように感じます。
ディープラーニングは汎用技術
――目の前のことを優先してしまい、ディープラーニングという技術的な大きな変化を捉えられなかった。
ディープラーニングはGPT(general purpose technology、汎用技術)と言ってよいと思っていて、インターネットやトランジスタと同じように大きな変革をもたらす技術だと思います。汎用技術ですから、ほぼ全産業に影響を及ぼします。その一大イベント感が捉えられていない気がしますね。
画像認識で何ができるかを考えれば、医療、農業、飲食、介護などさまざまな分野に応用できることが分かります。自動車や産業用ロボットなど日本が得意とするものづくりの分野と、ディープラーニングの「目」の技術を組み合わせることで、世界と戦えるのではないでしょうか。
世界で繰り広げられている人工知能開発競争の中心にいるのが、米国や中国です。米国ではGoogle、Apple、Facebook、Amazon.com(GAFA)や、IBM、MicrosoftなどのIT企業が、し烈なAI人材の獲得競争を繰り広げています。日本は米中に比べると、AIの研究開発において世界で存在感を示せていないのが現状です。
日本における第3次人工知能ブームのキッカケとなった「人工知能は人間を超えるか」(2015年)の著者・東京大学の松尾豊特任准教授は、「日本は今のままでは世界に勝てない。その現実と向き合う所から始めないといけない」と言っています。
日本がAI開発で世界と戦うにはどうすればいいのか。今の日本が抱える問題や現状、これから日本が取るべき戦略について、松尾さんに聞きました。
「日本は勝てない」現実と向き合う所からスタート
日本のディープラーニング研究の第一人者、東京大学の松尾豊特任准教授
――米国や中国に比べ、日本は人工知能開発で遅れているといわれています。なぜ日本はこの競争に負けているのでしょうか。
松尾さん それは、日本がインターネットで世界に負けた理由と似ているのではないでしょうか。
一つは、技術の取り入れ方が非常に遅い点。1990年代後半には若者たちが「これからはネットの時代だ!」と言っていたのに、上の年代の人たちが理解しませんでした。「信用できない」「オタクが使うだけ」と否定し、新しいものが生まれなかった。
今もそれは同じです。一口にAI、人工知能といっても、新しい技術の中心であるディープラーニングに対して、従来の分野へのこだわりが強く、拒否感が強い人も大勢います。
もう一つは、若い人が力を持っていない点。若い人が自分の裁量で自在に動けるような社会環境になっていません。彼らに裁量を与えて何かやらせれば絶対に何か起こるんですけど、それをやらせないから変化が起こらない。
現状は、基本的にもう勝ちようがありません。その現実と向き合うところからスタートです。この25年、グローバルで勝った日本のIT・Web系企業はないじゃないですか。ずっと負け続けて、人工知能でも負け続けてますよね。
日本のお家芸だった半導体や家電も海外勢に負け、自動車が何とか健闘しているという状況です。
――8月31日放送の「朝まで生テレビ!」は、人工知能がテーマでした。番組内で松尾さんは「日本も若手研究者は優秀だが、社会が彼らに裁量を与えていないことが問題だ」と主張されていました。
「朝まで生テレビ!」公式サイトより
日本には「イノベーションが起こらない」と悩んでいる経営者や管理職がいっぱいいますが、若手に任せてみれば良いんですよ。変な失敗もいっぱいするでしょうけど、行動は起こします。
若手の中には、頭が良くて先を読むのがうまい人がいっぱいいる。昔は松下幸之助、井深大、盛田昭夫、本田宗一郎などの実業家が、いろいろありながらも乗り越えてきたのに、なぜ今は同じような年齢の人たちが動けないのか。
――日本は、人工知能を使って稼ぐ、もうけるという意識が他国に比べて低いのでしょうか。
資本主義の世の中ですから、食わなきゃ殺されるんです。強いやつが生き残って弱いやつが死ぬ。そうしたルールで世界中の人たちが戦っているのを、日本人が全く感じていませんよね。いざ殺されそうになると、「フェアじゃない」「社会が悪い」と言い出してしまう。
こうした意識は、第二次世界大戦の敗戦から立ち上がった当時の日本も痛感したはずなんです。でも、高度経済成長を経て先進国の仲間入りを果たし、いつの間にか社会が守ってくれると勘違いしちゃったのかもしれませんね。
だらしない大企業 ベンチャー企業はチャンス
――そうした「日本人が持つ危機感のなさ」について、どう考えればいいのでしょうか。
特に大企業の動きに対して思うところはありますが、この話は国家、企業、個人に分けて考えた方がいいでしょう。
国家レベルではこの数年間、僕なりにいろいろと努力してきましたが、かなり限界を感じており、なかなかいい方向に向かうのは難しいと思っています。
しかし、企業レベルではまだやりようがあり、大企業はやり方によって大きな可能性があります。ところが、現状は大企業できちんと動けているところはごく少数です。大企業がだらしないから、ベンチャー企業はさまざまなチャンスに恵まれている。大企業がまともに動いていたら、ベンチャーが入る余地はありませんから。
個人レベルでも、周りがおかしな動きをしていればしているほど、まともに動ける人はそれだけでバリューが出せます。今の時代は、技術を使ってどのようなバリューを提供できるか考え、先読みして動けるプレイヤーが強いです。
――大企業がうまく動けないのはなぜでしょうか。上層部が人工知能を正しく理解していない、全体的に勉強不足、といった声もありますが。
まぁ、そうなんですけど、そこはもういいんじゃないですかね(笑)
もちろん、大企業の上層部も国全体も、もっと技術を勉強した方がいいです。中国は全員が試験勉強中みたいな状態ですが、日本は勉強しませんよね。今持っている知識から1歩先、2歩先になってしまうと、もう分からない。勉強すれば理解できるのに、それをしない。普通に考えると勝てるわけないですよね。
今は「自動車の仕組みを知らないのに、自動車立国になろう!」と言っているようなものですよ。「油で走るらしい」くらいの理解では立国は無理です。
――AIを理解している研究者や技術者と、よく分かっていない官僚、経営者、管理職という分断が起きている。
そういう状況で困っているベンチャー企業は、たくさんいると思いますよ。「AIはブラックボックスだから怖い」と言う人がいますが、僕からすると「ブラックボックスの意味分かってますか?」と言いたい。数式はちゃんと出ていて、数式の意味が解釈できないということなのですが、そこも勘違いしている人がいます。
今の日本を取り巻く状況を考えると、きちんとアービトラージ(裁定取引、サヤ取り)のゲームをすべきだと思います。日本は後進国化しつつあって、基本的には単独で問題解決できない構造になっている。それを他のプレイヤーが悪いからだと言っても仕方ないです。
本来やるべきことをできていないので、自分自身で人や知識、技術をつなぎ、全体としてのバリューチェーンを作っていく活動を日本中でやれば、経済全体が少しずつ良くなっていくでしょう。繰り返しになりますが、大企業がトンチンカンな行動をしているうちは、率先して動くベンチャー企業が勝てるんです。
大企業が動けるようになれば、アービトラージのギャップが埋まってきたということですから、残念ながらベンチャー企業は勝てなくなってしまう。でも、それは全体から見れば良いことです。
僕は若い人は本当に優秀だと思っていて、「教育を受けてみんな頑張れ!」と言っていますが、こうした若手育成もみんながまだ理解していないから成り立っています。
その大切さを理解すれば、みんなが率先して若い人を教育し、育てた人材を獲得しようとする。それだと僕は得しないですが(笑)、それは社会として良いことでしょう。
――行政の政策や大企業の動きの遅さに対する不満を述べるより、自ら手を動かすべきだと。
そうです。よく大企業向けに講演もしますが、「話してもどうせ行動しないだろうな」という気持ちもあります(笑)。一体いつまで僕の初歩的な話を聞いてるのだろうと。
人材獲得競争は「2013年に勝負はついていた」
――先ほどから出ている「人工開発」には2種類あると思っていて、1つはTensorflowのような人工知能を開発するためのソフトウェアライブラリの開発、もう一つはそうしたライブラリ群を利用した製品・サービスの開発です。それぞれ日本が勝つのは難しいでしょうか。
ライブラリ開発での勝ち負けを競っても、あまり意味がないんじゃないでしょうか。
例えば、Googleは公開してはいけない仕組みは絶対に公開しません。検索アルゴリズムなどはGoogleの中でも限られた一部の人間しか知りません。
でも、競争上の差別化にならない場合、あるいは広げていくことが重要な場合には公開するんですよ。だからGoogleがTensorflowを出したのは、そこが勝負ポイントじゃないと思っているからでしょう。
――Googleには今でもAI人材が集まっています。日本は人材獲得の点でも負けているということでしょうか?
Tensorflowを公開する前の2013年にはニューラルネットワークの研究者であるトロント大学のジェフリー・ヒントン教授の会社を買収しました。その後、デミス・ハサビスさんが創業したAI企業DeepMindを買収し、17年にはデータサイエンティスト向けコミュニティーKaggleを買収しました。Facebookもニューラルネットワーク研究者のヤン・ルカンさんを招聘(しょうへい)し、人工知能研究ラボのトップに据えています。
実際のところ、もうその時点で人工知能を巡る人材獲得の勝負はついています。そこから人がどんどん集まっていきましたね。
シリコンバレーで起業し、成功した日本人はいるでしょうか? 日本のどこかの企業が、グローバルで通用するプラットフォームを提供できているでしょうか?
それと同じように、人工知能の技術開発の人材でも、ディープラーニングに関する研究・開発では米中が完全に上を行っています。個人でそこそこ戦っている人はいらっしゃるのですが、孤軍奮闘と言ってもいいでしょう。
――日本のAI系スタートアップの中には「日本も技術力は負けてない」と自負する声もあります。しかし、世界的に見ると日本はあまり存在感を出せていないようです。国際会議で論文を発表することなどは存在感を高めるのに重要なのでしょうか。
確かに論文は重要ですが、数だけでなくその内容も大事です。数でいえば、10年以上前から、情報系のトップ国際会議での日本からの論文の採択数は、分野にもよりますがおおむね5%くらいで、それが今では2~3%にまで下がっていると思います。また、ヒントン先生やヨシュア・ベンジオ先生やその周りの人たちは、インパクトの強いテーマの論文を出し、多数の引用も得て、海外で存在感を示しています。
もう一つ重要なことは、15年くらい前からビジネスの世界で勝った企業がアカデミックの世界でも勝つという因果関係になってきていることです。鶏と卵ではない。ビジネスで勝った企業が、良い人を集め、良い論文を出している。
だから論文が少ないのは結果に過ぎなくて、ビジネスで負けているのが一番大きな問題でしょう。
大企業が挑戦しない理由
グポイントのようなものはありますか?
国内でも、良い研究者がいっぱいいて、画像認識領域で世界に存在感を示していた企業はあります。ですが、ディープラーニングが出てきたタイミングで拒否反応が出て、苦戦しています。インターネットが出てきたときに、通信業界の人が「(パケット伝送を保証しない)ネットの仕組みは信頼できない」と拒否反応を示したのと一緒です(参考記事:@IT)。
――なぜディープラーニングという新しい技術が登場したときに、「面白そうなものが出てきた」と取り入れなかったのでしょうか。
研究者って、自分のやってきた研究や業績を壊されるのが嫌なんですよね。だから新しい技術が出てきたときにどうしても拒否反応を起こしてしまう。
保身もあります。若い人は守るものがないので、新しい技術を柔軟に取り入れますが、立場があればあるほど保身に走ってしまう。それは経営者にしても同じでしょう。日本の経営は短期のP/L(損益計算書)を気にするので、新しい挑戦をしたがりません。
この20年間で、日本の技術者は自信を失っていると思います。成功体験をしていないので、新しい技術を見たときに、これを使って大きな事業を起こしてやるんだという発想が湧いていないように感じます。
ディープラーニングは汎用技術
――目の前のことを優先してしまい、ディープラーニングという技術的な大きな変化を捉えられなかった。
ディープラーニングはGPT(general purpose technology、汎用技術)と言ってよいと思っていて、インターネットやトランジスタと同じように大きな変革をもたらす技術だと思います。汎用技術ですから、ほぼ全産業に影響を及ぼします。その一大イベント感が捉えられていない気がしますね。
画像認識で何ができるかを考えれば、医療、農業、飲食、介護などさまざまな分野に応用できることが分かります。自動車や産業用ロボットなど日本が得意とするものづくりの分野と、ディープラーニングの「目」の技術を組み合わせることで、世界と戦えるのではないでしょうか。
インフルエンザを診断するAI、ディープラーニングで実現へ 医療機器ベンチャー「アイリス」の挑戦
「すいません。頑張って来ていただいたのに申し訳ないのですが、明日また当院に来ていただけませんか?」
病気を治したくて病院に来たのに、なぜか追い返されてしまう……読者の皆さんにもそんな経験はないだろうか。そう「インフルエンザ」だ。
インフルエンザの初期診断は難しい。検査は一般的に、鼻や喉の粘膜を綿棒で採取して行うが、その精度は実は60%程度にとどまる。仮に「陰性だ」といわれても、インフルエンザだったという確率が4割もあるわけだ。さらに発症後24時間以上が経過しないと、その精度にすら達しない。高熱が出て、慌てて病院に行っても、冒頭のような医師の言葉で診察が終わってしまうこともままある。
インフルエンザの初期診断は有効な期間が短く、精度もそこまで高くはないのが大きな課題になっている
こんな現状を変えようと、AIを活用したインフルエンザ診断の支援サービスを開発しようとしている企業がある。2017年11月に設立した医療機器ベンチャー「アイリス(Aillis)」だ。
同社が着目したのは、「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれるインフルエンザに特有の喉の腫れだ。風邪をひいたときなどにも喉が腫れることがあるが、その腫れ方とは形状や色調が明らかに異なり、それを見分けることでインフルエンザを診断できる――代表取締役CEOの沖山翔さんは、2013年にそんな論文に出会った。
ディープラーニングで「インフルエンザ濾胞」を見分けるAIを
濾胞はインフルエンザの発症前からできているため、発症から24時間以上を経なくても診断が可能だ。医学部を卒業し、当時救急医などに従事していた沖山さんは、論文を基に濾胞を見分ける訓練を行ったが、どうしても精度が上がらなかったという。
「論文では、99%以上の精度でインフルエンザを判定できるとあったのですが、自分が頑張っても75%くらいが限界でした。それもそのはず、論文を書いたのは、喉の診察を約40年も続けてきた医師なのです。いくら医師でも、少し練習したくらいではその領域に達せるはずもありません」(沖山さん)
こうした医師の"匠の技"をどうにかして、汎用性の高いものにできないか……そこで沖山さんたちが考えたのが「ディープラーニング」の活用だった。
インフルエンザに感染した際、のどにできる濾胞は風邪をひいたときにできるものとは、形状や色調が異なるという
濾胞を撮影するための内視鏡カメラを開発し、病院などでインフルエンザの疑いのある患者の喉の画像を収集。その患者に対して、精度が100%である「PCR検査(ウイルスの遺伝子を抽出する検査で約2週間かかる)」を行い、その結果を正解データとするAIをディープラーニングを使って開発する。そのAIを内視鏡カメラに組み込むことで、喉の画像からインフルエンザの感染を判定するという仕組みだ。
「診療」のAI化に挑戦、ゆくゆくは診察技術の"GitHub化"を
アイリスでは、この冬のシーズンから、インフルエンザ濾胞の画像データを集める臨床研究を医療機関と共同で行う予定だ。AIを開発した後、治験や薬事承認を経て、2020年ごろにAI搭載内視鏡カメラの発売を目指しているという。
アイリスは濾胞を判定するAIを搭載した内視鏡カメラの開発を目指している
医療業界でもAI導入は進んでいるが、その多くは「検査」の分野だと沖山さんは話す。X線検査やMRIなどが分かりやすいだろう。過去の画像データなどが豊富にある他、判断の基準が機械的(数値的)だ。一方、アイリスがAI化を目指すのは「診察」の分野だ。実際に患者に接して判断するため、数値化や言語化が行いにくい。ただ、それこそがディープラーニングが得意とする分野でもある。
「今開発している製品は、目で見る視診が対象ですが、触診や聴診といった分野もAI化が期待できます。"匠の技"ともいえる、熟練医の診察スキルをAIで再現し、全国の医者に届けるのがアイリスのミッションです」(沖山さん)
文字にできない、暗黙知ともいえるノウハウをAIという形で記録し、再現することで、そのノウハウは世界中で共有可能なものになる。沖山さんはこのインパクトを、活版印刷による情報革命と比較して、こう説明する。
「人間は文字を発明することで、情報を記録し、知識を共有できるようになりました。活版印刷がそれを広める役割を担ってきたわけです。一方、暗黙知や身体知のような、非言語的なノウハウについては、ディープラーニングをはじめとするニューラルネットワークが情報をストックする手段になるでしょう。それを広めるのはインターネットです。
いずれは名医の診察スキルをダウンロードして使える――全医師で共有できる時代が来るでしょう。医療だけではなく、美術や音楽といった分野でも同じことが起きるかもしれません。私たちは診療技術を共有し共創する、いわば"GitHub化"を目指しているのです」(沖山さん)
診察技術をAI化することで、それを全世界の医師へと共有できる形にする。それがアイリスの目指す世界だという
病気を治したくて病院に来たのに、なぜか追い返されてしまう……読者の皆さんにもそんな経験はないだろうか。そう「インフルエンザ」だ。
インフルエンザの初期診断は難しい。検査は一般的に、鼻や喉の粘膜を綿棒で採取して行うが、その精度は実は60%程度にとどまる。仮に「陰性だ」といわれても、インフルエンザだったという確率が4割もあるわけだ。さらに発症後24時間以上が経過しないと、その精度にすら達しない。高熱が出て、慌てて病院に行っても、冒頭のような医師の言葉で診察が終わってしまうこともままある。
インフルエンザの初期診断は有効な期間が短く、精度もそこまで高くはないのが大きな課題になっている
こんな現状を変えようと、AIを活用したインフルエンザ診断の支援サービスを開発しようとしている企業がある。2017年11月に設立した医療機器ベンチャー「アイリス(Aillis)」だ。
同社が着目したのは、「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれるインフルエンザに特有の喉の腫れだ。風邪をひいたときなどにも喉が腫れることがあるが、その腫れ方とは形状や色調が明らかに異なり、それを見分けることでインフルエンザを診断できる――代表取締役CEOの沖山翔さんは、2013年にそんな論文に出会った。
ディープラーニングで「インフルエンザ濾胞」を見分けるAIを
濾胞はインフルエンザの発症前からできているため、発症から24時間以上を経なくても診断が可能だ。医学部を卒業し、当時救急医などに従事していた沖山さんは、論文を基に濾胞を見分ける訓練を行ったが、どうしても精度が上がらなかったという。
「論文では、99%以上の精度でインフルエンザを判定できるとあったのですが、自分が頑張っても75%くらいが限界でした。それもそのはず、論文を書いたのは、喉の診察を約40年も続けてきた医師なのです。いくら医師でも、少し練習したくらいではその領域に達せるはずもありません」(沖山さん)
こうした医師の"匠の技"をどうにかして、汎用性の高いものにできないか……そこで沖山さんたちが考えたのが「ディープラーニング」の活用だった。
インフルエンザに感染した際、のどにできる濾胞は風邪をひいたときにできるものとは、形状や色調が異なるという
濾胞を撮影するための内視鏡カメラを開発し、病院などでインフルエンザの疑いのある患者の喉の画像を収集。その患者に対して、精度が100%である「PCR検査(ウイルスの遺伝子を抽出する検査で約2週間かかる)」を行い、その結果を正解データとするAIをディープラーニングを使って開発する。そのAIを内視鏡カメラに組み込むことで、喉の画像からインフルエンザの感染を判定するという仕組みだ。
「診療」のAI化に挑戦、ゆくゆくは診察技術の"GitHub化"を
アイリスでは、この冬のシーズンから、インフルエンザ濾胞の画像データを集める臨床研究を医療機関と共同で行う予定だ。AIを開発した後、治験や薬事承認を経て、2020年ごろにAI搭載内視鏡カメラの発売を目指しているという。
アイリスは濾胞を判定するAIを搭載した内視鏡カメラの開発を目指している
医療業界でもAI導入は進んでいるが、その多くは「検査」の分野だと沖山さんは話す。X線検査やMRIなどが分かりやすいだろう。過去の画像データなどが豊富にある他、判断の基準が機械的(数値的)だ。一方、アイリスがAI化を目指すのは「診察」の分野だ。実際に患者に接して判断するため、数値化や言語化が行いにくい。ただ、それこそがディープラーニングが得意とする分野でもある。
「今開発している製品は、目で見る視診が対象ですが、触診や聴診といった分野もAI化が期待できます。"匠の技"ともいえる、熟練医の診察スキルをAIで再現し、全国の医者に届けるのがアイリスのミッションです」(沖山さん)
文字にできない、暗黙知ともいえるノウハウをAIという形で記録し、再現することで、そのノウハウは世界中で共有可能なものになる。沖山さんはこのインパクトを、活版印刷による情報革命と比較して、こう説明する。
「人間は文字を発明することで、情報を記録し、知識を共有できるようになりました。活版印刷がそれを広める役割を担ってきたわけです。一方、暗黙知や身体知のような、非言語的なノウハウについては、ディープラーニングをはじめとするニューラルネットワークが情報をストックする手段になるでしょう。それを広めるのはインターネットです。
いずれは名医の診察スキルをダウンロードして使える――全医師で共有できる時代が来るでしょう。医療だけではなく、美術や音楽といった分野でも同じことが起きるかもしれません。私たちは診療技術を共有し共創する、いわば"GitHub化"を目指しているのです」(沖山さん)
診察技術をAI化することで、それを全世界の医師へと共有できる形にする。それがアイリスの目指す世界だという
もう自分の「AIスコア」を測った? J.Scoreの新アプリがビジネスパーソンの“モチベーション増幅ツール”になる理由
「会社で重要な役職に就きたい」「もっといい会社に転職したい」──そんな思いを胸に秘めるビジネスパーソンは少なくない。しかし、スキルアップにただ漠然と取り組んでいるだけでは、継続するモチベーションが保てずに挫折してしまうこともある。
キャリアアップしたい気持ちを奮い立たせる上で大事なのは、自身のスキルや成長度合いを客観的に把握すること。それを実現できるのが、AIやビッグデータを活用して自分の信用力や可能性をスコア化するサービス「AIスコア」だ。
今回新たにアプリ版が登場し、使い勝手はますます向上した。AIスコアがどのように役立つのか、悩めるエンジニアを例に紹介しよう。
スキルアップのモチベーションが保てない?
英会話スクールに通い、自分の携わる業界に関連した資格取得に励み、技術系の勉強会にも積極的に足を運ぶ──スキルアップに努力を惜しまないエンジニアの鳥取さん(仮名)も冒頭で紹介した悩みを抱える一人だ。
「英語くらいできなきゃダメだよな」「Twitterでよく見かける憧れのスターエンジニアが勉強会によく顔を出している。僕もまねしたい」──そんな軽い動機ではあったが、もともと真面目な性格が幸いしてか、TOEICは平均を超える点数を獲得できるまでに成長し、情報処理に関する国家資格を取得。技術コミュニティーでも積極的に声を上げ、趣味の技術ブログも続けている。
充実した日々を送るように見える彼だが、実は継続するモチベーションを保つのが難しいと感じることが増えつつある。「今のスキルは本当に自分の役に立つのか、世間から見てどのように評価されるのか」──自分の成長を客観的に評価してくれる判断基準がないからだ。
そんな鳥取さんのような人々の手助けをするのが、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資して立ち上げた合弁会社J.Score(ジェイスコア)のサービス「AIスコア」だ。ユーザーが質問に答えていくと、個人の信用力や可能性を表すスコアが算出され、さまざまな場面で活用できるというもの。もちろんエンジニアに限らず、あらゆる職種のビジネスパーソン、主婦、学生などが利用できる。
アプリの登場で使い勝手はさらにアップ
AIスコアはこれまでWebブラウザ上で使えるサービスだったが、7月12日に待望の公式アプリ(iOS版、Android版)をリリース。画面の切り替わりや、ボタンをタップしたときの細やかなアニメーションなどが強化され、触れていて心地の良いユーザーインタフェースを実現した。
ユーザーが多くの質問に答えてスコアを算出する仕組みだからこそ、よりサクサクと質問に答えられるのは意外と重要なポイント。パーソナルなデータを扱うアプリということで、パスコードロックや生体認証にも対応している(デバイスによって異なる)。
基本的な使い方はこれまでと同じ。ユーザーが自身の年収やライフスタイル、性格、趣味など、あらゆる質問に答えていくと、その情報をAIが分析し、1000点を上限としたスコアを算出する。スコアを知るだけであれば、氏名や住所などの個人情報を入力する必要はない。もちろん登録は無料だ。
「家は持ち家か賃貸か?」「出身大学は?」「日本語以外に喋れる言語は?」といった想定通りの質問以外にも、「服を選ぶ基準は?」「好きな色は?」「持っているゲーム機は?」など、予想外の質問も出てくる。鳥取さんも早速試してみると、質問に答える度にスコアがどんどん上がっていき、最終的にスコアは720を示した。
算出されたスコアは、今後さまざまな用途での活用が見込まれているが、一例として、融資(レンディング)分野での利用が挙げられる。
例えば、個人の信用力や可能性を表すAIスコアを用いることで、そのユーザーならではの貸し付け条件を提示できる。「上場企業に所属し、年収も高く、勤続年数も長いから好条件になる」──そんな旧来の画一的な融資とは一線を画す、FinTech時代ならではのサービスがAIスコアによって既に実現しているのだ。
J.Scoreは「良い行動の習慣化」を評価する
これら従来の機能に加え、アプリならではの新機能が搭載された。その名も「ハビットチェンジ」だ。
ハビットチェンジは直訳すると「習慣を変える」だが、その真意は「良い行動を始めて、それを継続して習慣化していくことで生活をより良くしていこう」ということを意味する。つまり、より良い行動を始め、それを継続して習慣化するアクション自体をAIスコアに反映できる機能だ。具体的に以下のような機能を備えている。
毎日の運動習慣:活動している主な場所や歩数を自動的に記録し、後から振り返られるようにすることで、運動習慣の定着をサポートする
継続的な学習習慣:本の書評や要約、コラムを掲載。要約や書評には読了記録を付けられ、知識との出会いをサポートする
規則正しい睡眠習慣:起床時間だけでなく、規則正しい生活に非常に重要な就寝時間も同時に設定してアラームでお知らせすることで、規則正しい睡眠をサポートする
意識するお金の習慣:支出の内訳や自己投資額をスワイプ操作で気軽に記録できる。日々の出費が単なる消費だったのか自己投資だったのかを都度意識することで自己投資に対する意識向上をサポートする
「健康のために歩こう」「本を読もう」「生活リズムを整えよう」「毎月の支出を把握しよう」──これらが良い行動であることは理解していても、いざ実行するのは難しい。そこで、アプリ内にログを残し、レポートを後から見返すことで客観的に自分を見つめ直せる。そんなサイクルを生み出せるのは効果として大きい。
特に学習習慣のページでは、さまざまな本の書評や要約、コラムを閲覧できる。ラインアップはテクノロジーや経済、自己啓発など。無料でありながら、一部のタイトルは音声による朗読も可能。しかも1.5倍速で再生も可能なので、ながら聞きで知識をインプットするのもいいだろう。
これらのより良い行動を継続し習慣化することで、AIスコアにも反映される。つまり、これまでのWeb版では過去や現在の情報に基づいてAIスコアを算出していたが、アプリ版ではこれからの自分の行動でAIスコアを変化させていくことが能動的に可能になるという画期的なものだ。良い習慣を継続することでAIスコアを変化させ自分自身の未来を変えていくことをシステム化した革新的なサービスである。ユーザーの「自己実現」をサポートするというJ.Scoreの企業理念を体現した機能でもある。
日々のモチベーションアップを手助け
自分がこれまでに積み重ねてきたスキルや経験がスコアで可視化されるという、これまでになかったサービスに、さらに毎日の習慣で未来をより良くしていく行動も評価されるという機能を搭載。さらにアプリとしてスマートフォンなどから気軽に見られるようになったことで、スキルの可視化に悩んでいたエンジニアの鳥取さんのような人でも、日々の"モチベーション増幅ツール"として役立てられるはずだ。
まだ自分のAIスコアを測ったことがない人はもちろん、以前に試したことがある人も、この機会にあらためてアプリをインストールして試してみてはいかがだろうか。自分では気付かなかった成長をAIスコアが示してくれるかもしれないし、「自分自身の未来は自分で変えていく」という考えに気付かされるよいきっかけになるはずだ。
キャリアアップしたい気持ちを奮い立たせる上で大事なのは、自身のスキルや成長度合いを客観的に把握すること。それを実現できるのが、AIやビッグデータを活用して自分の信用力や可能性をスコア化するサービス「AIスコア」だ。
今回新たにアプリ版が登場し、使い勝手はますます向上した。AIスコアがどのように役立つのか、悩めるエンジニアを例に紹介しよう。
スキルアップのモチベーションが保てない?
英会話スクールに通い、自分の携わる業界に関連した資格取得に励み、技術系の勉強会にも積極的に足を運ぶ──スキルアップに努力を惜しまないエンジニアの鳥取さん(仮名)も冒頭で紹介した悩みを抱える一人だ。
「英語くらいできなきゃダメだよな」「Twitterでよく見かける憧れのスターエンジニアが勉強会によく顔を出している。僕もまねしたい」──そんな軽い動機ではあったが、もともと真面目な性格が幸いしてか、TOEICは平均を超える点数を獲得できるまでに成長し、情報処理に関する国家資格を取得。技術コミュニティーでも積極的に声を上げ、趣味の技術ブログも続けている。
充実した日々を送るように見える彼だが、実は継続するモチベーションを保つのが難しいと感じることが増えつつある。「今のスキルは本当に自分の役に立つのか、世間から見てどのように評価されるのか」──自分の成長を客観的に評価してくれる判断基準がないからだ。
そんな鳥取さんのような人々の手助けをするのが、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資して立ち上げた合弁会社J.Score(ジェイスコア)のサービス「AIスコア」だ。ユーザーが質問に答えていくと、個人の信用力や可能性を表すスコアが算出され、さまざまな場面で活用できるというもの。もちろんエンジニアに限らず、あらゆる職種のビジネスパーソン、主婦、学生などが利用できる。
アプリの登場で使い勝手はさらにアップ
AIスコアはこれまでWebブラウザ上で使えるサービスだったが、7月12日に待望の公式アプリ(iOS版、Android版)をリリース。画面の切り替わりや、ボタンをタップしたときの細やかなアニメーションなどが強化され、触れていて心地の良いユーザーインタフェースを実現した。
ユーザーが多くの質問に答えてスコアを算出する仕組みだからこそ、よりサクサクと質問に答えられるのは意外と重要なポイント。パーソナルなデータを扱うアプリということで、パスコードロックや生体認証にも対応している(デバイスによって異なる)。
基本的な使い方はこれまでと同じ。ユーザーが自身の年収やライフスタイル、性格、趣味など、あらゆる質問に答えていくと、その情報をAIが分析し、1000点を上限としたスコアを算出する。スコアを知るだけであれば、氏名や住所などの個人情報を入力する必要はない。もちろん登録は無料だ。
「家は持ち家か賃貸か?」「出身大学は?」「日本語以外に喋れる言語は?」といった想定通りの質問以外にも、「服を選ぶ基準は?」「好きな色は?」「持っているゲーム機は?」など、予想外の質問も出てくる。鳥取さんも早速試してみると、質問に答える度にスコアがどんどん上がっていき、最終的にスコアは720を示した。
算出されたスコアは、今後さまざまな用途での活用が見込まれているが、一例として、融資(レンディング)分野での利用が挙げられる。
例えば、個人の信用力や可能性を表すAIスコアを用いることで、そのユーザーならではの貸し付け条件を提示できる。「上場企業に所属し、年収も高く、勤続年数も長いから好条件になる」──そんな旧来の画一的な融資とは一線を画す、FinTech時代ならではのサービスがAIスコアによって既に実現しているのだ。
J.Scoreは「良い行動の習慣化」を評価する
これら従来の機能に加え、アプリならではの新機能が搭載された。その名も「ハビットチェンジ」だ。
ハビットチェンジは直訳すると「習慣を変える」だが、その真意は「良い行動を始めて、それを継続して習慣化していくことで生活をより良くしていこう」ということを意味する。つまり、より良い行動を始め、それを継続して習慣化するアクション自体をAIスコアに反映できる機能だ。具体的に以下のような機能を備えている。
毎日の運動習慣:活動している主な場所や歩数を自動的に記録し、後から振り返られるようにすることで、運動習慣の定着をサポートする
継続的な学習習慣:本の書評や要約、コラムを掲載。要約や書評には読了記録を付けられ、知識との出会いをサポートする
規則正しい睡眠習慣:起床時間だけでなく、規則正しい生活に非常に重要な就寝時間も同時に設定してアラームでお知らせすることで、規則正しい睡眠をサポートする
意識するお金の習慣:支出の内訳や自己投資額をスワイプ操作で気軽に記録できる。日々の出費が単なる消費だったのか自己投資だったのかを都度意識することで自己投資に対する意識向上をサポートする
「健康のために歩こう」「本を読もう」「生活リズムを整えよう」「毎月の支出を把握しよう」──これらが良い行動であることは理解していても、いざ実行するのは難しい。そこで、アプリ内にログを残し、レポートを後から見返すことで客観的に自分を見つめ直せる。そんなサイクルを生み出せるのは効果として大きい。
特に学習習慣のページでは、さまざまな本の書評や要約、コラムを閲覧できる。ラインアップはテクノロジーや経済、自己啓発など。無料でありながら、一部のタイトルは音声による朗読も可能。しかも1.5倍速で再生も可能なので、ながら聞きで知識をインプットするのもいいだろう。
これらのより良い行動を継続し習慣化することで、AIスコアにも反映される。つまり、これまでのWeb版では過去や現在の情報に基づいてAIスコアを算出していたが、アプリ版ではこれからの自分の行動でAIスコアを変化させていくことが能動的に可能になるという画期的なものだ。良い習慣を継続することでAIスコアを変化させ自分自身の未来を変えていくことをシステム化した革新的なサービスである。ユーザーの「自己実現」をサポートするというJ.Scoreの企業理念を体現した機能でもある。
日々のモチベーションアップを手助け
自分がこれまでに積み重ねてきたスキルや経験がスコアで可視化されるという、これまでになかったサービスに、さらに毎日の習慣で未来をより良くしていく行動も評価されるという機能を搭載。さらにアプリとしてスマートフォンなどから気軽に見られるようになったことで、スキルの可視化に悩んでいたエンジニアの鳥取さんのような人でも、日々の"モチベーション増幅ツール"として役立てられるはずだ。
まだ自分のAIスコアを測ったことがない人はもちろん、以前に試したことがある人も、この機会にあらためてアプリをインストールして試してみてはいかがだろうか。自分では気付かなかった成長をAIスコアが示してくれるかもしれないし、「自分自身の未来は自分で変えていく」という考えに気付かされるよいきっかけになるはずだ。
AIを活用して倉庫内作業の要員マネジメントを最適化するサービス
NECは2018年9月6日、同社のAI(人工知能)技術を活用し、倉庫内作業での要員マネジメントを最適化する「物流リソースマネジメントサービス」を2019年1月より提供すると発表した。
同サービスは、同社のAI技術群「NEC the WISE」を活用し、倉庫内作業での要員のリソース計画や要員の適性に合わせた業務アサイン、また、作業負荷状況に合わせた動的な要員の配置を実現するものだ。
従来、ベテラン管理者が経験を基に行っていた荷物量の予測を、NEC the WISEの1つである「異種混合学習技術」を活用して、過去の出荷・入荷実績や気象情報などの外部データを基に高精度に予測。要員リソースの算定における負担軽減や属人性の排除により要員計画を高度化する。
また、2019年度上期に提供予定の要員の適性に合わせた業務アサインの機能は、業務内容、時間、場所、商品特性などを基に、要員の適性に合った業務をマッチングする。管理者が過去の作業実績から要員の資質と与えられた業務に対する成果などの情報を入力し、NEC the WISEの1つである「RAPID機械学習技術」に組み込み分析し、最適なアサインを可能にする。
さらに、AIを活用した倉庫内の負荷状況分析によって動的な要員配置を実現する。NEC the WISEの1つである「自律適応制御技術」を活用し、現場の負荷状況をリアルタイムに把握。残作業と直近の生産性に応じた要員配置を自動でレコメンドする。作業待ちを抑制し、管理者不在時でも負荷状況に合わせた動的な要員配置を実現するとともに、全体最適によるチームワークの最大化も期待できる。
2018年7月には、日通NECロジスティクスにおいて同サービスの実証を行い、余剰要員の削減、シフトの組み換えによる残業の抑制、動的な配置変更によるスループットの向上など、特定のエリアや期間において約10%の生産性向上効果を確認した。
同サービスは、同社のAI技術群「NEC the WISE」を活用し、倉庫内作業での要員のリソース計画や要員の適性に合わせた業務アサイン、また、作業負荷状況に合わせた動的な要員の配置を実現するものだ。
従来、ベテラン管理者が経験を基に行っていた荷物量の予測を、NEC the WISEの1つである「異種混合学習技術」を活用して、過去の出荷・入荷実績や気象情報などの外部データを基に高精度に予測。要員リソースの算定における負担軽減や属人性の排除により要員計画を高度化する。
また、2019年度上期に提供予定の要員の適性に合わせた業務アサインの機能は、業務内容、時間、場所、商品特性などを基に、要員の適性に合った業務をマッチングする。管理者が過去の作業実績から要員の資質と与えられた業務に対する成果などの情報を入力し、NEC the WISEの1つである「RAPID機械学習技術」に組み込み分析し、最適なアサインを可能にする。
さらに、AIを活用した倉庫内の負荷状況分析によって動的な要員配置を実現する。NEC the WISEの1つである「自律適応制御技術」を活用し、現場の負荷状況をリアルタイムに把握。残作業と直近の生産性に応じた要員配置を自動でレコメンドする。作業待ちを抑制し、管理者不在時でも負荷状況に合わせた動的な要員配置を実現するとともに、全体最適によるチームワークの最大化も期待できる。
2018年7月には、日通NECロジスティクスにおいて同サービスの実証を行い、余剰要員の削減、シフトの組み換えによる残業の抑制、動的な配置変更によるスループットの向上など、特定のエリアや期間において約10%の生産性向上効果を確認した。
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