調査会社IHSアイサプライによると、4Sにはインフィニオン製チップは採用されておらず、代わりにクアルコムの新たなチップが使用されている。インテルは昨年、インフィニオンのワイヤレスチップ事業を買収していた。
分解を行ったアナリスト、アンドリュー・ラスワイラー氏は「クアルコムの大勝だ。同社製チップの価格はアイフォーン1台につき14ドルから15ドルだ」と述べた。
インフィニオンはかつて、携帯電話をワイヤレスネットワークに接続するベースバンドプロセッサと呼ばれるチップをアップルに納入していた。インフィニオンは引き続き、小型チップをアイフォーンに供給しているが、ラスワイラー氏によると、かつてアップルに納入していたチップに比べると、重要度ははるかに低く、価格もずっと安い。
この切り替えはインテルにとって痛手だ。同社はデスクトップやサーバー向けチップで支配的な地位にあるが、拡大するスマートフォンやタブレットの市場で足がかりを得るのに苦心している。14億ドルを投じてインフィニオンのワイヤレスチップ事業を買収したのはこのギャップを埋めるためとみられている。インテルは「アトム」と呼ばれる自社の携帯端末向けマイクロプロセッサを持つが、顧客の獲得に苦労している。
インテルの広報担当者はコメントを拒否し、アップルはコメントの求めに応じていない。
携帯電話メーカーは、部品供給業者に何を供給しているのか明らかにしないよう求める。このため、アイサプライはその都度、携帯電話を分解し、部品のメーカーと価格を突き止めている。この調査により、サプライチェーンにおける勝ち組と負け組が明白になり、アイフォーン1台からアップルが得る利益がある程度把握できる。
ラスワイラー氏はアイフォーン4Sの推定部品原価について、16GBモデルが188ドル、32GBモデルが207ドル、64GBモデルが245ドルだとした。米国での販売価格はそれぞれ649ドル、749ドル、849ドルだが、顧客が2年契約を選べば通信会社が450ドルを負担する。
最も高価な部品はメモリチップだ。アップルが過去に最も多く使用していたのが、サムスン電子と東芝のメモリチップだ。しかし、アイフォーン4Sを分解して現れたのはハイニックス半導体のメモリチップだった。
アイサプライは、これは通常の状況ではないという。ハイニックスが最有力の供給業者とみなされることはあまりないためだ。
アップルがサムスンを閉めだしたとの結論に警告しておこう。ラスワイラー氏によると、メモリチップは日用品(コモディティー)化しており、アイフォーンの機種ごとにメーカーが異なることも起こり得る。携帯電話メーカーが多様な業者からの供給を望むためだ。
サムスンも、アイフォーン4Sにコンピューター馬力を供給する、アップル設計による「A5プロセッサー」のメーカーとしてのより重要な役割を維持したようだ。
800万画素のカメラの供給業者は特定できないという。アップルは苦心して業者の身元を隠したようだ。