2018年5月12日土曜日

中国がAI教育を本格化、40校がモデルケースに

中国では、政府、大学、企業がサポートする形で、高校生たちへの人工知能(AI)教育が本格化していく気配だ。

中国国内および海外各メディアによれば、上海にある華東師範大学が中国初となる高校生用AI教材を発表したという。教材はまず、中国国内にある40の高校で採用されるが、該当校は「モデルケース」の役割を果たしていくとされている。つまり今後、中国全土の高校生を対象としたAI教育カリキュラムのベースになるのが、今回開発された教材および導入校の経験&ノウハウというわけだ。

なお教材は、中国が誇るユニコーンAI企業「センスタイム」(商湯科技)と華東師範大学が共同で開発したもの。センスタイムは、顔認識AIおよび関連サービスの分野で頭角を現している企業で、日本の自動車メーカー・ホンダなどとも共同研究を行っている。

現在、世界的にAIへの関心が高まる一方、研究・開発をリードする人材が不足しているという実情が世界各国で伝えられている。そんななか、米国を追い抜きAI産業で覇権を握りたい中国が、基礎教育段階に一策を投じてきたということになりそうだ。

中国では、「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」の一角、バイドゥが、3年以内に中国国内で10万人のAI人材を育成するとも宣言している。最近では、李彦宏会長夫婦が北京大学に6.6億元(約110億円)を寄付した。同資金は「北京大学百度基金」としてAI研究に活用される。ちなみに、リー会長自身は、1991年に北京大学情報管理学科を卒業したOBだ。

シャオミも武漢大学と提携しAIラボを設立。共同で理論および技術研究を進めながら、人材も育成する。シャオミは、同プロジェクトのために1000万元を投じる予定だ。

このように、スピード感や圧倒的な物量で攻勢をしかける中国が、いずれ政界のAI産業をリードしていくのではないかとの憶測が流れるなか、欧米からは否定的な意見も出てきている。

英オックスフォード大学は今年3月、レポート「Deciphering Chinas AI-Dream」(中国のAIの夢を読み解く)を公開。米国と中国の「AI潜在指数」(以下、AIPI)を比較し、中国の人工知能の力量は、米国の半分だと評価した。なお、AIPIは、「ハードウェア」「データ」「アルゴリズム」「商業化」の4側面から、国家のAI能力を総合的に測定した指標だ。

レポートでは、AI研究人材の数で中国(3.9万人)は米国(7.8万人)のおよび半分に過ぎず、論文の引用数や特許活用数でも米国が大きく上回っていると分析している。

レポートが唯一中国の優位を認めたのは「データ量」だった。今後、AI教育を高校から取り入れることで、豊富なデータを活かせるAI人材を効率的に生み出していくことができるのだろうか。人材不足という課題解決に向かう中国の動きに注目したい。