2017年3月13日月曜日

不動産会社の儲けの仕組み

マンション用地を買って、マンション建築を建設会社へ発注し、マンション販売を住宅販売会社へ委託する不動産会社、俗にいうマンションデベロッパーの原価や収支構造がどうなっているかご存知ですか?

マンションはあなたにとって、人生で一番高い買い物です。だから、あなたが、マンション購入代金として支払うお金のうち、一体どのくらいが原価にそしてどのくらいが利益となっているのかを、知っておきたいと思いませんか?また、少しでも安く買いたいのが人情です。経費のどの部分が住宅価格を抑えるのに効いてくるのかは、特に知っておきたいところです。 そこで、今回は、あまり一般には公開されないマンション事業の収支について見ていくことにしましょう。 分譲マンションの原価は他の商品にくらべて高い 収支の内訳は以下の図のとおりです。 マンション収支の構造 マンションの総売り上げを100としたときの用地費は32、建築費は48になります。つまり、原価率は80パーセントにも達します。マンションは高原価率商品と言わざるを得ません。因みに、私たちの身近な商品の原価率をみてみると、化粧品は40パーセント、ハンバーガーは60パーセント、本が37パーセントです。こうした商品と較べてみると、マンションの原価率がいかに高いかが分ります。 次に、建築費と用地費の内訳を見ていきましょう。

64がひとつの目安です

マンションの原価にあたるのは建築費と用地費で、だいたい、建築費6に対して用地費は4という割合(64)がひとつの目安になります。ただし、地価の高い都心部では、建築費:用地費=55となり用地費の割合が高くなります。逆に地価の安い郊外なら建築費:用地費=73になり、用地費の割合がさがります。

一方、建築費は都心も郊外もあまり変わりませんので、用地費の分だけ都心のほうが、物件価格が高くなるというわけです。

用地費と建築費の内訳は?

用地費には、土地代だけではなく、土地購入時の仲介手数料、既存建物の取り壊し費用、支払い利息(土地代金は借り入れた資金で支払うのが一般的)、税金、登記費用などが含まれています。

また、建築費には、建物の建築費以外に、設計管理費、電波障害費、近隣対策費、下水道工事費などの公共負担金がかかります。建築費の目安としては、1住戸70平米あたりで約1,830万円程度かかります。 設計管理費は、工事費の額によって料率が違ってきます。2億円の工事費であれば6.96パーセント、5億円であれば5.95パーセント、10億円であれば5.69パーセント、20億円であれば5.00パーセントとされていますが、実際には23パーセント程度安くなるのが、普通のようです。 電波障害費は、1キロメートル四方に高層建築物がひとつもない地域で7階建マンションを建てる場合、工事費は約14,60万円かかります。 近隣対策費というのは、工事に反対する近隣住民にたいして慰謝料的性格もので、1軒につき10万円程度となります。加えて日影補償費としてマンションが建つことによって新たに発生する日影1時間につき、10万円〜20万円の支払いがなされています。 用地費と建築費に削減余地はあるのでしょうか。

用地費、建築費に削減余地はあるのか?

また、建築費も借入資金によって支払われますので、支払い利息が発生します。ただし、最近の厳しい経済情勢のなかでは、銀行は中堅の不動産会社に対しての融資は、3億円程度しか実行しないため、用地取得費を賄うのが精いっぱいで、建築費については2億円程度の手元資金で賄わなければならず、従来のように全てを借入でマンション事業を展開することが、難しい状況のようです。手元資金がある程度ないと、マンションデベロッパーはやっていけないご時世のようです。

こうして見てくると、用地費、建築費の削減余地はあまりないことが分ります。無理に削減しようとすると、構造面で不安が生じますし、設備・仕様面でも貧相になりかねません。

 

削減するなら販売経費、その内訳は?

総売り上げから原価を差し引くと、残りが粗利ということになります。粗利は一般的には20パーセントがひとつの目安とされています。そして、粗利の中でも、相当なウエイトを占めるのが販売経費です。その内訳を見てみましょう。

販売経費は総売り上げを100とした場合10程度の比率になります。こちらの経費には、販売手数料やチラシ・パンフレット・DM通信費などの販促ツール費用、新聞・雑誌・インターネットなどへの広告宣伝費用、モデルルーム・販売センターの建築費などが含まれます。 一部の大手不動産会社を除けば、多くの不動産会社は、販売部隊を社内におかずに、専門の会社へ委託していますので、この経費は削減の対象にはなりにくいものだと考えられます。

販売経費に含まれるものとは

販促ツール費・広告宣伝費・モデルルーム建築費などの広告・宣伝費の目安は、総売り上げ額の34パーセントというのが一般的です。また、モデルルームの建築費は借地代も含めて1,500万円〜3,500万円程度とされています。

広告宣伝費が総売り上げの34パーセントとすると、販売戸数が30戸程度の小規模マンションの広告・宣伝費は200戸以上の大規模・タワーマンションに比べれば、計算上6分の1以下になってしまいます。 次に、小規模マンションと大規模マンションの売り方の違いをみていきましょう。

モデルルームをつくらない小規模マンションと つくる大規模マンション

そのため、小規模マンションはモデルルームをつくらず、キッチンなどの設備の一部をサンプルとして展示するサンプル・ルームにとどめたり、新聞・雑誌などのマスメディア広告をやめて、地元中心の集客に重点をおいたポスティングにシフトしたりして、広告宣伝費を縮減します。もちろん派手なパンフレットなどもつくらず、販促ツールも可能な限り簡素化します。

反面、大規模マンションは有名な映画俳優をイメージキャラクターにたてて大々的なCMを展開したり、巨大な販売センターをつくりプロモーションビデオを流したり、数種類にも及ぶパンフレット類を豪華な化粧箱に入れて見学者に渡したりします。 こうして見てくると、小規模マンションの広告宣伝や販促ツール、モデルルームが地味な理由はある程度納得できるのではないでしょうか。

大規模マンションの広告・宣伝費による、 買い手と売り手のジレンマ

一方、大規模マンションの派手なアプローチは、大量の集客をしなければ、全住戸を完売することが難しいという理由によるものといえるでしょう。

ですが、広告・宣伝費は物件価格に転嫁されているものであることは間違いありません。買う側の立場としては、少しでも安く売ってもらいたい、そのために、この広告宣伝費を出来る限り切り詰めて欲しいと思います。 一方、売る側の立場としては、切り詰めれば販売がうまくいかなくなるというジレンマがあります。この二律背反の命題をどう現実的に処理していくかが、不動産会社のマーケティング力となるのです。適切な購買ターゲット設定、売れ筋を押さえた価格設定、ターゲットに好まれる商品企画、短期間で効率よく売りさばく販売企画が、分譲マンションをてがける不動産会社の能力のみせどころとなるのです。

華美すぎないマンションは、販売経費エコマンション

そうした点からみて、大規模マンションにもかかわらず、販売センターが簡素で、モデルルームやパンフレットなどの販促ツールも華美過ぎないマンションは、販売経費を効率化し、極力価格を抑えようとしているひとつの表れと解釈できるでしょう。

また、青田売りで即日完売する物件は、価格設定が安すぎたことの証ともされます。概ねマンションが完成するまでに、全ての住戸が完売するペースでのマーケティングが理想とされています。もし、あなたが検討中のマンションで、完成まじかで売り出し住戸の残戸数があと数戸、というマンションは買って納得の物件といえるでしょう。

次に分譲マンションビジネスについて解説します。

マンションビジネスは案外儲からない?

それでは、不動産会社の利益はどのくらいか、というと、粗利20パーセントの中から、販売経費を除き、更に諸経費を除きますから、結果として利益率は810パーセント程度になってしまいます。他の業界で身近なところでは、ファミリーレストランで10パーセント、コンビニで9.5パーセントですから、マンション事業とほぼ同じ水準の利益率であることが分ります。

過当競争にある飲食、サービス業界とほぼ同じ利益率というのは、決して高いとはいえません。ただ、総売り上げで比較すると、ファミリーレストランの年間売上は14,400万円、利益1,440万円、コンビニは年間売上21,600万円、利益2,160万円です。かたや総戸数100戸・平均価格4,000万円のマンションの売り上げは40億円とケタが違います。

 

分譲マンション事業は、ハイリスク・ハイリターンビジネス

したがって、完成までに完売すれば、4億円の利益確保につながりますが、そこにいたるまでには、1.5年間を費やしますので、年間の利益に換算すると、2.6億円となります。他の事業と較べれば、利益絶対額は圧倒的に多いわけです。ただし総戸数の10パーセント、つまり最後の10戸が売れなければ、利益確保にはいたりません。しかも、最後に残る不人気住戸の販売は難易度が高く、販売期間が長期化すると販売経費が当初想定したより多くかかり、利益圧迫につながります。また、値下げして売ろうとすれば、それも利益減少につながるのです。

このように、分譲マンション事業はハイリスク、ハイリターンなビジネスというわけです。特に地価が右肩上がりで、不動産の投資が積極的だった1990年初頭までは、売れ行きリスクも少なく、結構儲かった時期もあったかもしれませんが、現在のように、不動産価格が低下し、需要も減退する市場においては、意外に儲からない、というのが実態かもしれません。

 

マンション事業のお金の流れ

マンション事業は、下記の表の〈18〉のような流れで行われます。その流れにしたがって、マンションデベロッパーは、まず〈1〉・〈2〉事業に必要な用地所得のために、土地代金を銀行から借り、用地を仲介した不動産会社へ手数料を支払います。また、〈4〉建設会社への工事費も工事着手時に一時金を銀行から借り入れて支払います。

そして、〈5〉購入者から受け取った物件価格の20パーセントの代金を、〈6〉マンションが完成したら工事費の残金にあてます。〈7〉・〈8〉で契約住戸に対して購入者から支払われる代金は、銀行への利息、元本の返済にあてられ、手元に残ったお金がマンション事業の粗利となるわけです。

マンションは青田売りでないと資金繰りがうまくいかない

このようなお金の流れを見ていくと、他の多くの商品と異なり、マンションが完成前に売られる、いわゆる青田売りにならざるを得ない理由が分ります。

つまりマンションの完成後に、建設資金の支払いや用地資金の元本を返済するには、予め、購入者から物件代金を回収しておかなければ、支払いができない、というデベロッパー側の事情によるものなのです。 買う側にとってみれば完成後に実物を自分の目で確かめて買いたいところですが、売れ残りではなく新規販売時に、そのような販売手法がとれる、自己資金が潤沢なデベロッパーはほとんど存在しないのです。 次に、さらに深くお金の流れを見ていきましょう。

完売までの時間が長期化すればするほど、利益は減少する

そして、前頁の表〈5〉〜〈7〉で青田売りが始まり、建物が完成するまでの期間に、総戸数の8割まで契約が進んでいれば、マンションの原価分の資金回収には目途がたちます。(儲けの仕組み1を参照)銀行への借り入れも、この段階で完済できれば、その後に売れた住戸の代金が粗利に計上できるわけです。このような流れで全住戸が完売するのが、建物完成後1年以内であれば、まずまずの販売成績というのが、業界の常識です

ところが、これまた、先のリーマンショックのように不動産不況に見舞われると、完売するまでに完成後2年かかるなどということは珍しくありません。完売までの期間が長ければ、販売事務所の経費や販売担当者の人件費が嵩んでいき、利益を圧迫します。 しかも、不況期には需要減、供給過多により、相場価格は時間の経過とともに、下がってきます。そうなると、既に販売中の物件はあとから販売される新規物件に比べて、割高感が強く、更に売れない状況に陥ってしまいます。こうした悪循環を断ち切りできるだけ早い時期に完売するために、水面下の相対で「月までにお決めいただければ」と値引きや無料オプションが始まります。

不況期に完成までの契約住戸が少ないと黒字倒産が起きる

2008年秋に起きたリーマンショックで、中堅のマンションデベロッパーが何社も倒産したり、倒産には至らないまでも、銀行管理下で企業再生というケースが少なからず発生したことは記憶に新しいことです。

こうした事態が生じるのは、〈5〉の青田売りの期間に契約できた住戸が売れ行き不振で少なく、〈6〉.〈7〉で発生する支払いに必要な資金の回収ができず、資金ショートが起こるのが原因です。時間は少しかかるものの、最終的に完売し、事業収支は黒字になる見込みがたっていたとしても建物完成後の支払いのためのキャッシュフローが滞ると、黒字倒産という事態に追い込まれてしまうのです。 まず借金して事業を始め、住戸を青田で売って資金を回収して、完成後に借金を返済するというお金の流れを前提としたマンション特有のビジネススキームは、売れ行き不振でお金の流れが一旦止まってしまうと、黒字でも倒産という事態は避けられないのです。 また、他に賃貸やオフィス、商業施設などの事業を複合的に営んでいれば、他の事業から資金を融通する道もありますが、マンション専業のデベロッパーは、マンション市場全体が不況に陥ると、リスクヘッジする手段が他にないために、倒産は避けられないのです。過去にさかのぼると、だいたい7年おきに不況の波が訪れ、マンション専業のデベロッパーの倒産が新聞を賑わすことになります。 お金の流れをつかむことでわかるお得な販売時期をお知らせしましょう。

値下げ販売のタイミングは不況になった翌年度の決算前

このように、黒字倒産とまではいかないまでも、不動産不況期には、需要減、供給過多により、住宅価格の下落が進みます。販売が長期化すればするほど、既に販売している物件については割高感がでてきて商品価値が落ちてくるため、思い切って値引き販売でできるだけ早期完売をめざさなければ事業は大赤字になってしまう懸念が出てきます。

そうすると、前述のような水面下で、個別にダンピング販売する程度では、売れ行きのスピードが遅いため、「一斉値下げ販売!」と銘打って、チラシや新聞広告で、値下げを告知し、大量集客、早期完売を企図するデベロッパーが現れます。 この場合、だいたい値引き幅は23割程度になります。このマスメディア告知により値引き販売をする際には、既に値引き前の価格で契約した購入者に対しても後追いで値引きを実施することになります。こうして、銀行や建設会社への支払いを滞らせないため、また赤字幅を可能な限り低く抑えるために、見切り値下げが始まるのです。その時期は概ね決算時期である3月を控えた1月後半から2月にかけて見られる減少です。

お金での流れをつかむことでできる有利な交渉

このように、お金の流れをつかむことで、マンションデベロッパーが、現在どのような状況にあるのか、そのために販売上どのような対処をしようとしているのか、が分ってきます。そうすれば、あなたは、マンションデベロッパーの出方を先読みしながら、余裕を持って有利なポジションで、交渉ができるようになってくるのです。

それでは、更にマンションデベロッパーのビジネススキームを深掘りして、次回はより詳細な「マンション販売の流れ」について、次々回では「物件の値付けの仕方」についてご説明します。マンション事業の仕組みがここまで分れば、あなたは最強の消費者になれるはずです。

 

マンション販売の流れを知る

前回の記事「3.お金の流れ」で、マンションは完成前に販売される青田売りが主流だとご説明しましたが、実際のところ、販売が開始されるのはいつごろからでしょうか?マンションの販売時期を知るのに、一番身近な方法は広告です。そこで、販売の流れを駅などに置いてあるフリーペーパーのマンション広告をもとにご説明しましょう。一般的な販売の流れは、下記のようになります。

〈マンション販売の流れ〉 予告広告(建物完成から約1年から13ヶ月前程度から始まります)優先案内会本広告一般モデルルーム公開登録期間 「先着順申込受付」または「登録抽選」契約売れ残り値下げ、景品広告申込・契約完売 「予告広告」は、販売開始の予告編マンションの広告に「予告広告」という表示があるのをご存知でしたか?一般的に、予告広告は、マンションの建築確認が下りた後、建物完成から約1年から13ヶ月前程度から始まり、販売は「予告広告」を打つところから始まります。ただし、予告広告の段階では販売価格や販売戸数が決定していないため、マンション購入の予約や申し込みを受け付けてはいけないことになっています。だとしたら、何で広告するの?という疑問の声が聞こえてきそうです。 これは、最近のマンション市場の変化が激しく、売り手が早くから販売価格を決めることが出来ない状況にあるためです。販売開始直前に価格を決め、正式な販売広告を打つと、売買の申し込の締め切りまでの期間が非常に短く、思うように契約数が確保できないために考えられた苦肉の策です。 価格や販売戸数が未定のマンションの予告広告は、消費者にとっては有効な情報とはいえませんが、売り手側にとっては、こんなマンションが近々販売される予定なのでどうぞ候補物件の1つに入れてください、というメッセージなのです。 次に、優先案内会の舞台裏をみていきましょう。

来訪者の数や反応をもとに、価格・販売戸数が決まる

予告広告の段階で消費者が売り手に問い合わせると、モデルルームの事前案内会への参加予約を勧められます。実はこの事前案内会は、一般のモデルルーム見学会に先駆けて行われるもので、価格や販売戸数を決めるための事前マーケテインングに該当するのです。事前案内会の参加者の数やアンケートの回答から参加者の購入予算などを分析し、価格や販売戸数を決定するためのデータとするのです。 もし、事前案内会への参加者が多く、物件に対する反応に好感触を得たりすると、売り手は価格を高めに設定したりするのです。逆に参加者が少なく反応が鈍いと、価格は弱気の設定となるわけです。

優先案内会などのイベントは、申込決定率を高めるのが目的

事前案内会、優先案内会とも言われますが、これは申込み率を高めるために、実施されるイベントです。モデルルームの一般公開を前に23回開催されるものです。予告広告の段階で物件友の会に入会した方などに対して案内されるもので、特定客限定の招待ですから、時間指定ができ煽り効果を演出することができます

万一、混雑していなくても、招待された顧客は不思議には思いません。営業マンは「少人数に絞った特別内覧会なので少ないのです」と弱気にならずに、商談ができますし販売開始前に特別に招待されたという優越感を得た顧客は、申込を迫られることもない時機の気楽さが相まって比較的くつろいでくれるので、ひとりひとりじっくり接客できるのです。長時間商談ができるので、申込開始時の再来へつながるというわけです。 また、モデルルームの商談スペースは、サロン風のコーディネート、販売スタッフはおそろいの制服、飲み物はオーダー方式にするなどの演出をして、高い金額の買い物をすることへの高揚感を高める工夫もしています。さらに、再来を促すために、「住宅ローン相談会」や「インテリア相談会」などのミニイベントも実施しています。 このように、様々なアプローチで顧客を集め、申込の決定率を高めようとするのです。 次に、販売方法の入手方法を見ていきましょう。一躍情報を掴むには、どうしたらよいでしょう

友の会誌は、「大手が手掛けるマンション販売の情報源に

三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、東京建物などマンション大手企業が手がけるマンションについて、いち早く販売情報を入手したければ、友の会に入会して定期刊行物である会報誌を送ってもらうという、方法があります。三井不動産レジデンシャルの会報誌「こんにちは」は発行部数が月間約20万部と言われる巨大メディアです。

こうした会報誌を定期購読しておけば、居ながらにして早期に販売情報を入手することができるというわけです。最近販売される都心立地の大規模マンションのほとんどは、大手不動産会社が手がけています。特に大規模マンションを検討する方は、友の会の会報誌を定期購読することで、マンションの販売開始情報をもれなくキャッチすることができるでしょう。 ただし、会報誌送付の依頼と引き換えに、希望する物件に関する詳細なアンケート項目に記入することが求められます。これは、不動産会社が販売するマンションについての顧客リストとなり、自分が希望しない物件(不動産会社が買って欲しい物件)のDMが会報誌とは別に、相当数送られてくることも、覚悟しなければなりません。 あなたにとって、マンションの販売情報を、楽して入手できる会報誌は、大手不動産会社にとって顧客囲い込みのツールとなるのです。ただし、大手の会報誌の購読者は見事に重なっているので、顧客囲い込みは独占的とはいかないという実態があります。

チラシ中心の小規模マンションの販売は見逃すことも

広告はマンションの規模により手法が異なります。30戸程度の小規模なマンションは前述のフリーペーパーは活用せず、マンションの所在地周辺にチラシをまく程度にとどめます。戸数が100戸、200戸と多い大規模マンションは、多数の集客が必要なため、広域に配布されるメディアを通して行います。そうしないと全戸契約が難しいためです。

ちなみに広告による集客に対する契約者の比率は一桁程度で、歩留まりは決して高くありません。半面、30戸程度であれば、チラシで地元の契約者を確保すれば販売の見込みがたつというマンションならではのマーケティングによるものです。もちろん、物件の規模により広告予算も決まってきます。小規模マンションは大規模に比べ予算額はすくないため、フリーペーパーなどのマスメディアには広告掲載ができないという、現実もあるのです。 したがって、小規模マンションの販売情報を漏らさず手に入れるには、住みたいエリアを特定し、そこに賃貸住宅を借りて移り住み、配布される新聞チラシを入手することが必要になります。そこまでできない!というのであれば、情報が来てくれるのを待つのではなく、能動的に不動産サイトをこまめに検索する必要があります。 次回は、購入方法についてお話しします。

物件購入方法には2種類ある

さて、本広告により正式に販売が開始されると、広告には、「日より先着順受付開始」とか「登録受付期間日〜日」という表示がなされます。前者を「先着順方式」といい、後者を「登録抽選方式」といい、どちらにするかは、売り手の販売戦略によります。

2つの違いを、売り手側の視点から見てみましょう。以下の表をご覧ください。

先着順方式と登録抽選方式

現在、販売されているマンションの多くは、「先着順方式」です。現在は、飛ぶようにマンションが売れるという、需要過多の市場ではありません。また、消費者も慎重に自分の予算と希望条件を照らし合わせて上で、買う・買わないを見極める行動をとっていますので、大量集客して煽ろうにも、なかなか買い手が乗ってはこないという状況だからです。

こうした状況のなか、あえて「登録抽選方式」をとる物件があるとしたら、それは相当に売れる自信のある物件とみなしても良いでしょう。こうした物件に出会ったら、買う・買わないは別として、積極的に見学してみることをお勧めします。物件の見る目を養うのに役立つはずです。 次に、大規模物件でしばしば行われる、「登録抽選方式」のメリットについてお話しします。

大規模マンションは分割販売が一般的

概ね100戸以上の大規模物件では、しばしば第150戸、第250戸というふうに、販売を2回に分けて、「登録抽選方式」を行うことがあります。この分割販売には、不動産会社にとって、つぎのようなメリットがあるのです

〈「登録抽選方式」を行うメリット〉

1回あたりの販売戸数が少ない分だけ顧客数の獲得が容易 一定期間に集められる顧客数には限度があるので、たとえば買い手が1カ月に50人しか集められなかったとすると、100戸のマンションは虫食い状態で50戸が売れ残ることになります。これに対して、分割販売によって50戸のみの販売にしておけば、全戸きれいに売りきることができる、というわけです。

・申込締め切り日を2回以上設けられるので、煽り効果が期待できる 締め切りがあると買い手の心理は、「どうせ買うなら売れ残りより希望の部屋のある今のうちに」という方向を示し、受付期間中に検討して結論をだそうという錯覚を持ちがちです。したがって、申込のスピードが高まるという効果が期待できます。第1期の販売で締め切りをせまり、第2期の販売でも再び締め切りを煽っていくことができるので、分割販売のほうが、営業チャンスが増えるというわけです。 ・「第1期全戸完売」を広告にうたうことで、好人気イメージを定着させることができる 100戸中50戸売れました」というより「第1期は全部売れました」と言うほうが、同じ50戸でも、以降の広告のインパクトは後者のほうが格段に強いですし、このほうが口コミ効果も高いと言えます。 ・第1期販売をテストマーケティングとして位置づけることができる もし第1期が完売を逃しても、第2期で販売態勢を立て直し軌道修正を図ったうえで、「新規売り出し」に再挑戦することができます。第1期の来場者の動向分析、媒体別野「広告効果等の検証を行い、より綿密な第2期販売計画を立案することができるのです。 ・分割の回数分だけ販売のヤマをつくることができる 一括販売の場合は、集客契約のヤマを1回しか造れませんが、2回に分割すれば2回のヤマを造ることが可能で、その回数に合わせて営業の集中力も発揮させやすくなります。中だるみの防止ができるというわけです。 ・競争力がアップし、新鮮味も維持できる 1回あたりの販売戸数を絞ることで、買い手側にも、営業マン同士でも競争力が高まり、決定のスピードが高まります。また、分割販売では各期ごとに「新発売」をうたえるので、その都度わずかなりとも顧客に新鮮味を感じてもらうことができます。 このように、「登録抽選方式」は、売り手にとってメリットは大きいのですが、買い手にとってはどうでしょう。

「登録抽選方式」は、買い手にとっては選択の幅が狭まる>>「登録抽選方式」は売り手にとってのメリットは大きいのですが、買い手にとってはどうでしょうか?たとえば第1期の時点では、第2期に販売予定の住戸の間取りや価格は敢えて知らされない場合が多く、本当に自分の希望条件を満たす住戸があるかどうかを、全ての住戸情報をもとに選択できない、つまり選択の幅が狭まるという状況は避けられません。

締め切りがあるからと、つい焦ってしまい、妥協した住戸への申込をしてしまうのは、不動産会社のオモウツボ、ですから、気に入らなければ申し込まないという気構えが買い手には必要ではないでしょうか。 また、期ごとの販売住戸の割り振りの傾向についても知っておきたいものです。物件価格の相場が値下がり傾向にあるデフレ期には、前半を高額帯中心、後半を低額帯中心に販売する傾向にあります。 さらに、翌期で考えると買い手に言わせないために、同タイプの間取りを各期に分散して売らないよう、階数別の分割などは避ける傾向にあるようです。気に入った間取りがその期にあるのなら、翌期まで判断を先延ばししないほうがいい、ということもあるので、ご注意ください。 こうして、販売が開始され「登録抽選方式」「先着順方式」で申込契約の流れをつくった結果、売れ残りの住戸ができてきます。そこで、売れ残ってしまったとき、不動産会社はどのような対策をとるのでしょうか?

 

売れ残ってしまった時の販売対策

売れ残ってしまったら、誰かが買ってくれるのをじっと待っているわければありません。あれやこれやと、様々な手法を使って、魅力的な物件に見せていきます。 売れ残ってしまった場合、不動産会社は、売れ残りの原因を分析します。分析は物件周辺の競合物件の状況、市況、景況などをもとに、自社の物件のどこに売れない理由が隠されているのかを解明していくのです。

たとえば、周辺での物件販売が多いと、慌てて決めなくてもいいだろう、良く見較べて条件を比較して、となります。価格下落傾向であれば、先安感がるためもっと下がるのでは?と買い手の決断を遅らせます。 競争の激化は間取り・設備・仕様のレベルアップをもたらしますが、そのときに、見劣りのする物件を販売していれば、当然他の物件と比較され、よほど価格が安いか広いかしない限り、契約数の確保は難しくなります。また、分譲価格を抑えるために、圧縮間取りを販売し、狭いもので我慢しろ、では買い手の購入意欲は減退してしまいます。 このように、様々な買わない要因を洗い出し、契約に結び付けるための顧客獲得をめざし、販売事務所への集客動員数を増やす手法がとられます。 次に、動員量を増やす方法として代表的なものをご紹介します。

動員量を増やす=買いやすくする方法

動員量を増やす方法として、代表的なものをご紹介しましょう。まず、一旦、広告を止め、販売を23か月にわたり休止します。その上で下記の方法をとります。

・価格引き下げを断行し、広告を再投下する

話題性があるので動員には成功するが、下げ方が不十分だと成約率が売り手が期待したほどには高まらないこともあるので、やる以上は2割、場合によっては3割値下げなど大胆にやる必要があります。また、既契約者にも返金手続きが必要になります。その分、利益は薄くなってしまいます。リーマンショック以降の年度末に在庫を処分するときにこうした値引きが話題になりました。年度末は値引きが一番多い時期です

・総額5000万円キャンペーンなどの実施

景品として1300万円の購入資金プレゼント、2等同100万円とか、東京ディズニーランド12日ご招待など、形を変えた値引きも良く使われる方法です。

・家具付きモデルルーム販売、モデルルームの格安販売

本体価格も同時に下げるなどして、お得感を打ちだし、買い手をその気にさせる。ただし、本体価格が高いとあまり効果はありません。

・無利息ローンによる買いやすさを打ち出す広告を実施

所得水準の低い来場者の動員には成功するが、成約率はあまり伸びない。そこで、値引き幅がエスカレートする危険性が売り手側には高くなります。ただし、買い手としては、このような値引きや、金額換算すると決して安くない景品が当たる懸賞などが行われている売れ残りマンションの販売作戦に惑わされてはいけません。あくまでも自分の条件に合った物件や住戸を選ぶようにしましょう。そして選んだ物件がたまたま、値引き等の動員策を実施していたのなら、お得!とその時は喜びましょう。

以上、マンション販売の主な舞台裏をご紹介しました。これを読まれた方は、販売のプロセズごとに、営業マンがどのようなアプローチをしてくるのかが、先読みできるようになります。先が読めるとその分、精神的な余裕が出てきますので、煽られたり、焦ったりせず冷静に、購入の判断ができるようになるはずです。これで、あなたは更に賢い消費者へと成長できたのではないでしょうか。

 

 

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