マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学と米サンディア国立研究所などからなる研究チームが、量子コンピュータを構成する量子メモリーの新たな構成方法を開発しました。この技術によって従来に比べて量子ビットの読み取り精度が向上するとしています。
量子コンピューターは、通常のコンピューターが情報を扱うビットという概念を、量子ビットと呼ばれる、物質の量子力学的な状態で表現します。通常のビットが"0"か"1"のどちらかしか値を保持できないのに対し、量子ビットは任意の割合で"0"と"1"両方の状態を重ね合わせて保持できる特性を持ち、これを量子メモリーとして扱うことで、従来のコンピューターに比べて飛躍的な性能の向上がはかれる可能性があるとされます。
ダイヤモンド量子コンピューターでは、ダイヤモンドの結晶格子中に空孔と呼ばれる炭素原子の欠落部分を作り、そこにドーパントと呼ばれる炭素原子以外の物質原子を組み合わせることで自由電子を持つ"中心"を構成します。
量子ビットの状態を長時間保持するためには、一般にドーパントに窒素を用いた"窒素-空孔中心(NV中心)"が使われ、光励起による発光を読み取ることで量子ビットの状態を得ることができます。ます。ただ、NV中心は広いレンジで発光する特性があり、情報の読み取りが不正確になってしまう問題がありました。
チームは研究において、窒素の代わりに発光スペクトラムの幅が狭いシリコンを使いました。まず人工ダイヤモンドを200nmほどの厚さに加工し、エッチング処理で空孔を生成。そこにNano-Implanterと呼ばれる特殊な注入器を使用してシリコンイオンを送り込むことで、"シリコン-空孔中心(SiV中心)"を作り出しました。
さらに電子ビームでダイヤモンドを加熱して空孔の移動を活発化し、より多くのシリコンの固定化を可能にしました。
ただ、研究チームはこれだけではまだ量子コンピューターの実現に至らないとしています。この方法では量子ビットはより多く作れるものの、どうしても理想的な位置に作るのが難しく、読み出しに充分な光量も得にくいとのこと。
とはいえ、この技術がこれまでの量子ビット構成方法に比べればはるかに優れているのも確かであり、将来的な量子コンピューターの実現に前進したことは間違いありません。
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