2011年9月6日火曜日

Windows Phone 7.5=Mango

 マイクロソフトが開発したスマートフォン向けOSまたはプラットフォーム。
 以前からマイクロソフトは、スマートフォンあるいは携帯機器向けに「Windows Mobile」「Windows Phone 6.5」というプラットフォームを開発・提供してきた。しかし、その後に登場したWindows Phone 7は、Windows MobileやWindows Phone 6.5を踏襲することなく、スマートフォンに特化したプラットフォームとして新たに設計・開発された。こうした経緯から、Windows Phone 7のUIはWindows Mobile/Windows Phone 6.5とは大幅に異なるほか、Windows Mobile/Windows Phone 6.5のアプリケーションはWindows Phone 7上では実行できない。
 Windows Phone 7.5(開発コード・ネーム:Mango)の前のバージョンであるWindows Phone 7は2010年2月に発表されたが、これを搭載したスマートフォンは日本では発売されなかった。その後、メジャー・アップデートとされるWindows Phone 7.5が2011年5月にプレビューという形で公開され、同8月には世界初のWindows Phone 7.5搭載スマートフォン「Windows Phone IS12T」(製造:富士通東芝モバイルコミュニケーションズ、販売:au)が日本で発売された。ほかの携帯電話ベンダ各社からも、Windows Phone 7.5搭載スマートフォンのリリースが見込まれている。
 Windows Phone 7.5の特長の1つは、FacebookやTwitter、Windows Liveといったオンライン・サービスとの連携が強く意識されていることだ。例えば、オンライン・ストレージ・サービスのWindows Live SkyDriveとの同期機能を標準装備しており、PCとのファイル交換が可能だ。また、住所録に登録した知り合いがFacebookやTwitterなどに書き込んだりつぶやいたりした内容、投稿した写真などを集約して表示する、といった機能もサポートする。
 個性的なUIもWindows Phone 7.5の特徴として挙げられる。例えば従来のPC向けOSのデスクトップ画面やスマートフォンのスタート画面では、基本的にアイコンが主要な役割を担っている。しかしWindows Phone 7.5のスタート画面には、各機能が割り当てられた「タイル」が敷き詰められていて、ユーザーによって操作される主対象となっている。また、このタイルの表示内容はダイナミックに変わる仕組みで、例えばメールやメッセージ関連のタイルには受信したメール/メッセージ数が表示・更新されるなどする。アプリケーションの画面を開かなくても、単純な情報であればタイルから素早く確認できる。
 アプリケーションの基本的な画面レイアウトも独特だ。従来のスマートフォンでは次の画面に移る際、ボタンなどをタップして複数の画面を切り替えていくのが一般的である。一方、Windows Phone 7.5の「パノラマ」というレイアウトでは、一枚の大きな画面に情報を記しておき、これを横方向にスライドしてディスプレイに表示する位置を移動していく。ユーザーは左右へのフリック(指をタッチしたままスライドする操作)だけで目的の情報を探せる。
 ビジネス向けの機能としては、Microsoft Officeのモバイル版である「Office Mobile」を標準で装備している。WordとExcelについては閲覧/編集/作成が、PowerPointについては閲覧とテキスト編集、コメント入力ができる(ただしOffice 2003以前のバイナリ・フォーマットの文書では、執筆時点でまだ編集/作成ができない場合があるようだ)。またOneNoteによる画像や音声付きのメモも作成可能だ。さらにOffice 365やWindows Live SkyDriveといったオンライン・サービスを介して、PCと文書ファイルを共有できる。
 Webブラウザとしては、Internet Explorer 9(IE9)ベースのものが搭載されており、HTML5をサポートしている。ハードウェアによる画面表示の高速化にも一部対応しているとのことだ。メールについては、POP/IMAPによる一般的なメール・サーバへの接続を始めとして、Exchange Serverとの同期、Gmail/Windows Live Hotmailといったメール・サービスに対応している。複数のメール・サーバ/サービスからの受信メールを1つの受信トレイに集約する機能もある。
 Windows Phone 7.5対応アプリケーションは、専用のオンライン販売サイト(Windows Phone Marketplace)から入手して追加できる。Marketplaceでは、さまざまなベンダや開発者によって開発されたアプリケーションが無償あるいは有償で提供されている。また有償アプリケーションを購入前に試用する機能も用意されている。さらに、アプリケーションの公開前には、セキュリティ上の問題がないか一定のチェックと審査が行われるとのことだ。
 なおMarketplaceを介さないで直接スマートフォンにアプリケーションをインストールすることは許されていない。企業内でのアプリケーション配布については「検討中」とのことだ(関連記事参照)。ただしMarketplaceでは、ダウンロード・リンクを知るユーザーだけがアプリケーションを入手できる限定配布の機能も用意されている。
 セキュリティ対策としては、メモリ・カードなどの外部ストレージの暗号化や、遠隔操作による全データの消去(ワイプ)といった機能に対応しているほか、一般的なセキュリティ機能(SSLやWi-FiのWPA2暗号化など)は一通り備えている。またマイクロソフトの管理ツール「System Center Configuration Manager(SCCM)」の次期バージョンSCCM 2012では、英字を含む複雑なパスワードをWindows Phone 7.5に強制する、といった機能の対応予定があるとのことだ。
 オンライン・サービス、それもSNSとの連携に優れているというWindows Phone 7.5の特長は、コンシューマ向けと捉えられがちだが、ビジネス用途でも素早く情報を収集できるといったメリットをもたらす。Office Mobile標準装備などのビジネス向け機能もあわせて考えると、今後のアプリケーションの充実度や管理機能の拡充などにもよるが、ビジネス向けスマートフォンとしてWindows Phone 7.5搭載機が選択肢の1つになる可能性は大いにあるだろう。
 ただ、執筆時点ではauの1機種のみの提供となっており、機種選択の幅はない。今後、NTTドコモやソフトバンク、イーモバイルなどの携帯会社からの対応機種の販売に期待したい。

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