2012年1月17日火曜日

国内外でLTEが本格普及

 各社のスマートフォンを比較する時、デザインやOSの操作性に注目が集まりがちだが、通信性能を決定するのは半導体に他ならない。とりわけ「ベースバンドチップ」と呼ばれる通信信号を処理する半導体には、通信品質や省電力性能を左右する技術が詰まっている。

 近年、スマートフォンの普及に伴って、この分野で圧倒的な存在感を持っているのが、米通信用半導体大手のクアルコムだ。第3世代携帯電話全体では同社のシェアは4割弱だが、スマートフォンに限るとシェアは8割前後を占める。さらに最新のLTEに対応するベースバンドチップについては、現時点では市場をほぼ独占している。

 ドコモが2011年11月に公表した「中期ビジョン2015」によると、2015年度末までにスマートフォンの契約数を11年度末の数字(見込み)と比較して約4倍の4000万件に拡大し、そのうち3000万件をLTEにする計画だ。2001年にサービスを開始した第3世代携帯電話サービス「FOMA(フォーマ)」とほぼ同じペースで普及させることを見込んでおり、飽和感が指摘される携帯電話市場を活性化する役割が期待されている。

 海外でも米ベライゾン・ワイヤレスや米AT&Tなどの通信大手がそれぞれLTEサービスを商用化しており、今後、LTEに対応するベースバンドチップの需要は国内外で急増する見込みだ。ドコモはスマートフォンを製造するメーカーにクアルコム以外の選択肢を用意することで、国内のみならず海外からの需要も取り込もうとしている。

 ドコモはこれまでもiモードビジネスの輸出に苦戦するなど、自社技術の海外展開では何度も壁にぶつかってきた。しかし今回の半導体新会社については「スマートフォンの普及に伴って端末メーカーの調達もグローバル化しており、海外展開しやすい環境が整っている」(ドコモの三木氏)と自信をみせる。

 現状のままベースバンドチップの調達をクアルコムに依存し続けた場合、日本の端末メーカーが最先端の技術競争から脱落するのは時間の問題だ。ドコモによる半導体参入の取り組みは、日本の通信産業にコアコンピタンス(競争力の源泉)を残せるかどうかの試金石になる。

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