報道発表資料によるとまず1月中旬にドコモの全額出資による準備会社を設立、3月下旬に各社の出資を受けて合弁会社に移行する。現在のところ、新会社の事業スキームについて株主間で調整している段階で、出資比率といった詳細は固まっていないが、メーカー各社の出資後もドコモが新会社の筆頭株主として事業を主導していく方針だ。
新会社では従来の第3世代携帯電話の約5倍の通信速度がある「LTE」や、その先の「4G」と呼ばれる次世代通信規格「LTE-Advanced」に対応した通信機器向けの半導体を開発し、国内外の端末メーカーに販売していく。新会社は生産設備を持たないファブレス企業とし、開発した半導体の量産については株主であるサムスンなどに委託することを検討する。
ドコモはこれまでも通信用半導体の開発で国内メーカーを主導してきたが、外販を前提にした半導体メーカーを設立するのは今回が初めて。最近、韓国通信大手のSKテレコムが半導体大手のハイニックス半導体に出資する契約を結んだケースはある。だが、この出資は救済的な意味合いが強く、海外でもキャリアが半導体メーカーを傘下に持つ例は珍しい。
なぜ今、ドコモが半導体市場に参入するのか。その理由を探っていくと、「携帯電話産業の空洞化」に対する強い危機感が浮かび上がる。
よく知られているように、かつて日本のキャリアはそれぞれに端末メーカーやソフトウエア会社、コンテンツプロバイダー(CP)などを従えて、各社独自の製品・サービス開発を手がけてきた。「iモード」や「おサイフケータイ」、「写メール」、「着うた」などはその代表例だろう。
こうしたキャリアを頂点とする繁栄の構図を一変させたのは、スマートフォンの急速な普及だ。米アップルや米グーグルなどのグローバルプレーヤーが技術革新を担うようになり、市場が国内に限られるキャリアは、次第に主導権を失っていった。
ソフトバンクモバイルに続き、2011年10月からKDDI(au)もアップルの人気スマートフォン「iPhone」の販売に参入したことは、こうした「キャリアの凋落」の流れを決定付けた。両社は端末やサービス面で独自色を打ち出すことが難しくなったばかりでなく、販売台数やデータ通信の料金設定などについてもアップルに主導権を明け渡したとみられるためだ。
「電電ファミリー」と呼ばれた時代から強大なキャリアの傘の下でビジネスを展開してきた日本の通信機器メーカーは、キャリアと利害が衝突するような製品・サービスを開発する意欲が乏しいと言われている。そして「頼みの綱」のキャリアが主導権を失えば、OS(基本ソフト)や端末、アプリ配信プラットフォームなど携帯電話に関わるさまざまな産業が空洞化するのは避けられない。
国産の技術にこだわり、独自の進化を遂げた日本の携帯電話産業が「ガラパゴス」と揶揄されたのも今は昔。今後はアップルやグーグルなどの「外来種」に駆逐され、国内には「固有種」がほとんど残らないという事態さえ現実のものになりつつある。
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