1. 「守りのIT」からの段階的な移行
大半の企業は守りのITのためにHadoopによるデータ基盤を構築し、徐々に用途を広げてきたという。
「例えばリスク管理は、多くの金融機関にとって最初に取り組みやすい。これまで銀行は、多数のビジネスシステムがサイロとして存在している状況で、リスク分析のためにどうすれば情報を集約できるかに頭を悩ませてきた。また、データの品質問題の克服にも労力を費やしてきた。Hadoopではこの課題を解決できるので、導入メリットが分かりやすい。こうした分かりやすい用途で使い始め、コンシューマーバンキングやWebアドバイザリサービスなど、攻めの用途を後で追加する例は多い。また、ある程度の比率の企業が、Hadoopを使い始める動機として、ITコスト削減を挙げている。これまでのメインフレームやリレーショナルデータベース、エンタープライズデータウエアハウスによるデータ管理は、高価で、拡張が困難であり、迅速な処理という点でも課題が生じていた。Hadoopでは分散処理により、こうした課題を克服できる」
ITコスト削減のためにHadoopを導入したとしても、これをきっかけとして徐々にでも情報サイロ化の打破を進めないと、FinTechを支える情報基盤には到達できないとChemitiganti氏は指摘する。つまり、このアプローチにおいて「用途を広げる」ということの裏のテーマは、どの情報サイロを次に壊すかということにある。
2. 既存組織とは切り離されたFinTechチームの結成
第2のアプローチは、既存組織のしがらみと切り離されたFinTechチームの結成だ。
「企業として、このチームに干渉しないと決める。独立した予算を与え、従来のITルールも適用しない。既存のITルールは官僚主義的になりがちで、データアクセスについても制限ばかりを押し付けてしまう。そこでFinTechチームには自由なアクセス権限を保証し、データレイクを構築させる」
こうしたやり方で成功している企業もあるという。
3. ハイブリッドなCOEモデル
第3のアプローチは、第1、第2のモデルの中間ともいえるハイブリッドなものだ。
「この取り組みは、IT部門に任せていると、企業としてFinTech時代に求められる体制に移行できないという認識から始まる」(Chemitiganti氏)。その意味では、第2のアプローチと出発点は似ている。
「そこで組織全体から、最良の人材をかき集めたチームを結成する。そして、FinTechあるいはそれに関連する何らかのアプリケーションを作ってみるところから始める。一方で、事業部門と連携し、データレイクを推進する。事業部門のビジネス要件を理解し、これを反映させる形での情報統合および活動を進める」
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