数あるITシステムの中でも、最大の"岩盤"とでも呼ぶべき銀行勘定系システムがついに動く──。日本ユニシスはマイクロソフトと組み、クラウド上で運用する銀行勘定系システムの提供に乗り出す。すでに技術は完成済みという。
2020年をめどに、現在日本ユニシスのオープン系銀行システム、BankVisionを導入している地方銀行10行のいずれかで稼働を見込む。オープン系とは、プログラム仕様を顧客に公開し、ハードはどのメーカーのものでも使えるシステムのこと。勘定系システムのクラウド化は日本初だ。
これまで勘定系システムとクラウドは"対極"に位置付けられてきた。
前者は銀行の預金回りの情報をつかさどる、銀行の基幹ITシステム。メーンフレームと呼ばれる大型汎用コンピューターのメーカー(ITベンダー)が、各銀行専用のシステムや業務ソフトを作り込む"重い"ものだった。
これに対して後者は、顧客がITシステムを持たず、クラウド事業者側のシステムを利用し、その利用状況に応じてフィーを支払う"身軽"なもの。自前のITシステムを持てない中小企業向けで市場を伸ばしてきた。この正反対のはずの両者が急接近中なのだ。
業界全体に普及進むか
17年には三菱UFJフィナンシャル・グループがアマゾンウェブサービスの業務系システムの採用を決定。そしてついに、本丸の勘定系システムのクラウド移行を掲げた今回の案件が登場した。
背景には、現在の勘定系システムが銀行経営の重しになってしまっている事実がある。というのも、勘定系システムは自行専用システムを社外のITベンダーが作り、その後長年システムの保守運用も担当するため、銀行は中身や運用方法を容易に変更できないのだ。
一方「現在注目されるAIやフィンテックなどの新技術はクラウド経由で提供されているものが大多数だ。クラウド化は従来の勘定系システムのコスト削減だけではなく、新技術への投資の上でも役立つ」と日本ユニシスの竹内裕司執行役員は言う。
ブラックボックス化した勘定系システムをクラウドに移行することは、これまで「技術的に困難」(メガバンクIT担当役員)とみられていた。これが成功すれば銀行業界全体に広がる可能性も高い。
銀行業界のクラウドに対するアレルギーも薄れた。日本銀行が先月主催したメガバンクや地銀のIT担当幹部を集めたセミナーでは、「すでにクラウドの採用は担当者の間で"常識"として語られていた」(ITベンダー幹部)という。
勘定系システムの保守運用や更新はITベンダーの貴重な飯の種であった。顧客のクラウド移行で、ITベンダーの事業も根本からの見直しを迫られそうだ。
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