2011年12月13日火曜日

Qi(チー)

 ケーブルをつながなくても充電できるワイヤレス給電技術の標準規格。ワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)が標準化を行っている。名称の「Qi」は、中国語で「チー」と発音し、アジア哲学における見えない力の流れを意味する「気」にちなんでいる。送電電力は5W以下で、USB接続で充電が可能な機器を対象にしている。
Qiのロゴ
Qiに対応した機器にはこのロゴが付けられる。
 ワイヤレス給電自体は、特に端子による接続が好まれない防水性が求められる電動歯ブラシや電動シェーバー、医療機器などの機器ですでに採用されており、信頼性も高い技術だ。しかしこれまでワイヤレス給電の標準化は行われておらず、機器ごとに独自の給電システムを採用していた。そのため機器ごとに充電器が必要となり、例えば10個の機器があれば、10個の充電器が必要となる状態となっていた。
 また最近では携帯電話やスマートフォン、タブレット、音楽プレイヤー、デジタルカメラ、ゲーム機器、ICレコーダーといった携帯機器が増えており、これらの機器の充電には、いちいちケーブルを差す必要があることに加え、それぞれのACアダプタの形状や仕様が異なることから、コンセントには多くの機器のACアダプタが接続される状態となる。また出張などの際には、それぞれの機器のACアダプタを持たなければならないなど、ケーブルによる充電が煩雑になってきている現状がある。
 そこで注目を集めているのがワイヤレス給電技術「Qi」である。Qiでは、機器にケーブルを接続することなく、充電パッドのうえに対応機器を置くだけで充電できる。Qiの規格では、充電パッドと携帯機器間の制御プロトコルなどが決められており、対応機器間での互換性が保証されている。そのためQi対応機器であれば、どこのメーカーの充電パッドと携帯機器の組み合わせでも充電が行えるようになっている。互換性のない充電パッドが机の上に何個も並ぶということはなくなり、1つの充電パッドの上に機器を順番に置くだけで充電できる。
電磁誘導を利用した送電方法を採用
 Qiによる送電は、伝送側コイルに電流を流して発生する磁束により、隣接した受電側コイルに電力が発生する電磁誘導を利用したもの。そのため、ワイヤレス給電とはいうものの、伝送側コイルと受電側コイルの距離が近いほど送電効率が高くできることから、充電パッドに接した状態での送電が望ましい。
Qiの動作原理
充電パッド内の伝送側コイルに電流を流すことで発生した磁束を媒介として、受電側コイルに電力を送る。
 電磁誘導方式では、伝送側コイルと受電側コイルの位置ずれや、受電側機器の電池ケース(金属)などによる損失で効率が劣化する場合がある。そこでQiの実装では、例えば充電パッド内で伝送側コイルを受電側コイルの下に物理的に移動させることで位置ずれを補正したり(ムービングコイル方式)、バッド内に敷き詰めた多数の伝送コイルの中から最適なものを選んで利用したり(コイルアレイ方式)を採用している。また受電コイルの裏側に防磁シートを付けるなどの工夫をして損失を少なくしている。
Qiのムービングコイル方式
充電パッド内で伝送側コイルを受電側コイルの下に物理的に移動させることで位置ずれを補正する方式。充電パッドで、受電側コイルを認識すると、伝送側コイルを受電側コイルの下まで移動させることで、効率の高い送電を可能にしている。これ以外にも、多数のコイルをパッド内に組み込んでおき、一番近いものを選んで給電するコイルアレイ方式などもある。
 Qiの電力の伝送効率は、上述の工夫などにより約70%を実現している。ACアダプタの平均72%に比べて、効率が若干悪いものの大きく見劣りするものではない。WPCは使用部品の品質向上を図ることで、伝送効率もさらに高められるとしている。また待機電力消費量は、0.0001ワット(100μW )と非常に小さいのが特長だ。携帯電話用のACアダプタ(クレードル)の待機電力は平均0.12Wということなので、Qiの充電パッドの待機電力が小さいことが分かるだろう。クレードルや充電パッドをコンセントに差したままの場合、充電にかかる電力と待機電力の合計は、待機電力の低いQiの方が圧倒的に小さくなる。
 
 

40米ドルのAndroidスマホを新興国市場に、 中国メーカーがハードウェアプラットフォームを発表

 中国のファブレス半導体企業であるSpreadtrum Communicationsは、Androidスマートフォン向けに、低価格のハードウェアプラットフォームを2種類発表した。40nmプロセスで製造されたもので、40〜50米ドルという超低価格のスマートフォンに向ける。
 Spreadtrumが発表したのは、中国国内向けの3G(第3世代)携帯電話通信規格であるTD-SCDMA(Time Division - Code Division Multiple Access)に対応した「SC8805G」と、EDGE/Wi-Fiに対応した「SC6810」の2種類である。いずれもハードウェアのリファレンス設計の他、コンプライアンステスト済みのソフトウェアも同梱する。Spreadtrumは、「これらのプラットフォームを採用すれば、製品化までの時間を短縮できる」と述べている。SC8805G/SC6810はAndroid 2.2に対応し、動作周波数が600MHzの「ARM9」プロセッサを搭載している。また、2次元(2D)グラフィックス機能、5Mピクセルのカメラ、MPEG4に対応したデコーダ/エンコーダ、解像度がHVGA(Half-VGA)のタッチスクリーン液晶ディスプレイを備える。接続機能のオプションには、Wi-Fi、GPS、FM、テレビ放送、Bluetoothなどがある。
 Spreadtrumによると、既にChina Mobileが、SC8805G/SC6810で設計したスマートフォンの動作試験を完了しているという。まもなく、同プラットフォームを搭載した低価格スマートフォンが、十数社の携帯電話機メーカーから発売される見通しだ。そのうち数社は、2011年12月中にも販売を開始するとみられる。
 China Mobileは、「2012年に、TD-SCDMA対応のスマートフォンを3000万台以上売り上げることが目標だ」としているが、その大半を低価格スマートフォンが占めると予想される。
 Spreadtrumでプレジデント兼CEO(最高経営責任者)を務めるLeo Li氏は、「当社が持つ40nmプロセスのベースバンドプラットフォーム関連の専門知識と、高度に統合されたシステムを組み合わせ、できる限りコストを低減した。これによって、中国や新興国市場のユーザーは、スマートフォンを入手しやすくなるだろう」と述べている。
 SC6810は、3G 携帯電話機がまだ開発段階にあり、EDGE/Wi-Fiによる通信が大部分を占める市場向けに設計されている。Spreadtrumは、「モバイルネットワークとWi-Fiを容易に切り替えられるため、ユーザーはデータの利用に応じて通信方式を選択できる」と説明している。
 Li氏は、「スマートフォンにおける2G(第2世代)/3G通信事業は堅調が続いている。プラットフォームの価格を下げることで、中国や新興国市場におけるスマートフォンの利用をさらに拡大できると考えている」と述べる。
 Androidは、低価格のスマートフォンで中国市場への参入を狙うメーカーを大きく後押ししている。Androidが登場していなければ、最もローエンドのスマートフォンでも100米ドルを下回ることはなかっただろう。