イェール大学の神経科学者であるNenad Sestanが率いるチームが行なった実験が話題になっています。それは豚の頭部を身体から切り離し、外部の"維持装置"と接続することで脳に36時間、正常な活動を続けさせることに成功したというものです。
Netflix(ネットフリックス)のオリジナルドラマ『オルタード・カーボン』について、「意識をダウンロードするなんてできるの?」と専門家たちに聞いたところ「不可能/難しい」という回答が返ってきたのも記憶に新しいです。しかし、今回の実験が示唆しているのは「もしかしたら人間の脳を生きたまま保存できるようになるかもしれない」という事実です。そうするとSF好きとしては「脳の...移植...」なんて妄想もしてしまうわけです。
MIT Tech Reviewによると、この結果はNational Institutes of Healthで3月28日に開かれた、脳科学実験における倫理的な問題について議論するミーティングで発表されたとのこと。人間の脳が人体から切り離されて活動維持が可能になれば、人間の死という概念が大きく揺らぐことになります。うーん...どこから考えれば良いのか分からないですね。
実験に使われた豚の頭部は、と殺場で別の目的のためにと殺された個体のものを利用したとのこと。MIT Tech Reviewの取材に対し、Sestan氏はすでに科学誌に研究内容を送っており、現時点でコメントを公開する意図は無いと回答しています。正式な研究発表が科学誌に掲載されるのが待たれますが、大きな議論を呼ぶことは間違いないでしょう。
身体から取り除かれた脳はBrainEXと呼ばれる複雑な閉鎖系システムと繋げられ、酸素が十分に含まれた温かい人工の血液が脳の必要な部分へと送り込まれたそうです。脳細胞を調べたところ、通常の活動を維持していることが判明。その状態を36時間、続けることができたそうです。
果たしてこの状態で脳には「意識」があったのか?身体から取り除かれて生命活動を維持させられた豚の脳は「思考」していたのか?という疑問が浮かびますが、脳の膨張を防ぐための化学物質を投入していたため、おそらく思考はできなかっただろうというのが研究チームの考えのようです。
しかしMIT Tech Reviewに書かれている次の描写は、想像すると怖くなります。
SestanはNational Institutes of Healthに対して、脳を半永久的に生かすこと、そして意識を回復するための手段を試みることは不可能ではないと伝えています。今回の研究チームは、そういった試みは「誰も行なったことがない領域」であるため試さなかった、とのことです。
脳を半永久的に生かして、意識を回復させる...?脳だけの状態の意識とは?真っ暗闇?と頭が爆発してしまいそうになりますが現代医療テクノロジーはこんなレベルにまで到達したんですね。
既に医療分野の同僚たちからは医療実験に応用できるか、という質問がたくさん届いているようです。生きている人体で実験をするにはリスクが高すぎるガンやアルツハイマーの実験的な治療法を、生きた脳で試すことができるか、ということのようですが...生きた脳って...生きてる意識そのものじゃないのぉ...?! と果たして実験が倫理的なのかも想像できません。
公式な論文掲載、そして各種学会による議論がどう展開していくのか、注意して見守りたいと思います。
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