AI社会で生き残るために不可欠なのは、正しい読解に基づいた思考力。状況や文脈から理由や背景を読み解き、論理的に説明するのはAIには難しいからだ。企業も社員の読解力向上に動き出している。
「なぜ」を問える社員を育成し、AI社会を生き抜こうとする企業も。電子ブックの作成ソフトなどを開発するスターティアホールディングス(東京都新宿区)では、「自ら考えられる社員」の育成を目指した研修「ジュニアボード」を実施している。
3月某日、終業後の会議室から熱を帯びた発表が聞こえてきた。
「ぜひ、新規事業への融資をお願いいたします」
ジュニアボードに参加する社員が1年の研修を経て企画した新規事業の発表日。しかし、発表を終えるやいなや、別の参加者からは鋭い指摘が飛んできた。
「本当に収益が上がるの? 具体的にどんなニーズを想定しているのか」
参加者は、20代を中心とした起業を目指す社員だ。新規事業や社内ベンチャーを起こせる思考力のある社員を育てようと、04年にスタート。実際に過去の経験者からは子会社の社長になる人も出ている。
研修を実施する背景には、本郷秀之社長のある懸念があった。
「最近の新入社員は真面目だが、『正解は一つ』という教育を受けすぎている。でも、ビジネスの正解は一つじゃないんです。何が正しくて間違っているのか、自分で考えられるきっかけをつくりたい」(本郷社長)
研修は1年間で、毎月1冊のマーケティングに関する課題本を読み込み、その内容に沿って成功している企業を論じたり、成功するための仮説を立てたりしながら、起業家感覚を養っていく。研修を始めた当初は、「どんな仮説を立てたらいいんでしょうか」といったメールが本郷社長に届くことも。つい「こうすれば?」と言いたくなるが、ぐっと我慢。自ら調べ、仮説を立てる習慣ができると変わってくるという。本郷社長は言う。
「今後、多くの単純作業はAIに代替される。それでいいと思います。でも、新しいゲームのルールをつくるような発想はAIには当分できないはず。思考力は、20代から鍛えれば身につく能力だと思います」
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