が正則なとき, を最小にする はただ一つであり,それは正規方程式: を解くことで得られる。
前半は正規方程式を用いた最小二乗法の計算の具体例。後半は正規方程式の導出。
最小二乗法と正規方程式
- は縦ベクトル, は行列です。 はベクトル の長さを表します。
- と が与えられたとき, を最小にするような を求める問題は非常に重要です。→最小二乗法の行列表現(単回帰,多変数,多項式)
- 連立方程式 が解を持つときは嬉しいけども,解を持たない時にも諦めるのではなく, が に近くなるような を探したいというモチベーションです。
- 正規方程式は, の両辺に左から をかけただけなので覚えやすいです。
正規方程式を用いた計算例
最小二乗法(直線)の簡単な説明で扱った問題です。
例題
というデータの組に対して最小二乗法を適用してもっともらしい直線を引け。
解答
求める直線の傾きを ,切片を とおくと,以下のように行列表現できる:
目標: を最小にする を求める。
ただし,,
目標: を最小にする を求める。
ただし,,
よって,答えは正規方程式を解くことにより,
求める直線の方程式は
求める直線の方程式は
正規方程式の導出
考え方は非常に単純です。凸な二次関数なので微分して とするだけです。ただし,計算は慣れていないとやや大変です(行列の基本的な演算や微分公式を用いる)。
(正規方程式の導出)
まず,目的関数の二乗 を整理する:
ただし,最後の変形で補足1を用いた。
まず,目的関数の二乗 を整理する:
ただし,最後の変形で補足1を用いた。
これを で微分する(各要素で偏微分する,つまり勾配ベクトルを求める→補足2)と, となる。よって, が最小となる必要条件として, が得られる。
特に, が正則なときは, が唯一の解であり,この が最小値を与える。
補足1: はスカラーなので,転置を取っても同じ。つまり,
補足2:対称行列 に関する二次形式 の微分(勾配ベクトル)は ,
線形関数 の微分は
(単純計算で簡単に証明できる)
線形関数 の微分は
(単純計算で簡単に証明できる)
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