2018年9月25日火曜日

“Azure+AI+IoT”がクラウド成長に追い風 次なる勝負は“クラウド+エッジ”?

クラウド事業は前年比56%増の"大黒柱"に成長
 米Microsoftが発表した2018年度の通年決算(2017年7月~2018年6月)によると、売上高は前年比14%増の1104億ドル(約12兆4000億円)となった。同社としては、初めて年間1000億ドル(約11兆2300億円)を突破。

   中でもコマーシャルクラウド事業の売上高は前年比56%増の230億ドル(約2兆5800億円)と、今後の成長が期待されるクラウドビジネスが、同社の売り上げの柱として高い成長を続けていることが示された。
 日本マイクロソフト社長の平野拓也氏は、「AWS(Amazon Web Services)やSalesforce.comといったクラウドネイティブ企業より、Microsoftのクラウドビジネスの成長率が高い」と、この業績を自己評価してみせる。
 さらに、クラウドの内訳を見ると、2018年度第4四半期(2018年4月~6月)の決算報告では、「Microsoft Azure」が前年比89%増、「Microsoft Office 365」が前年比38%増、「Microsoft Dynamics 365」が前年比61%増となり、AWSの2倍近い成長率であることが示された。
 米Microsoft ワールドワイドコマーシャルビジネス担当のジャドソン・アルソフ エグゼクティブバイスプレジデント(EVP)は、「第4四半期の決算では、企業向けクラウドテクノロジーが顧客のイノベーションを推進し、全てのセグメントで2桁の収益の成長を達成できた」と総括。
 米Microsoftのサティア・ナデラCEOも、「インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジに対する初期投資は大きな成果を上げている。差別化されたイノベーションを提供し続けることで、拡大し、続ける成長市場に取り組む」と語っている。
"Azure+AI+IoT"で企業のイノベーションを後押し
 アルソフEVPは、この第4四半期のトピックスとして、Azureの採用で"クラウド、AI、IoT"を活用した顧客企業のイノベーションストーリーを紹介。
 米Microsoftは、米Walmartのクラウドブロバイダとして、小売業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する戦略的パートナーとなることを発表。5 年間にわたる契約期間を通して、Walmartは、同社のブランドファミリーを通じた標準化推進のため、クラウドとAI/IoT機能を提供するAzureと、「Microsoft 365」などのクラウドソリューションを全社で活用。も活用しつつ、顧客の利便性向上や、"従業員がベストを尽くして働ける環境"を実現するという。
 スープとスナックのメーカーである米Campbell Soup Companyは、Azureを採用し、グローバルなハイブリッドクラウドソリューションを活用して、ITのトランスフォーメーションを推進する計画だという。
 171年の歴史を持つビールメーカーの米Carlsbergも、Azureを導入し、AIとIoTを活用して、ビール醸造に科学的知見を適用し、製品開発の加速や品質向上を図るための「Beer Fingerprinting Project」を展開している。
 米Walt Disney World Resortは、AIなどのインテリジェント機能をIoTデバイスで利用できるようにする「Azure IoT Edge」を活用して、南米と北米を移動して雛を育てるムラサキツバメ用の"世界最小のスマートホーム"を開発。この"鳥用スマートホーム"を、米フロリダ州オーランドのDisney's Animal Kingdom内に巣箱を設置したところ、ムラサキツバメの繁殖についてこれまでにないレベルで知見を得ることができたという。

 また、「Azure Sphere」の顧客事例を見ると、AzureのIoT向けクラウド機能「Azure IoT」が勢いを増していることが分かるとし、米Sub-Zero and Wolfの取り組みについて紹介。
 Azure Sphereは、セキュアなMCU(組み込みプロセッサ)、OS、クラウドサービスを統合したIoTソリューション。Sub-Zero and Wolfは、食洗機の新ブランドである「Cove」を展開するにあたり、IoTを活用してパーソナライズされた顧客体験を提供するため、製品化のあらゆるレベルで安全性管理を行うソリューションとして、Azure Sphereを活用する計画だという。
 その他にも、ヘルスケアの米Eli Lillyが約4万人の従業員にMicrosoft 365を採用し、新薬開発にグローバルな医師、研究者、ヘルスケア組織のコラボレイティブなアプローチを導入したこと、メルボルンに拠点を置く土木建設鉄道企業のJohn HollandがLTE対応の「Surface Pro」1200台を導入し、「Microsoft 365 E5」「Surface Hub」「Surface Book 2」と組み合わせて活用して高水準な顧客サービスを提供する体制を構築したことなどを紹介した。
 Dynamics 365についても、石油ガス産業向け大手プロバイダーである NOV(National Oilwell Varco)が、セールスとフィールドサービス向けに採用。ビジネスプロセスの合理化とともに、フィールドサービスにモバイルファーストアプローチを採用し、生産性の最適化やダウンタイムの最小化を実現できたという。
 アルソフEVPは、「Microsoftは、あらゆる業種でデジタルビジネスを拡大している。これらの企業は、顧客体験の変革や、従業員の創造性とコラボレーションの支援、業務革新、新製品の市場投入に向けて、Microsoftのソリューションを選択している」とした。
Surface、Windows OEM、Xbox、LinkdInと、多角的な攻めも効用?
 日本でもクラウドビジネスの成長は著しい。
 日本マイクロソフトの個別の業績は明らかにされていないが、日本マイクロソフトの平野社長は、「日本では、グローバル以上の成長率を、全てのカテゴリーで達成している。2017年の時点で、日経225の8割の企業がMicrosoftのクラウドサービスを利用しており、2018年は92%にまで上昇している」という。
 そして、「日本におけるビジネスは、全ての事業本部で、8四半期連続で予算を達成している。成長の要因は、企業変革の推進支援、働き方改革のリーディングカンパニーとしての取り組み、"クラウド+インテリジェントテクノロジー"による成長の3点に集約される」と語った。
 日本では、特にWindowsやOfficeのライセンス販売からクラウドによるソリューション提案に移行した成果が出ていることを強調している。
 また、米Microsoftの決算では、クラウドの成長以外にも、3つのポイントが見逃せない。
 1つ目は、「Xbox」が高い成長率を見せており、初めて年間売上高で100億ドル(約1兆1200億円)を突破したことだ。売上高は前年比14%増の103億ドル(約1兆1600億円)となり、月間アクティブユーザー数は5700万人に達しているという。
 さらに分野別にみると、ゲーミング分野では、年間で前年比38%増を達成。Xbox関連のソフトウェアとサービスは35%増を達成している。広告収入を含む「Xbox Live」や、クラウドによるゲーミングサービスなどの成長が貢献しているという。
 日本では、Xboxのビジネスは、欧米ほど力を注いでいないが、Microsoftにとって、Xboxが重要なビジネスの柱となっていることが、今回の決算から分かる。
 2つ目は、「LinkdIn」の売上高が前年比34%増となり、初めて年間50億ドル(約56億円)を突破したことだ。これも、日本では広がりが遅れているが、欧米では着実にビジネスを拡大していることが示された。
 そして3つ目が、PCビジネスが成長しているという点だ。
 WindowsのOEMは、前年比7%増という成長を遂げており、さらに、ビジネス向けのWindows ProのOEMは、第4四半期には前年比14%増と2桁成長を遂げている。また、Surfaceも、年間で前年比21%増という成長に達し、第4四半期だけでは前年同期比25%増という伸びをみせた。
 これらは、企業向けPCの堅調ぶりに支えられているもので、ナデラCEOが語るインテリジェントエッジのビジネスが成長していることを示しているともいえる。
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 このように、米Microsoftの最新決算は、Microsoftがクラウドビジネスへと着実に軸足を移していること、SurfaceやWindows OEM、Xboxといったデバイスに関わるビジネスも成長していること、さらに、LinkdInによる新たなビジネスも着実に拡大していることを示す内容となった。
 クラウドへの軸足を移すために厳しい業績が続いた時期もあったが、その時期はすでに脱している。成長路線を歩むための大切づくりができたもいえる。
 Microsoft自らが、ビジネストランスフォーメーションに成功していることを証明した結果ともいえそうだ。

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