2018年9月20日木曜日

AIで世界の降水分布を高精度に予測 大雨災害多発エリアの被害軽減へ

 ウェザーニューズは、米NVIDIAと連携し、気象災害による被害軽減を目的に、全世界の雨の状況を高精度に可視化、予測するAIプロジェクトを開始する。

 同社によると、近年、気候変動などの影響から、世界各地で気象災害が多発しており、特に東南アジアなどの大雨災害の多い地域では、気象状況の把握や詳細な予測が重要なテーマとなっている。

 一方、世界の降水分布を可視化、予測するには、気象レーダーなどの気象観測インフラの整備が進んでいない地域が多く、海上など気象レーダーの観測範囲外では雨を捉えられないといった課題がある。また、既存の物理モデルをベースとした予測技術は限界に近づいているという課題もあるという。

 今回、ウェザーニューズが開始するプロジェクトでは、NVIDIAのAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX-1」とディープラーニング技術を活用。日本が保有する高精度な気象衛星画像と雨雲レーダー画像を教師データとして用いて、衛星画像をベースに雨雲レーダー画像を生成し、雨の状況を可視化、予測する。

 この技術を利用すれば気象観測インフラの整備は必要がないため、インフラ整備が進んでいないエリアや海上についても、雨の状況を高精度に把握できるようになる。

 同プロジェクトでは、第1段階として東南アジアを解析対象エリアとし、その後、他のエリアへも順次拡大していく計画。現地の気象局などへの情報提供やコラボレーションを通して、大雨災害の被害軽減に向けて貢献していく考えだ。

 同プロジェクトでは、NVIDIAは、GPUコンピューティングのためのハードウェア、ソフトウェアスタック、そのノウハウを提供。技術協力として、NVIDIAが展開するAIやディープラーニングを使ったスタートアップ事業の支援プログラム「NVIDIA Inception Program」に参画するdAignosis(デエイアイグノシス)がNVIDIA DGX-1を活用したディープラーニング技術を開発する。ウェザーニューズは、新たな気象モデルの開発と運営を行う。

 現在気象レーダーでカバーされている地域は地球上の約17%に限られており、地球全体をカバーするには、4000基の気象レーダーが必要だという。これに対し、DGX-1を50台用いれば、世界の1分ごとの気象データを「バーチャルレーダー」で生成できるようになり、コストは8000分の1に抑えられるという。

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