また、スマートフォンのラインアップが広がるなかで、2台目3台目の需要を強く意識した製品やサービスも目に付いた。BluetoothのハンドセットにもなるウィルコムのPHS端末「SOCIUS」は、他キャリアのスマートフォンとの連携を意図したこれまでにない製品だ。さらに、MVNOとして柔軟な料金設定の通信サービスを提供してきた日本通信は、ドコモ端末とSIMロックフリー端末向けの激安サービスを、イオンと組んで発売した。こうしたユニークな商品の登場は、今まで見られなかった現象だ。
"頑丈"という分かりやすさが光る「G'zOne IS11CA」
2011年に発売された数多くのスマートフォンの中で目を引いたのが、NECカシオ製の「G'zOne IS11CA」。タフネスケータイとして人気を博した「G'zOne」シリーズのスマートフォンにふさわしく、防水・防塵、そして耐衝撃性を持つ異色のAndroid端末といえる。フィーチャーフォン世代からボディ形状や操作性は大きく変わったが、アウトドア志向のUIやオリジナルアプリを搭載することで、"G'zOne"ブランドのコンセプトが貫いている。
編集部でも購入して使用しているが、発表当初にずいぶん大きく見えたボディはその後登場した4.5インチクラスのタッチパネル搭載モデルと比べると、まだまだ扱いやすい。気兼ねなくガシガシ使っても壊れない、持ち歩くのに気を使わなくて良いというのは、今ままでのスマートフォンになかった点だ。
約3.6インチというディスプレイサイズに不満はないものの、ワイドVGA(800×480ピクセル)という解像度はちょっと手狭な印象。また1GHzのシングルコアプロセッサの処理能力も、今となってはやや頼りない。ボディがタフに使える分、将来のアップデートに耐えうる高いスペックを用意して欲しかったのが感想だ。機能面ではおサイフケータイと赤外線通信、auキャリアメールなどのガラパゴス機能にも対応し、アップデートによって緊急地震速報も使えるようになった。ワンセグは搭載していないが、FMラジオは防災という面であっても良かったかもしれない。
今回IS11CAに注目したのは、端末そのものがユニークということもあるが、開発背景にある種のヒントを感じたからだ。G'zOneブランドは日本だけでなく北米でも高い支持を受けており、日本未投入の海外モデルも存在する。G'zOneのスマートフォン化も米Verizon向けの「G'zOne COMMANDO」が最初であり、COMMANDOをベースにIS11CAが開発された。日本生まれのブランドが米国でプルーフされ、日本で再認識されるのは、G'zOneシリーズのおおもとでもあるGショックと同じ道筋をたどっている。G'zOneが持つ"頑丈"という分かりやすい魅力は、国や地域を超えて通用する、モノとしての普遍的な魅力ではないだろうか。
2007年のiPhone 3G発売からAndroidの認知が始まった2010年末まで、魅力あるスマートフォンと言えば海外メーカー製のものが多かった。Appleは言うに及ばず、HTCやSamsung電子、LGエレクトロニクスなど、フィーチャーフォン全盛の頃ならあまりなじみのない企業の勢いが増す一方、国内端末メーカーの元気の無さが目立った。高性能で使い安く、ブランド力があるグローバル端末に対して、国産スマホはおサイフケータイやワンセグなどのガラパゴス機能を盛り込むことで、競争力をなんとか保っていた印象だ。
2011年は、「MEDIAS」や「AQUOS PHONE」、REGZA Phoneを内包した「ARROWS」など、国内メーカーのAndroidブランドが立ち上がり、さまざまな端末が登場した。デュアルコアやWiMAX・LTE対応など、ハイスペック志向の技術トレンドもキャッチアップされ、iPhoneや海外Androidが上位を占めていた販売ランキングにも、国産スマホが顔を出すようになった。また、シャープは中国を中心にグローバル展開を進め、NECカシオやパナソニックはAndroid端末での海外市場再参入を発表している。国産スマホが"ガラパゴスじゃない"海外でどれだけ成功するかは未知数だが、G'zOneのような普遍的な魅力が不可欠なのは間違いないだろう。
多機能スマートフォンのスキを突いた「SOCIUS WX01S」
"多機能携帯電話"とも訳されるスマートフォンは、デジタルカメラやオーディオプレーヤー、ゲーム機、ポータブルナビとしても十分な性能を持つまでになった。しかし、肝心の電話機能が使いにいという面もある。ダイヤル操作に限ればタッチパネルは直感性に欠け、発話/終話の処理はどうしてもワンテンポ遅れがち。音声通話がメインであればフィーチャーフォンのほうが使いやすい。
「SOCIUS WX01S」
ウィルコムが2011年12月に発売した「SOCIUS WX01S」は、Bluetooth接続によってスマートフォンのハンドセットになるというPHS端末だ。ウィルコムは他社に先駆けてキャリア内通話の定額サービスを始め、現在は月額980円で10分以内の国内通話を月500回までかけられる「だれとでも定額」で加入者数を増やしている。SOCIUSを使えばさらに、他キャリアのスマートフォンやBluetooth携帯電話を2回線まで同時に待受できるため、これ1台で3回線の音声通話をつかさどれる。
他社回線の通話を手助けする端末とはなかなか画期的だが、Bluetooth接続するスマホを買い換えても通話用にSOCIUSを持ち続けることができるわけで、ウィルコムにとってもメリットが大きい。同社はソフトバンクをスポンサーに再建途中でもあり、iPhoneとの相乗効果が期待できる機種の発売には、何かそうした事情も影響しているかもしれない。
それはさておき、こうした"分業"端末の存在はさまざまなデバイスの連携を生み、ユーザーの使い勝手を向上してくれる。ケータイやスマートフォンの2台持ち3台持ちが当たり前になった今、別デバイスとの共存も視野に入れた製品のさらなる登場に期待したい。
通信サービスもプライベートブランドの時代? 日本通信とイオンの「イオンSIM」
「イオン専用b-mobile SIM」(イオンSIM)のパッケージ
日本通信とイオンリテールは、2011年6月に月額980円〜という激安の通信サービスを開始した。ドコモのFOMA回線を使ったMVNOであり、提供されるのはドコモのSIMカードだ。980円なら通信速度が100Kbpsに制限されるが、Twitterなどテキスト中心のSNSやメールの利用なら十分に使える。
実際に数カ月使ってみたが、SIMロックフリーの端末や機種変更してあまったドコモのスマートフォンを活用するにはぴったりのサービスだ。当初はパケット通信のみのサービスだったためサブ回線向けという印象だったが、2011年末には音声通話向けのプランも登場。メイン回線としての選択肢も用意された。
日本通信のMVNOサービスは知る人ぞ知るという存在だったため、最大手の流通企業と組んだインパクトは"980円"という価格以上に大きい。イオンリテールは各キャリアの携帯電話を販売する代理店事業を全国で手がけており、市場のスマートフォン化で業界の水平分業が進めば、単にMVNO回線を売る以上の展開も予想できる。
また日本通信は、自社で販売するSIM製品も充実させた。パケット通信を4カ月間で1Gバイトまで使える「b-mobile Fair」を皮切りに、音声通話をセットした「talking Fair」、さらに1カ月ごとに1Gバイトまでの通信が可能な「1GB定額」と、立て続けにプリペイドサービスを発売した。
スマートフォンはPCサイトの閲覧やバックグラウンドの同期などで通信量が多くなり、パケット定額プランが必須だ。だが定額プランは、極端に大量の通信を行う数パーセントのユーザーのコストを、あまり通信を行わないユーザーの定額料で賄っている面もある。それだけに料金に関する不満は高く、ユーザーの利用実態に合わせた料金体系への期待が高い。おそらく日本通信は、2012年もかゆい所に手が届くプランを打ち出して、スマートフォンのランニングコストを下げてくれるのだろう。
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