2018年8月29日水曜日

音声コマースは主流になる? Alexaなど音声デバイスの未来に2つの意見

 音声コマースはブームになるだろうか。The Informationの新しいレポートによると、現時点でまだブームは起きていないものの、そのために音声コンピューティングの成長が鈍化することはなさそうだと専門家は指摘している。
 レポートは、Amazonの社内統計について説明を受けた2人の話として、Alexa対応デバイス(主にAmazonの「Echo」シリーズスピーカー)所有者のうち、2018年に入ってこれまでに音声で買い物をした人は約2%にとどまると伝えている。実際にAlexaを使って音声で買い物をした人も、約90%は再び買い物をしようとはしなかったという。
「音声のみで買い物」は非現実的
 Amazonの広報担当者はこの数字に反論しているが、過去のレポートでも、スマートスピーカーを音声コマースに使っている消費者に関しては、あまり良い数字は出ていない。The Informationの数字はまた、技術コンサルティング会社Activateが2017年秋に発表したレポートとも一致する。Activateによると、スマートスピーカーの所有者の大半は、例えば音楽の再生や天気予報のチェック、アラームの設定といった比較的単純な機能のために手持ちのデバイスを使っていることが分かった。実際のところ、買い物は、ユーザーが自分のデバイスの使い道としてリストアップした項目の一覧に入っていなかった。
 だが「驚きはしない」とZK Researchの創業者で主席アナリストのゼウス・ケラバラ氏は言う。「音声には多大な潜在的可能性があると思う。ただ、今のところは多くの信頼問題が存在する。これはオンラインショッピングに起きたことと似ていなくもない。何度か試してみて、ある程度の確信が持てるようになるまでは慎重な人が多かった」
 音声のみを使って買い物をするのはそもそも単純に現実的ではないと指摘するのは、Forresterで主席アナリストを務めるジュリー・アスク氏だ。
 「単純な商品の補充を越えて、(音声だけで)買い物をするのは単純に難し過ぎる。もっと簡単に買い物できる方法がある。閲覧は難しく、画像を見ることもできず、現実的に商品説明を聞き取ることもできない。そんな状況で誰が買い物をしたいと思うだろうか」(アスク氏)
 さらにアスク氏は「Amazonの市場シェアはトップだが、小売業者は同社と組むことに二の足を踏んでいる。それが、Alexa対応デバイスを通じた買い物の数字が振るわない一因になっているかもしれない」と言い添えた。
企業における音声技術
 以上を前提としると、企業は音声コンピューティングの追求を思いとどまった方がいいのだろうか。そんなことはないと話すのは、Gartner調査ディレクターのワーナー・ゲルツ氏だ。現時点で「ママとパパ」がAlexa対応デバイスで買い物をしていないという現状は、音声人工知能(AI)分野全体の価値について、あるいは今後の消費者のショッピング行動について多くを物語っているわけではなく、音声コマースは確実に進展すると同氏は予想する。Alexa対応デバイスが現時点であまり買い物に使われていないからといって、最高情報責任者(CIO)が音声コンピューティングへの投資を思いとどまることはないというのだ。
 ゲルツ氏は「電子商取引機能と利用は自然と成長する。サービス業界や飲食店、チェーン店は既に、音声AI技術を使ったさまざまな取引方法を取り入れた概念実証や用途を確立しつつある」と指摘した。
 ゲルツ氏が挙げたその一例として、AmazonはMarriott Internationalと組み、「ホスピタリティー向けAlexa」戦略の一環として、スマートスピーカーのAmazon Echoをホテルに導入し始めた。ホテルの利用客は、Alexa対応デバイスを使ってルームサービスの注文や、追加のタオル手配、エンターテインメントの注文などができる。
 「企業は確実にブランドエクスペリエンスの刷新を試みており、スマートスピーカーや多面的な音声交流を通じてそれを行っている」とゲルツ氏は話す。
 ゲルツ氏の言う多面的な音声交流とは、Amazonの「Echo Show」のような画面付きの音声アシスタントを指す。同氏によると、そうしたデバイスは音声コマースのような機能に適しており、Forresterのアスク氏が挙げたような音声のみのショッピングにまつわる問題の一部を解消できる。
 ガートナーのアナリストであるランジット・アトワル氏も、音声と動画、チャット、画面を使った多面的な音声デバイスを使えば、いずれもっと頻繁に複雑な買い物ができるようになり、より統合的なカスタマーエクスペリエンスが実現できるとの見方で一致する。ただし、アトワル氏も音声コマースは「まだまだこれから」だと考えている。
 ケラバラ氏が述べるように、音声がインタフェースの主流になる日はいつか来る。われわれはただ、そこへ到達するために少しずつ進まなければならない。
 アスク氏はCIOが認識すべきこととして、「(音声技術を)使用し、実験する必要がある。ただし情報の取得やコントロールなどが簡単な、理にかなった筋書きで行わなければならない。簡単にできる以上のことに手を伸ばしてはならない」と話している。

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