2018年9月19日水曜日

いまさら聞けない「機械学習」とは何か? 「AI」との関係は?

 ITを活用した経済活動「デジタルエコノミー」の拡大に伴い、企業は全面的または部分的に、"ソフトウェア企業"としての自社の在り方を見直している。ここ数十年で、ITはビジネスの一部になった。ただしその役割は変化している。データと技術は、ビジネス戦略の中核要素になる。

 ITでビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は、単にデータを用いてビジネスを運用することではない。競走上の強みを得るために、データとITサービスを利用することだ。例えば業務効率を上げ、顧客を適切に理解し、新たな収益の流れにつながるデジタル製品やサービスを生み出すために、データを活用したりする。

 DXに不可欠なのは、新たに登場した、変革につながるワークロード(システム)を導入することだ。こうしたワークロードには、ビジネスインテリジェンス(BI)をはじめとする分析用システムに加え、モノのインターネット(IoT)戦略の一環として企業のネットワークエッジ(末端)でデータを収集するシステムなどがある。

 こうしたワークロードのカテゴリーは変化し、成長を続けるだろう。そうした中で機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術が勢いを増している。そしてAI技術が、IT投資の次の波を引き起こす可能性がある。

包括的な「AI」、方法論としての「機械学習」
 用語としての「AI」と「機械学習」の関係について整理しておこう。AIは、包括的かつ汎用(はんよう)的な用語で、ソフトウェアで人間の知能そのもの、またはその一部を再現する技術全般を指す。深層学習(ディープラーニング)をはじめとする機械学習は、こうしたソフトウェアによる知能を生み出すために使用する、具体的な方法論だ。

 大まかに言えば機械学習は、データを基に何らかの結果を予測するアルゴリズムの作成を指す。顧客の購入履歴を調べて、その顧客が購入しそうな商品を薦めるアルゴリズムがその例だ。機械学習では、アルゴリズムそのものを記述するのではなく、データによる学習を通じてアルゴリズムのトレーニングをする。こうしたトレーニングには、通常は膨大な量のデータ処理と、データを格納したストレージへの高速なアクセスが必要になる。

 企業や業界によってその違いはさまざまだが、機械学習では一般的に、使用するデータ量と作成するアルゴリズムの質との間に、直接的な相関関係がある。アルゴリズムを用いて収益を生み出す速度を上げ、収益の新たな流れを生み出そうとするならば、少しでも多くのデータを収集する必要がある。そうすれば作成するアルゴリズムの質も向上できる。その結果、早期導入によって競争上の大きな強みがもたらされる。

 調査会社Enterprise Strategy Groupによる最近の調査では、機械学習をはじめとするAI技術に積極的な戦略を展開している企業の38%が、ビジネス上の重要な成果が短期間で目に見える形として表れるようになったと答えている。新技術に投資する企業にとってAI技術は、短期間で見返りを期待できる確率が高いといえる。

 AI技術の優先度の高さは、ここ数年の雇用にも表れている。AI技術の専門知識に対する関心が非常に高く、求人情報検索サイトのGlassdoorは、データサイエンティストを3年連続で米国最高の仕事に認定している。

AI技術の次のステップ
 機械学習などのAI技術に投資する企業にとっての次のステップは、担当者のために適切なツールとインフラを用意することだ。ただし、ここには問題がある。

 Enterprise Strategy Groupは、AI技術の戦略に詳しい意思決定者に、戦略の妨げになる要素を調査した。その答えはインフラだった。例えばAI技術のプロジェクトを積極的に展開している企業の44%が、上位3つの課題の1つとして、インフラのコストやインフラ機能の欠如を挙げた。インフラに十分な能力が備わっていないことが、大きな懸念になっているのだ。

 AI技術に関する情報をまとめると、次のようになる。

AI技術の活用戦略を進めている企業の38%は、ビジネスの重要な成果が短期間で目に見える形として表れることを期待している
AI技術の活用戦略を進めている企業は、人材確保に大きな投資をしている
AI技術のワークロード固有の性質が、特定の業界に競走上の大きな強みを提供する。適切なアルゴリズムは高いビジネス成果を生み出す。データ量が増えるほど、優れたアルゴリズムが生み出される
AI技術の活用戦略を進めている企業の半分近く(44%)で、インフラが妨げになっている

 4つ目のインフラの複雑性には、ITベンダーコミュニティーが迅速に対処することが見込まれる。計算速度を上げ、全ての処理を支える高性能で並列度の高いストレージを管理するために、GPU(画像処理プロセッサ)やFPGA(プログラム可能な集積回路)を使用すれば、こうした複雑さの一部は解消できる。

 ITベンダーはインフラに関する懸念の解消に向けて、既に動き始めている。ほぼ全ての大手ストレージベンダーが、AI技術のワークロード用にレファレンスアーキテクチャを用意している。例えばNVIDIAと提携したPure Storageは最近、AI技術向けのインフラ製品を発表した。

 AI技術のワークロードを使用してDXを追求するデータ駆動型企業は、すぐにインフラの課題に気付いて、その課題に対処し始めるようになる。AI技術に取り組み始めたばかりの企業は、インフラが戦略に及ぼす影響を理解することが重要だ。

 インフラの構成は、どれくらい難しいのだろうか。パフォーマンスが成果物の品質にどの程度影響するのだろうか——。たとえ小規模な環境でも、こうした検討課題に対処するために、インフラの管理と構成の担当者を考えておくことが重要になる。

 AI活用戦略を始めたら、従来のIT部門以外がハードウェアを管理することは珍しくなくなる。だが高給のデータサイエンティストにハードウェアの管理まで任せると、相当な時間を要し、かえってコストが高くつくこともある。AI技術のワークロードと、それによって生み出されるDX戦略は非常に重要で、企業は人件費にかなり投資することになる。成功の妨げになるインフラを、そのままにしておくわけにはいかない。

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