2017年12月8日金曜日

AIは、自社のビジネスを左右する重要業務にこそ適用すべきだ

AIを最大限に活用するには、優先度の高い重要なビジネス課題に適用すべきだ

 ある大学の幹部は、入学者を5%増やそうと考え、人工知能(AI)を利用した。AIは入学者数に大きく貢献する可能性があったからだ。

 また、ある大手通信会社が世界的な合併を行ったとき、IT部門はAIを駆使して、新会社におけるスキル、言語、文化のギャップを埋め、それまでのライバルを友人に変えた。

 さらに、欧州のあるトラック運送会社は、ドライバーとリフトオペレーターの異言語間コミュニケーションを支援するため、AIベースの翻訳インタフェースを導入し、輸送効率を高めて貨物の取扱量を増やした。

 これらの企業や組織は業種も地域も異なるが、いずれもAIの活用により、優先度の高い重要なビジネス課題に取り組んだ。「AIは、あなたとビジネスにとって最も重要なことに適用すべきだ」。Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストのホイット・アンドリューズ氏は、201710月に米国オーランドで開催されたGartner Symposium/ITxpo 2017で、こうアドバイスした。

 「AIを社内でどのように活用すべきか考えているなら、自社にとって不可欠な部分への活用を追求しなければならない」(アンドリューズ氏)

AIのメリットは自動化だけではない

 AIの一般的な定義では自動化に力点が置かれており、その結果として、ITリーダーやビジネスリーダーにとっての活用機会は見過ごされていることが多い。AIは、主に学習によって人間の能力をエミュレートする技術であり、「人間だけで行うよりも迅速かつ大量に分類や予測を行えるもの」と表現するのが最も適切だ。

 企業は自社にとって不可欠な部分で成果を得るために、スピードや効率の向上、データ処理や分析の高度化、顧客体験の充実にAIを活用している。導入が始まって間もない現段階では、まずこれらのカテゴリーにAIの活用機会を求め、以下のように、優先度の高い重要なビジネス領域に役立つユースケースに重点的に取り組んでいる。

販売とマーケティング:販売プロセスをカスタマイズする、見込み客や顧客とのコミュニケーションをパーソナライズする、顧客に適した販売スタッフをマッチングする、パーソナライズされた価格を提案する。

サービス:顧客へのアシスタンスや問題への一次対応を仮想的に提供する、メンテナンスや近い将来の修理のニーズを予測する、サービススタッフと顧客の取り次ぎを行う、顧客対応プロセスにおけるギャップを見つける。

サプライチェーン:データエラーを発見して修正する、サプライチェーンにおけるリスクを発見する、現場のIoTデバイスから洞察を引き出す、物流を計画する。

オフィス:特定のノウハウを持つ人材を見つけて連絡する、コンプライアンス違反を発見し是正する、行動項目の提示を通じて会議ややりとりをサポートする、デジタル技術への習熟を支援する。

 ビジネスの成長はCEOの中心的な優先課題であり、顧客体験は成長の促進に重要な役割を果たす。このことからすると、現在、多くの企業がAIを利用して、まず顧客関連の取り組みを進めているのは当然だ。さまざまな業種での例を以下に示す。

銀行および金融サービス:チャットbotが顧客の口座利用の手助けをする。

ヘルスケア:仮想看護アシスタントが退院後の患者をフォローする。

小売り:機械学習と自然言語処理が顧客データから学習し、顧客行動に関する洞察を生み出す。

教育:AIによる「教師ロボット(チューターbot)」がパーソナライズされた学習を支援する。

 AIは、企業/消費者間(B2C)モデルでのみ利用されているわけではない。例えば、物流センターを運営している、あるB2B企業は、操業音をチェックして効率上の問題を未然に防止するシステムを倉庫に導入する計画を進めている。

重要業務のAI化における留意点

 優先度の高い重要なビジネス課題にAIを適用するために、以下の点に留意する。

  • 過去に人員を十分に確保できなかったために諦めた領域で、AIを活用するアイデアや可能性を探る
  • 自社に固有の課題や領域にAIを適用することを考える。これらの課題や領域は、一般性が低いほど望ましい
  • 従業員に対する調査やヒアリングにより、業務の中でAIにより対応できる側面を洗い出し、取り組みを検討する

 「ボーナスアップやビジネス価値の拡大に向けて、これまで技術を使って何を行ってきたかを考えてみるとよい。そこにAIを適用するのが正解だ」(アンドリューズ氏)

 

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