IDC Japanは2017年12月7日、2016年の国内における働き方改革関連のICT市場についての調査結果を発表した。
IDCでは、「ハードウェア」「ソフトウェア」「ITサービス/ビジネスサービス」「通信サービス」の4分野に分類されるICTの市場規模を予測。これらの中から、働き方改革の主目的である「長時間労働の短縮」「労働生産性の向上」「柔軟な働き方」といった取り組みをサポートするICT市場の規模を積み上げ、「働き方改革ICT市場」として算出した。
その結果、2016年の市場規模(支出額ベース)は、1兆8210億円に達したことが分かった。この市場の5割弱を占めていたのは、働き方改革に不可欠なモビリティインフラストラクチャであるノートブックPC、タブレット、スマートフォンといったハードウェアだった。
官民を挙げた働き方改革の大きなきっかけとなった長時間労働の削減に関する取り組みは、2016〜2017年に積極的に実施されたものの、多くはICTが関わらないもので、「上長が部下の残業を細かくチェックして安易に残業をさせない」「夜の一定時間になるとオフィスを消灯する」「ノー残業デーを徹底する」といった取り組みだったという。
一方、ICTを活用して生産性を向上させる取り組みとしては、稟議(りんぎ)や休暇、残業の申請承認システム、経費精算システム、Web会議、ファイルやデータのシェアリングなど、単体のアプリケーションの導入にとどまることが多い。結果として、市場規模は相対的に小さなものとなったとIDCでは見ている。
「国内働き方改革ICT市場予測、2016年〜2021年」(IDC Japan、2017年12月)
2018年以降の市場予測としては、労働生産性の向上や柔軟な働き方を実現する取り組みが洗練され、テレワークの環境整備に向けた業務ツールのクラウド化や、モバイル機器利用の拡張に伴うセキュリティ対策の強化、モビリティ機器管理ツールの導入などが進むと予測している。
また生産性の向上を本格的に追求する企業は、業務の棚卸しに基づいた業務効率化ツールの導入といった取り組みをさらに進め、既存システムとのインテグレーション需要も拡大すると予測。そういったツールの中にはAIを搭載したものも既に出現しており、業務効率化への需要を一層刺激すると考えられるという。
このような状況を踏まえ、働き方改革におけるソフトウェア市場とITサービス/ビジネスサービス市場は、働き方改革に限定しない全体市場の成長速度に比べてはるかに高い成長を見せ、働き方改革ICT市場全体では、2016〜2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は7.9%、2021年の市場規模は2兆6622億円に達すると予測している。
IDCでは、2021年に向けて、労働生産性の向上と柔軟な働き方の実現を目的としてソフトウェア導入やシステムインテグレーションに対する需要が拡大し、それが今後の働き方改革ICT市場の成長をリードするとみている。
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