米Appleは6月4日(現地時間)、年次開発者会議WWDCをサンノゼのマッケナリーコンベンションセンターで開催した。基調講演で発表されたことを時系列にまとめる。
基調講演では例年、次期OSの新機能を中心に紹介するが、ハードウェアの発表もあった。今年はApple Watchのレインボーカラーバンド以外はハードウェアの発表はなかった。
オープニングは、世界各国からWWDCのために集まってくる開発者を描いた動画で、その後登壇したティム・クックCEOは、WWDCには世界77カ国から開発者が集まり、基調講演のホールには6000人が集ったと語った。
iOSのApp Storeは7月で10周年を迎える。クック氏は、毎週5億人の訪問者がおり、開発者の累計収益は1000億ドルに達したと発表した。
次にSwiftとSwift Playgroundsについて簡単に触れた後、「今日はすべてソフトウェアについてだ」と宣言。4つのOS(iOS、watchOS、tvOS、macOS)について順番に紹介していくとした。
●iOS 12──落ちこぼれるモデルなし
次期iOS、「iOS 12」の紹介は、ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏。まずは恒例の現行iOSの受け入れられ方について紹介。ユーザーのアップデートは早く、リリース後7週間で約半数のユーザーがアップデートを完了した。インストールベースはAndroidの最新版が6%のところ、iOSは81%だと発表した。
現行のiOS 11対応端末はすべて、iOS 12にアップデートできる。アップデートすると、例えば「iPhone 6s」の場合、アプリの起動は40%、キーボード表示は50%、カメラの起動は70%速くなるという。
AR(拡張現実)の新フォーマット「USDZ」
「USDZ」は、米Pixar Animation Studiosと共同開発した、共有しやすいAR向けの新ファイルフォーマット。Adobe、Autodesk、TurboSquid、Sketchfabなどがサポートする。
AdobeによるUSDZのデモの後、フェデリギ氏がAppleのARアプリ「Measure」を紹介した。画面に映る物体のサイズを測れるアプリで、デモではスーツケースの横幅や体積(縦横高さを画面上でポイントすると計算される)、写真のサイズを測った。写真の場合は枠を自動認識し、計算する。
オンラインショップにあるFenderのギターを実物大にして部屋に置いてみるデモも行った。
空間を人と共有できる「ARKit 2」
AR対応アプリのフレームワーク、「ARKit」が「ARKit 2」になる。顔追跡や3Dオブジェクトの検出が向上し、"共有体験"が可能になる。
共有体験とは、複数の人が自分のiPadやiPhoneで同じ空間を自分の視点から見られる機能。LEGO Groupのイノベーションディレクターのデモでは、テーブルに置いた建物をLEGOのARアプリで表示して操作すると建物の周囲に道や他の建物が出現し、ミニフィグが動き出した。2人でそのLEGOの世界を自由に操作でき、火事を協力して消すと新しいARアイテムを獲得できるなどのゲーム要素もあるようだ。
写真アプリはAI機能が向上
検索サジェスト機能が追加され、場所やイベントでの検索も可能になる。新しいタブ「For You」では友達と共有する写真をお勧めする。共有する写真はフル解像度だ。
Siriの新機能「Shortcut(ショートカット)」
Siriの「Shortcut」は、Google Homeの「ショートカット」に似た機能。あらかじめ決めておいたフレーズをSiriに言うと、目的の操作をさせることができる。フェデリギ氏はデモで「鍵をなくした」とSiriに言うことで位置追跡アプリ「Tile」を起動してみせた。
ユーザーはShortcutアプリのEditorを使ってオリジナルのショートカットを作れる。複数の操作をまとめておけるので、例えば「家に帰るよ」と言うと自宅の空調が起動し、家族に帰宅するとメッセージし、交通状況を知らせ、電車の中で聴くラジオの再生を開始する、などだ。
ニュース、株価、ボイスメモ、Apple Books
「ニュース」アプリにブラウズタブなどが加わってUIが少し変り、「株価」アプリにニュースアプリの情報が反映されるようになる。また、2つのアプリがiPadに対応する。
ボイスメモもiPadに対応する。
現在「iBooks」という名称の電子書籍アプリが「Apple Books」に変わる。
CarPlayがGoogleマップなどサードパーティアプリをサポート
車載ディスプレイでiPhoneの機能を使う「CarPlay」で、「Googleマップ」を使えるようになる。「Waze」と中国で人気の地図アプリ「高徳地図」もサポートする。
iPhone中毒防止ツール3つ
「Do Not Disturb」がアップデートされ、ベッドタイムオプションが追加された。就寝時間中は画面にプッシュ通知が表示されない。
プッシュ通知の新機能としては、通知のアプリやスレッド別のグループ化機能やアプリのプッシュ通知を設定する「Instant Tuning」機能などが追加になる。
Googleが5月のGoogle I/Oで発表した「Android P」の利用時間を意識するためのツールに似た「Screen Time」も登場する。毎週iOS端末をどのくらい使ったか、どのアプリをどのくらい使ったかなどを一覧でき、自分でアプリの利用制限時間を設定することも可能。設定した時間が近づくと、プッシュ通知が表示されて注意喚起する。
Screen Timeはファミリー共有に対応するので、保護者は子どもたちの端末の利用時間をScreen Timeで制限できる。
「メッセージ」の目玉は自分の顔を作れる「Memoji」
「iPhone X」の「メッセージ」アプリで使える「Animoji」に新キャラクター(虎、コアラ、恐竜、おばけ)が加わり、舌の動きに対応する。さらに、髪型や肌の色を選びながら自分の動くアバターキャラクターを作れる「Memoji」機能が加わる。
この他、SnapchatやInstagramのステッカー(スタンプ)のような機能が使えるようになる。自分のMemojiをステッカーとして使うこともできる。
FaceTimeに32人までが参加できるグループチャット機能
これまで1対1でしか使えなかった動画チャットアプリ「FaceTime」がグループチャットに対応した。32人まで参加できる。顔をMemojiにして参加することも可能だ。
(iOS 12についての別記事)
●watchOS 5
Apple WatchのOSは「watchOS 5」になる。紹介するのは今年もケビン・リンチ氏。フィットネス機能でのコンペティション(誰かと成果を競う機能)やヨガとハイキングの追加などを説明した。
Wi-Fi利用の声でのショートメッセージ機能(トランシーバーのような機能)のデモでは拍手が起こった。
米国の一部の大学で、学生証代わりに使える機能もスタートする。デューク大学、オクラホマ大学などが採用する。
そして、今回の基調講演で唯一のハードウエアといえる、レインボーカラーの「プライドエディション」バンドが発表された。
(watchOSの別記事)
●「tvOS 12」はDolby Atmosサポート
「Apple TV 4K」が米Dolbyのサラウンドフォーマット「Dolby Atmos」に対応する。購入済みのコンテンツも、無料でDolby Atmos版にアップグレードできる。
また、スクリーンセーバーの映像の概要が表示できるようになる。さらに、国際宇宙ステーション(ISS)提供の地球の映像も追加になる。他の風景と同様に、時間に合わせて明るさが変わる。
(tvOSについての別記事)
●maOSは「Mojave」(モハベ)に
うわさ通りの「ダークモード」が登場。写真アプリなどで画像が映えて見えるが、最も歓声が大きかったのはXcodeのダークモードだった。
この他、散らかってしまいがちなデスクトップのファイルアイコンをグループ別にまとめる「Stacks」、ファインダのギャラリービューやクイックアクションなどの新機能が紹介された。スクリーンショット機能も強化され、動画のスクリーンショットも(動画として)保存できる。「Continuity」機能では、iPhoneで撮影した写真をMacのアプリにそのまま持ってこられるようになる。
ニュース、ボイスメモ、ホームなどのiOSアプリがMacのアプリとして追加される。
(macOSについての別記事)
●iOSとmacOSのマージは「ない!」
Mac App Storeのデザイン改善や年内にMicrosoft Office 365とAdobe Creative Cloudが登場するという発表の後、フェデリギ氏が「Metal」と「Create ML」を紹介した。その後に、「AppleがiOSとmacOSを統合するのではないかといううわさがあるが、答えはNO!だ」と語った。
MacにはMacならではのトラックパッドやマウス、キーボードに合うアプリが必要だとし、統合はあり得ないと強調した。ただし、先に紹介したニュースやボイスメモのMac版のように、iOSアプリのMac版開発のための取り組みは社内で行っているとして、その仕組みを紹介した。
現在、macOSのUIはAppKitのオブジェクトで構築し、iOSではUIKitを使っている。UIKitをmacOSでも使えるようにすることで、iOSアプリのMacへの移植をしやすくする。2019年に利用可能になる見込み。
最後に再登場したクック氏は、4つのOSの新版の開発者向けは同日リリースし、公式版は今秋リリースすると語った。その後、開発者とその家族を賛美する動画が流れ、クック氏が開発者に感謝の言葉を述べて2時間超の基調講演は幕を閉じた。
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