2018年10月31日水曜日

ソフトウェア業界最大、IBMがRed Hatの買収で目指すものとは

 IBMとRed Hatは2018年10月28日(米国時間)、IBMがRed Hatを買収することで、2社が確定的な合意に達したと発表した。今後、Red Hatの株主と規制当局の承認を経て、2019年後半に買収プロセスが完了の見通しとしている。

 IBMはRed Hatの全株式を、1株当たり190ドルで現金により取得する。Red Hatの10月26日終値116.68ドルに比べ、62.8%のプレミアムがついている。買収総額は340億ドルに達し、ソフトウェア業界で過去最大の買収になるという。

 プレスリリースによると、買収完了後、「Red Hatは独立部門として、IBMのハイブリッドクラウドチームに参加する」ことになるという。Red Hatは現プレジデント/CEOのジム・ホワイトハースト氏と現経営陣が引き続き率いる。現在の本社やその他拠点、ブランド、活動もそのまま引き継がれるという。ホワイトハースト氏はIBMの会長/プレジデント/CEOであるジニ・ロメッティ氏直属の部下になるとともに、IBMの経営陣に加わる。

 IBMによる買収の目的は、プレスリリースのタイトルが「IBM to Acquire Red Hat, Completely Changing the Cloud Landscape and Becoming World's #1 Hybrid Cloud Provider」となっているように、ハイブリッドクラウド関連ビジネスの拡大だ。IBMはこの市場を、1兆ドル規模と見積もっている。

 プレスリリースは、次のように説明する。

 「今回の買収は最高のハイブリッドクラウドプロバイダー同士を結び付け、企業があらゆる業務アプリケーションを安全に(ハイブリッド)クラウドへ移行できるようにする。現在、企業は既に複数のクラウドを使っている。だが、調査によると業務ワークロードの80%がまだクラウドに移行していない。現在のクラウド市場にプロプライエタリな部分があることが阻害要因となっている。これが、複数クラウド間のデータおよびアプリケーションの移植性、マルチクラウド環境におけるデータセキュリティ、一貫したクラウド管理を阻んでいる」

 このメッセージは、Red Hatが最近自社のモットーとして掲げている「オープンハイブリッドクラウド」そのものだ。つまり、IBMはハイブリッドクラウドの世界におけるリーダーシップを確保するため、「オープンソース対応」ではなく、「オープンソースを起点として」事業を展開していくということを、今回の買収によって打ち出そうとしている。

 Red Hatのホワイトハースト氏は、社員に向けた電子メールで次のように表現している。

 「私たちは、まだ目の前にある市場機会の表面を引っかいているに過ぎない。オープンソースがエンタープライズITの未来だ。私たちは潜在市場機会が2021年に730億ドルに達すると確信している。ソフトウェアが世界を食べようとしており、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが起こっていることを考えれば、まさに『オープンソースがその主要な成分』だ」

 ホワイトハースト氏は、IBMによる買収で、Red Hatはオープンソースへの投資を加速できるとしている。また、世界における展開を拡大し、顧客やパートナーとの関係をさらに深められると述べている。

 また、Red Hat上級副社長/製品およびテクノロジー社長、ポール・コーミエ氏は自身のブログポストで、次のように述べている。

 「IBMはRed Hatとオープンハイブリッドクラウドに340億ドルを投資しようとしている。もし、オープンソースが今後も力を持ち続けることに何らかの疑いがあったとしたら、今回の発表はその議論に正式な終止符を打つ。そしてこれは始まりにすぎない」

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