Windows Phone 7は、マイクロソフトが開発するコードだけでなく、端末メーカーやチップ・メーカーが開発するファームウェアのコードも含まれています。これらをまとめたものがキャリアに手渡され、キャリアによるテストが始まります。
キャリアは、アップデートした端末が自社のネットワークで問題なく動作すること、独自アプリやサービスが正常に動作することを確認します。しかしWindows Phone 7を扱っているキャリアは世界に60以上あるので、テストが早く終わるキャリアとそうでないキャリアに大きな差が出てきます。大まかには、カスタマイズもネットワークも小規模なキャリアほど早く終わり、「メガキャリア」と呼ばれる大規模な事業者は時間がかかる傾向にあります。
NoDoアップデートの配布が始まると、2つの大きな問題が発生しました。
第一に、アップデートを受け取るタイミングがユーザーによって大きく異なってしまったことです。アンロック版のように、キャリアとの契約なしに端末を購入したユーザーは、すぐにアップデートを受け取ることができました。
しかしキャリアと契約して端末を入手したユーザーは、キャリアによるテストが終わるまでアップデートを受け取れませんでした。特にアメリカのAT&TやスペインのTelefonica(Movistar)はテストに時間がかかり、ユーザーは何カ月も待たされることになりました。
これにより、アップデートを受け取れないユーザーの不満が高まり、さらにはアップデートを無理やり受け取れるように改造するテクニックやツールが出回るなど、大きな混乱が発生しました。
第二に、アップデート中にエラーが発生し、正常に終了しないユーザーが続出したことです。この原因はいくつかあります。まずはアップデート前に実行される、バックアップ中の問題です。
Windows Phone 7のアップデートでは、既存のコンテンツをPCのストレージに完全にバックアップしたうえで、アップデートを適用します。このため、万が一アップデートに不具合があった場合でもリストアできます。
しかし8GBytesや16GBytesのストレージを備えた端末に音楽や動画を満載している場合、バックアップ中にPC側のストレージの空き容量が不足したり、粗悪なUSBケーブルにより転送エラーが発生したりするなどして、アップデートまでたどり着けないケースが続出しました。また、キャリアの独自アプリに含まれるネイティブ・コードが妨げになっているケースもありました。
これらの問題をマイクロソフトは認識しており、Web開発者向けのカンファレンス「MIX11」においてジョー・ベルフィオーレ氏自ら釈明する事態に発展しました。また、最新の"Mango"アップデートの配布時にはこれらの経験を踏まえて、配布プロセスを改善することが発表されています。
NoDoの適用により、バージョンは「7.0.7390(ビルド7390)」となります。
●セキュリティ・アップデート:7392
5月3日、Windows Phone 7の新しいアップデートとして、セキュリティ・パッチが配布されます。
当時、大手SSL認証機関であるComodo社が不正な証明書を発行してしまい、フィッシングなどの犯罪に悪用されることが懸念されていました。悪用を回避するために、デスクトップ版Windowsをはじめ、多くの環境にアップデートが配布されており、Windows Phone 7にもそれに追随した形でセキュリティ・パッチが提供されています。
このアップデートを適用することで、バージョンは「7.0.7392(ビルド7392)」となります。これは7.0系の最新版として、いまもなお世界中で利用されています。また、「7390」と「7392」はほとんど差がないため、まとめて「NoDo」と呼ばれることも少なくありません。
以上が、"Mango"が登場するまでの背景です。
0 件のコメント:
コメントを投稿