複数のパブリッククラウドを組み合わせて活用する「マルチクラウド」と、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて活用する「ハイブリッドクラウド」。この2種類のクラウド導入形態について、全く同じアプローチを取るベンダーはない。どのベンダーも、企業の間で高まるマルチクラウドやハイブリッドクラウドへの関心に応えようとしている。
「ハイパースケール」と呼ばれる大手クラウドベンダーには、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google、IBMの4社がある。ほとんどの企業、少なくとも既存のVMware環境を利用していてハイブリッドクラウド導入を目指す企業は、AWSとMicrosoftに魅力を感じているようだ。
AWSか、Microsoftか
フリーランスのITコンサルタントであるジェンス・ソルドナー氏によると、企業がAWSとMicrosoftのどちらを選択するかは、各社のニーズやシステム環境によって異なるという。
「実際のところMicrosoftとAWSは互角だ。ただしVMwareのユーザー企業を見ると、確かにAWSを選ぶ傾向がある。AWSは、自社のクラウドサービスで本格的にVMware製品を利用できるようにしているからだ」。ソルドナー氏は、VMwareが製品/技術の普及に貢献した個人に贈る「vExpert」の称号を持つ。
Microsoftは、自社のクラウドサービス群「Microsoft Azure」で、VMware環境からの移行を容易にするサービスを提供している。加えてMicrosoftの製品/サービスを利用する大規模IT部門を特に引き付けたいベンダー各社は、「Azure Stack」を利用したハイブリッドクラウドをアピールしている。Azure Stackは、Microsoft Azureの主要機能を、オンプレミス環境で実現可能にする、アプライアンス(「Azure Stack統合システム」)を中心とした製品群だ。「ユーザー企業がこれまでMicrosoft製品を利用してきた背景があり、既にパブリッククラウドでAzureの使用経験がある場合は、明らかにAzure Stackにやや傾く」(ソルドナー氏)
マルチクラウドとハイブリッドクラウドの市場で覇権を得ようとしているベンダーの顔ぶれは、さまざまだ。例えばDockerやRed Hatは、クラウドサービス間でのワークロードの移植性を高めるべく、コンテナ技術の普及を後押ししている。古くからのハードウェアベンダーも成果を得ようと参入している。
他にもCisco SystemsがGoogleと共同で、コンテナオーケストレーションシステムの「Kubernetes」、マイクロサービス管理システムの「Istio」、ハイパーコンバージドインフラなどをバンドルするハイブリッドクラウドサービスを提供中だ。
マルチクラウドとハイブリッドクラウドの市場で、どのベンダーが成功するか。それはハイパースケールベンダーであれ、古くからのハードウェアベンダーであれ、コンピューティングサービスや開発サービスでさらなる「スタックの充実」をどれだけ進められるかに、大きく掛かっている。
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