2018年10月26日金曜日

IT部門にとってマルチクラウド戦略を取った方がいい4つの状況

 1つのクラウドを快適に利用している場合、複数のクラウドを利用すれば、もっと快適になるだろうか。必ずしもそうとは限らないが、そうしたマルチクラウド戦略が理にかなう状況は確かにある。サービスの信頼性確保や、プライバシー要件への対応、柔軟性の向上、クラウドサービス利用の最適化に取り組む必要がある場合、IT部門はマルチクラウド戦略を検討すべきだ。

1.サービスの信頼性欠く
 企業がマルチクラウドを最初に採用したのは、クラウドの信頼性に不安を感じていたからだ。こうした企業は、災害が発生した場合でも、データ損失を防ぎ、事業継続を確保しようとする。クラウドプロバイダーが世界各地にデータセンターを展開し、安全なレベルの冗長性を提供できても、ゼロデイ攻撃や、従業員の不正によるインシデントのようなイベントが発生した場合、グローバルレベルでデータに影響が及ぶ可能性は依然としてある。

 クラウドにデータを保存している企業は、事業に不可欠なデータの損失を防止できる災害復旧戦略を実行しなければならない。複数地域にまたがるデータ複製サービスを提供する1社のクラウドプロバイダーに依存することは、冗長化対策を何も行わないよりは良いが、マルチクラウドサービスを利用すれば、さらにリスクを低減できる。

 1社のプロバイダーを利用して自社データの全てのコピーを保存している場合、IT部門は現状改善を真剣に考えなければならない。インシデントなどでデータが永続的に失われる心配がなくても、サービスプロバイダーが一時的なサービス中断を余儀なくされることはあり得る。数時間のダウンタイムが発生すれば、業務に支障が出てしまう。複数のクラウドプラットフォームにまたがってフェイルオーバー戦略を実装すれば、どのような中断が発生しても、企業はアプリケーションの稼働や従業員の生産性を簡単に維持できる。

2.プライバシー要件への対応
 クラウドでデータをホストしている企業は、個人情報の保存方法や保存場所を規定する業界の規制やポリシーの適用を受ける。例えば一部の国は、データを物理的に国内や地域内に置くことを義務付けている。グローバルサービスを提供する企業は、全ての地域にわたってデータの主権要件を満たせるクラウドプロバイダーを見つけるのに苦労するかもしれない。

 マルチクラウド戦略を取れば、こうした要件をケース・バイ・ケースで満たしつつ、変化する法律やルールに柔軟に対応できる。企業が1社のベンダーに頼り切っていると、規制が変わった場合、移行に大変な手間が掛かることがある。だがIT部門が、柔軟なデータ移行をサポートするマルチクラウド構成を実現していれば、新しいプロバイダーへの切り替えは、はるかに面倒が少ない。

 また、プライバシー保護に力を入れている企業も、マルチクラウド環境を利用して、機密データを分割し、複数のプラットフォームに分散することが可能だ。例えば、イレージャーコーディングを使用すれば、データを細分化してさまざまな場所に保存できる。こうすれば、1つのクラウドサービスにデータの完全なコピーを預けずに済む。プロバイダーのデータセンターが侵害されても、攻撃者は機密情報を読み取れない。

3.柔軟性の向上
 ベンダーロックインの回避は、企業がマルチクラウドサービスに目を向ける大きな理由となっている。

 IT部門が1つのインフラにコミットし、その中の1つのストレージプラットフォームにロックインされると、別のプラットフォームにデータやアプリケーションを移行するのに苦労することがある。マルチクラウドアプローチを取れば、柔軟性が向上し、特定の1社のベンダーへの依存が減るとともに、異種混在環境における、より高いポータビリティーが得られる。マルチクラウドアーキテクチャを構築しておくことで、アプリケーションやデータをあるクラウドから別のクラウドへ、あるいはオンプレミスからクラウドへ、はるかに簡単かつ迅速に移行できる。

 こうした柔軟性によって、ビジネス要件の変化や、一時的なビジネス要件に迅速に対応することも可能になる。例えばIT部門は、新しい販売キャンペーンの結果として、ストレージ容量の予想外の拡大要求に応えたり、新しい分析製品のテストのような1回限りのプロジェクト向けに一時的なリソースを提供したりすることが、簡単にできるようになる。

4.クラウドサービスの最適化
 クラウドプロバイダーのサブスクリプションは、リソースの使用状況や、使用するアプリケーションのタイプなどによってコストが違ってくる。マルチクラウド戦略を取る企業は、ストレージやワークロードの要件に基づいて、提供されている中で最も経済的なサービスを利用できる。

 また、企業はマルチクラウドにより、パフォーマンスメリットも享受できる。例えば、データセンターの設置場所に基づいてプロバイダーを選択し、アクセスするユーザーの近くでアプリケーションやデータをホストできる。さらに、ストレージやアプリケーションの特定の要件に他のプロバイダーより効率的に対応でき、特定のワークロードで優れたパフォーマンスを発揮するプロバイダーがあるかもしれない。マルチクラウドを使用すれば、現在のニーズと利用可能なサービスに基づいて、最もパフォーマンスの高いプラットフォームを選べる。

 クラウドプロバイダーによって、提供する機能やサービスの特徴も異なる。ビジネスインテリジェンスや機械学習機能に強いプロバイダーもあれば、ストレージオプションが充実していて、データセンターの世界展開が進んでいるプロバイダーもあるかもしれない。マルチクラウド戦略を取れば、特定のニーズに最適なサービスを提供するクラウドプロバイダーを組み合わせて利用できる。幾つかの分野で適切な機能を提供するにすぎない1つのサービスで妥協する必要はない。

マルチクラウド戦略を選択する
 クラウドサービスを最大限に活用したい場合、マルチクラウドアプローチを真剣に検討すべきだ。このアプローチなら、あるクラウドプラットフォームが特定のニーズを満たさなければ、別のプラットフォームに簡単に乗り換えられる。

 しかし、マルチクラウドセットアップが常に"正解"とは限らない。効果的なマルチクラウド戦略を実装するのは、容易なことでない。IT部門は、全ての要素をきちんと安全に組み合わせるのに必要なリソースやノウハウを持っていなければならない。

 1社のクラウドプロバイダーを利用するメリットもある。大手のプロバイダーは、複数プロバイダーのサービスを組み合わせて使う場合には得られないような多様なサービスのセットを、割引料金で提供できる。また、1社のプロバイダーを利用する場合は、中央管理コンソールで全てのサービスを管理できる。マルチクラウドでは、まだこうした管理は不可能だ。

 それでも、あらゆるタイプの企業がマルチクラウドを利用することで得られる明確なメリットがある。信頼性の確保、プライバシーの保護、柔軟性の維持、クラウドエクスペリエンスの最適化だ。

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