行動を「追跡」されるのが当たり前だからこそ
インターネット上のサービスは、メール、検索、ドキュメント作成、地図、ストレージなど、そのほとんどが"無料"で使えるようになりました。これって、よく考えるとものすごいことだと思いませんか?
今ではWebブラウザも「無料で使えて当たり前」と誰もが考えています。古くからインターネットに親しんでいる方は「Netscape」というブラウザをパッケージで買ってセットアップした経験があるかもしれませんが、もはや、それも忘れられつつある歴史なのかもしれません。近ごろはOSの大規模アップグレードですら無料ですし。
ビジネスの原則に照らし合わせれば、それなりの工数を費やして開発したサービスを無料で提供できるということは、その投資を上回る何らかのリターンがあるはずです。サービスによっては、ごく一部の有料会員が全ての無料会員をまかなう、いわゆる「フリーミアム」的なビジネスモデルもあるでしょうが、ユーザーの利用状況を"追跡"し、そのデータを元に商売する、というケースも少なくありません。
最近では、そのような追跡に関する懸念も大きくなりつつあります。欧州におけるGDPR(EU一般データ保護規則)の展開も、「どこまでが個人に属し、個人が管理すべき情報なのか」をはっきりさせるためのものだと思っています。
「気にしないから考えない」のではなく、気にする人が一人でもいれば、それを保護するための仕組みを考えるべきでしょう。インターネット創生期の偉人、ティム・バーナーズ=リー氏が「個人情報をユーザーの手に戻すプロジェクト」、Solidを立ち上げたのも、現在のいき過ぎた情報集約をなんとかしたい、という思いの表れでしょう。
みんなが使うサービスの「代替」を持っておこう
しかし、私たちの周りにはすでにとても便利な無料サービスがあふれていて、もはやそれらなしにはIT生活ができないほどになっています。無料ではありませんが、スマートフォンだって、利用履歴を取得されるデバイスであることを忘れてはいけません。
私自身、メールはGmailを、検索はGoogleを多用しています。SNSは使わない判断をすれば何とかなるかもしれませんが、特にGoogleに関しては依存度が非常に高いと言わざるを得ません。皆さんもGoogleマイアクティビティを眺めてみれば、その依存度をはっきりと理解できるのではないかと思います。可視化できる仕組みを用意しているGoogleも立派ですね。
そんなことをしているうちに、なかなか面白いページを教えてもらいました。Googleをやめたとして、"次はどうする"というのをみんなで投票する「No More Google」というページです。
Googleの代替になるツールを投票するWebサイト「No More Google」
例えばWebブラウザの場合、シェアの高いGoogle Chromeの代わりに、FirefoxやVivaldi、Safariがランクインしていますし、あまりに強力になり過ぎたGoogle検索の代わりに、プライバシー保護と非トラッキングを掲げるDuck Duck Goが選ばれています。その他にも、私も聞いたことがなかったサービスがいっぱいあり、試しにWeb解析サービスのGoogle Analyticsの代替として名前が挙がっている「Matomo」(Piwik)を少し触ってみたところ、十分代替になり得るツールでびっくりしました。
Google検索の代替として人気の「Duck Duck Go」。トラッキングや広告ターゲティングを行わないことをウリにしている
企業システムでは「ロックインはよくない」ということが定説になっていますが、個人でもこれは同様です。特定のサービスや企業に依存してしまうと、情報漏えいなどの問題に巻き込まれる可能性が高まります。
幸い個人利用においては、サービスのスイッチングコストもさほどではありません。クラウドストレージサービスの乗り換えも簡単ですし、Webブラウザの変更もブックマークの移行程度で済むでしょう。常に"代わりはいくらでもいる"という状況を作っておくことは、無料サービスを利用する際の「自己防御」として、今後重要になっていくかもしれません。
私もNo More Googleを見てから、iPhoneとmacOSの標準検索エンジンをDuck Duck Goに変えてみました。検索に若干コツがいりますが、思えば昔の検索エンジンは全てこんな感じで、答えが一発で出てくることなどありませんでしたね。少し懐かしい思いを持ちつつも、「一発で答えが出てくるのは、むしろ恐ろしいことではないか」とも感じます。
今、もしかしたら"デジタルの巨人たち"の手のひらに乗せられているかも——そう感じたときには、ぜひ代替案を。変えてみたら意外と快適だった、と感じるかもしれませんよ。
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