AI(人工知能)技術を使って、社内の決裁申請や契約書の法務チェックなどを効率化するサービスを、NTTテクノクロスが開発している。申請する社員の作業を軽減することで、経理・法務部門の確認作業も効率化する狙い。2019年春のリリースを目指す。
人事・経理などのバックオフィス業務では、現場から日々送られてくる稟議書など大量の申請を少人数でチェックする必要がある。また、提出された稟議書に記入漏れや間違いがあったり、権限規定の変更といった業務ルールの変更があったりすると、申請を差し戻し、それをまた申請者が修正して再提出する──という煩雑な作業が発生する。
現場の従業員は「早く決裁申請を承認してほしい」と思っているが、バックオフィスも「最低限の書式やルールは把握してほしい」と悩んでいる。NTTテクノクロスは、双方がストレスを抱えている状態と指摘。
こうした企業の業務ルールや申請のワークフローなどをAIに学習させることで、申請者向けに稟議書のひな型を作成したり、承認者向けにチェックすべき項目の可視化をしたりして、両者の作業負荷を軽減できるとしている。
同社の戦略ビジネス特区 イントラプレナーの安田航さんは「システムへの入力や転記などの単純作業はRPA(Robotic Process Automation)で代替できるが、企業独自の複雑な業務ルールに対応するにはAIが必要。決裁者の権限など、社内ルールは次々と変わっていくもので、その都度学習させる必要がある」と説明する。
各企業が蓄積してきた決裁申請や契約書のデータを収集・分析し、NTTグループのAI関連技術「corevo」の自然言語処理技術を活用することで過去データからルールを抽出。海外出張申請をしたい場合は、ツール内で「海外出張」と入力すると、目的や日程、出張先や経費など、書類のひな型を自動で作成する。「契約日は開始日よりも前である必要がある」など、修正すべき項目などはポップアップで表示し、差し戻しのリスクをスコアリング(数値化)し、警告を促す。
法務部に提出する前に、申請者側で契約書の内容を事前にチェックできるツールも提供。文書の修正前後の「差分」を表示したり、法律や社内ルールと照らし合わせて間違いがないかを判定したりする。例えば、「瑕疵(かし)担保期間」などの特定の単語に反応し、「法律や社内ルールで定められた期間内になっているか」などを自動でチェックし、リスクを数値化する。法務部は、リスクスコアが高い契約書や、問題のある箇所のみを重点的にチェックすればいいので、いちから目視するより手間を省けるとしている。
安田さんは、「AIに業務ルールを学習させることで、いちいち書類作成時にマニュアルを探したり、全社員が読めるようにマニュアルを集めたりといった作業をする必要がなくなる。バックオフィスの停滞は全社のビジネスの停滞につながるので、これを改善したい」と説明する。
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