[基本解説→多群比較のためのANOVA; analysis of variance 分散分析法]
→[検定-1要因多群-2要因多群] ←→[基本解説-多重比較検定]
分散分析:ANOVAとは | |
* 2つの平均値の相違を検討するにはt検定を用いるが、 3つ以上の平均値の相違を検討する場合にはANOVAを用いる。 | |
↓ | すべての群を比較するのではなく、要因による効果を検定する。 |
↓ | 分散を分析するのではなく、分散を用いて、多群の平均値を分析する検定法である。 |
分散分析には、要因分散分析と反復測定分散分析とがある。 | |
個々のデータを変動させている要因を分解し、分散分析表を作成して検定する。 | |
↓ | F値は、フィッシャーのイニシャルである。 |
要因配置 *分散分析には、独立変数と従属変数を設定する。 |
*それぞれの独立変数がそれぞれ「独自」に従属変数へ与える単純効果 |
*独立変数を組み合わせた場合の複合効果 |
◎なぜ3群以上を比較するときに、2群間の検定ではいけないか? A, B, Cの3群がある時、
A-B間、A-C間、B-C間で、p値=0.05としてStudent's t-testを行った場合、 |
◎ | 比較したい群が3群以上ある場合 | ||||||||||||||||||||
| ← | ANOVAの前提条件
|
分散分析は、要因で分類された群を比較する検定法。
要因 | =対応のないt検定を3群以上に拡張したもの。 |
反復測定 | =対応のあるt検定を3群以上に拡張したもの。 |
*「対応のある・・・・検定」は、データの対応を考慮して行う検定。
*対応のあるt検定は、2群を比較するのではなく、群に加わった処理により差が生じたかを、データの対応を考慮して検定する。
- 処理前の群内のデータは均一かもしれないが、個体差が大きいかもしれない。
→元々個体差が大きい場合には、処理後の個体のばらつきは、処理前のばらつきの範囲内かもしれない。
→しかし、一定量、一定方向に変化が生じた場合には、その変化量=差を比較すれば、差を検定できる 。
[処理前群の平均値] と [処理後群の平均値] の2標本t検ではない。 |
[(処理後の値)ー(処理前の値)]の平均値=「差」の平均値の1標本t検定 |
- 差を比較するので、個体差は無視できる。
- 従って「対応のないt検定」ではとらえられない変化を、「対応のないt検定」でとらえることができる。
=「対応のないt検定」は、「対応のないt検定」より有意差が出やすい。
↓反復測定分散分析も
- 1標本に加わった処理の効果を、データの対応を考慮して、経時的に評価する。
- 標本の個体差が大きく、処理の効果が小さい場合に、要因分散分析では有意差がでない場合でも、反復測定分散分析で、有意差が出る場合がある。
- 1標本中のデータがばらついていても、変化に一定の傾向があれば、反復測定分散分析で、その「差」が検出できる。
- 比較のための誤差変動は、要因分散分析のものよりも、反復測定分散分析のものは小さい。
→群内のデータのばらつきを差し引いているので、変化をとらえるとことができる。 - 各群の群内のデータのばらつきが小さい場合には、2つの検定方法の差はなくなる。
---要因分散分析のほうが検出力は弱いので、多重比較検定で第1種の過誤をおかす心配はない。
↓多重比較検定
- 反復測定分散分析後のポストホックテストとして、通常の多重比較検定は行えないということになっている。
---通常の多重比較検定は、対応したデータを配慮しない検定であるからである。
→データのばらつきが大きい場合には、対応したデータを考慮しないポストホックテストでは、差が充分検出できにくいのだろう。
→データのばらつきが小さい場合には、要因分散分析との差も小さいので、通常の多重比較検定も行っても、正しい評価かもしれない。 - StatViewの最終版では、Factorial ANOVAとRepeated measures ANOVAの多重比較検定の結果が異なる。
StatViewでは、多重比較検定でも、データの対応を考慮した計算になっているのだろうか?
*「対応のあるデータ」は、単に同一個体のデータということではない。
「反復測定した各データ」から「コントロール値」を差し引いた「変化量」は、
個体差によるばらつきが取り除かれているので、データは独立していると考えられる。
「同一データの反復測定」→反復測定分散分析
「同一データの変化量の検定」→要因分散分析
主効果だけではなく、複数の因子に「交互作用」があるかどうかも検定する。
主効果:各要因の単独の効果
交互作用:要因が組み合わさって生じる効果---相乗作用、相殺作用
要因Aの効果が、要因Bの効果に影響するかどうか?
┏交互 | 作用なし | --- | 各群が同様に変動傾向を持つ。→→→要因ごとの多重検定 注) |
┗交互 | 作用あり | --- | 各群の変動が異なる。→→→→→→すべての群の多重検定 |
| ┣相乗作用 | --- | 右上がりまたは右下がりの度合いが群によって異なる。 |
| ┗相殺作用 | --- | 右上がりの群と右下がり群が存在する。 |
注)交互作用がない場合には、多の要因によって分類される群と比較する必要が生じない。 |
◎分散分析は、データを変動させる要因を分析する検定法である。
- データを変動させる要因を分解し、「分散分析表」を作成する。
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- F値は大きいほど、p値が小さくなる。
- 統計のためのソフトを利用しない場合は、教科書巻末のF統計量から、p値がもとめられる。
◎分散分析表 (計算例は下↓)
| 自由度 | 平方和 | 平均平方和 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | | |
[要因A] | ・ | ・ | VA | VA/VR |
| ・ | ・ | ←要因Aのp値 | |
残差 | ・ | ・ | VR | | | | | |
| 自由度 | 平方和 | 平均平方和 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | | |
[要因A] | ・ | ・ | VA | VA/VR |
| ・ | ・ | ←要因Aのp値 | |
[要因B] | ・ | ・ | VB | VB/VR |
| ・ | ・ | ←要因Bのp値 | |
[要因A]*[要因B] | ・ | ・ | VA-B | VA-B/VR |
| ・ | ・ | ←交互作用のp値 | |
残差 | ・ | ・ | VR | | | | | |
One -factor repeatd measures ANOVA
| 自由度 | 平方和 | 平均平方和 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | | |
[対照] | ・ | ・ | VR1 | | | | | | |
カテゴリー[反復測定因子B] | ・ | ・ | VB | VB/VR2 |
| ・ | ・ | ←反復測定のp値 | |
カテゴリー[反復測定因子B]*[対照(群)] | ・ | ・ | VR2 | | | | | |
Two-factor repeatd measures ANOVA
| 自由度 | 平方和 | 平均平方和 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | | |
[群間因子A] | ・ | ・ | VA | VA/VR1 |
| ・ | ・ | ←群間のp値 | |
[対照(群)] | ・ | ・ | VR1 | | | | | | |
カテゴリー[反復測定因子B] | ・ | ・ | VB | VB/VR2 |
| ・ | ・ | ←反復測定のp値 | |
カテゴリー[反復測定因子B]*[群間要因A] | ・ | ・ | VB-A | VB-A/VR2 |
| ・ | ・ | ←交互作用のp値 | |
カテゴリー[反復測定因子B]*[対照(群)] | ・ | ・ | VR2 | | | | | |
◎誤差=(同一群内に、)偶然によって生じたばらつき
残差(Residual)
- ANOVAは、[要因変動]と[誤差変動]を比較する。
- 反復因子のための[誤差変動]は、要因因子のための[誤差変動]から[実験個体誤差変動=群内のばらつき]を引いたもの。
- 反復因子の比較のためには、
- 群内のばらつきが大きい場合には、反復測定分散分析の[誤差変動]が小さくなるので、有意差が出やすくなる。
- 群内のばらつきが小さい場合には、2つの検定方法の差はなくなる。
- 群内のばらつきが大きい場合には、反復測定分散分析の[誤差変動]が小さくなるので、有意差が出やすくなる。
| 要因分散分析 | 反復測定分散分析 | |
2要因 | 要因A) | 群間因子 | 群間因子 |
要因B) | 群間因子 | 反復測定因子 | |
[全体変動] | [群間変動] | [個体間変動] | |
[要因A変動]+ [要因B変動] | [個体間変動] | ||
[要因A変動] | [要因A変動] | [個体間変動] | |
[要因B変動] | [要因B変動] | [実験個体要因変動]=[反復測定変動] | |
要因A)のための | [群内変動]=[誤差変動] | [実験個体誤差変動] | |
要因B)のための | [群内変動]=[誤差変動] | [実験個体変動]ー[実験個体誤差変動] | |
交互作用変動のための | [群内変動]=[誤差変動] | [実験個体変動]ー[実験個体誤差変動] |
- 暗算で計算できるような架空データ。
- Repeated measures様のデータであるが、FactorialとRepeated measuresの計算方法を比較するための例である。
データ
| | 基本統計量
|
-
Factorial ANOVAの分散分析表
| 自由度 | 平方和 | 平均平方 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | |
時間経過 | 2 | 56 | 28 | 6 |
| 12 | 0.746 | |
残差 | 9 | 42 | 4.667 | | | | |
·
- 群間比較:[群間変動]と[群内変動]の比較 (列間比較)
- [群間変動]:[処理前]-[処理中]-[処理後]間の変動
- [群内変動]=残差:個体A〜個体Dの個体差
- 群数=3群
- 各群の個体の観測値n=4
時間経過 | 自由度 | =[群数]-1 | 3-1=2 |
平方和 | ={([群間平均]-[全平均])2の和}x各群のn | {(3-5)2+(4-5)2+(8-5)2}x4=56 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 56/2=28 | |
F値 | =[時間経過の平均平方]/[残差の平均平方] | 28/4.667=6 | |
残差 | 自由度 | =[群数]x(n-1) | 3x(4-1)=9 |
平方和 | =([個体の観測値]-[群平均])2の和 | {(3-3)2+(7-4)2+(11-8)2=18 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 42/9=4.667 |
-
Repeated Measures ANOVAの分散分析表
| 自由度 | 平方和 | 平均平方 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | |
対照 | 3 | 30 | 10 | | | | | |
カテゴリー時間経過 | 2 | 56 | 28 | 14 |
| 28 | 0.958 | |
カテゴリー時間経過*対照 | 6 | 12 | 2 | | | | |
·
- Factorial の[群間変動]は、Repeated Measuresの[群内変動]
- [群内変動]とRepeated Measuresの[誤差変動]の比較
- [群内変動]:[処理前]-[処理中]-[処理後]間の変動
- [対照]=それぞれの観測個体内の誤差・・・これを差し引く!
- Repeated Measuresのための誤差は、Factorialのための誤差から[対照]の誤差を差し引く
対照 | 自由度 | =[各群のn]-1 | 4-1=3 |
平方和 | ={([群内平均]-[全平均])2の和}x群数 | {(7-5)2+(4-5)2+(3-5)2+(6-5)2}x3=30 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 30/3=10 | |
カテゴリー | 自由度 | =[群数]-1 | 3-1=2 |
平方和 | ={([群間平均]-[全平均])2の和}x各群のn | {(3-5)2+(4-5)2+(8-5)2}x4=56 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 56/2=28 | |
F値 | =[時間経過の平均平方]/[残差の平均平方] | 28/2=14 | |
カテゴリー | 自由度 | =[残差の自由度]-[対照の自由度] | 9-6=3 |
平方和 | =[残差の平方和]-[対照の平方和] | 42-30=12 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 12/2=6 |
- 暗算で計算できるような架空データ。
- Repeated measures様のデータであるが、FactorialとRepeated measuresの計算方法を比較するための例である。
データ
| | 時間
| 薬物
| | 基本統計量
|
-
Factorial ANOVAの分散分析表
| 自由度 | 平方和 | 平均平方 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | |
時間 | 2 | 208 | 104 | 33.429 |
| 66.856 | 1 | |
薬物 | 1 | 24 | 24 | 7.714 |
| 7.714 | 0.755 | |
時間*薬物 | 2 | 16 | 8 | 2.571 |
| 5.143 | 0.438 | |
残差 | 18 | 56 | 3.111 | | | | |
·
時間 | 自由度 | =[時間の群数]-1 | 3-1=2 |
平方和 | ={([群間平均]-[全平均])2の和}xn | {(3-6)2+(5-6)2+(10-6)2}x8=208 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 208/2=104 | |
F値 | =[時間の平均平方]/[残差の平均平方] | 104/3.111=33.429 | |
薬物 | 自由度 | =[薬物の群数]-1 | 2-1=1 |
平方和 | ={([群間平均]-[全平均])2の和}xn | {(5-6)2+(7-6)2}x12=24 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 24/1=24 | |
F値 | =[時間の平均平方]/[残差の平均平方] | 24/3.111=7.714 | |
時間*薬物 | 自由度 | =([時間の群数]-1)x([薬物の群数]-1) | 2x1=2 |
平方和 | =[総変動]-[時間変動]-[薬物変動]-[誤差変動] | 304-208-24-56=16 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 16/2=8 | |
F値 | =[時間の平均平方]/[残差の平均平方] | 8/3.111=2.572 | |
残差 | 自由度 | =[群数]x(n-1) | 6x(4-1)=18 |
平方和 | =([個体の観測値]-[群平均])2の和 | {(3-3)2+(7-4)2+(11-8)2=18 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 56/18=3.111 | |
総和 | 平方和 | =([個体の観測値]-[群平均])2の和 | {(3-6)2+(7-6)2+(11-6)2=35 |
-
Repeated Measures ANOVAの分散分析表
| 自由度 | 平方和 | 平均平方 | F値 | p値 | ラムダ | 検出力 | |
薬物 | 1 | 20.167 | 20.167 | 3.524 |
| 3.524 | 0.345 | |
対照(群) | 6 | 34.333 | 5.722 | | | | | |
カテゴリー時間 | 2 | 212.333 | 106.167 | 76.440 |
| 152.880 | 0.958 | |
カテゴリー時間*薬物 | 2 | 16.333 | 8.167 | 5.880 |
| 11.760 | 0.778 | |
カテゴリー時間*対照(群) | 12 | 16.333 | 1.389 | | | | |
薬物 | 自由度 | =[薬物の群数]-1 | 2-1=1 |
平方和 | ={([群内平均]-[全平均])2の和}x群数 | 20.167 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 20.167/1=20.167 | |
F値 | =[薬物の平均平方]/[対照(群)の平均平方] | 20.167/5.722=3.524 | |
対照(群) | 自由度 | | 6 |
平方和 | ={([群内平均]-[全平均])2の和}x群数 | 34.333 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 34.333/6=5.722 | |
カテゴリー時間 | 自由度 | =[時間の群数]-1 | 3-1=2 |
平方和 | ={([群間平均]-[全平均])2の和}x各群のn | 212.333 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 212.333/2=106.167 | |
F値 | =[時間の平均平方]/[カテゴリー時間*対照(群)の平均平方] | 106.167/1.389=76.440 | |
カテゴリー時間 | 自由度 | =([時間の群数]-1)x([薬物の群数]-1) | 2x1=2 |
平方和 | | 16.333 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 16.333/2=8.167 | |
F値 | =[カテゴリー時間*薬物の平均平方] | 8.167/1.389=5.880 | |
カテゴリー時間 | 自由度 | =([時間の群数]-1)x([薬物の群数]-1) | 12 |
平方和 | | 16.333 | |
平均平方 | =[平方和]/[自由度] | 16.333/12=1.389 |
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http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/stat/com-anova.html
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