企画から運用まで、格段階でまず何を考え、どういう点に留意するべきなのか、そしてフィーチャーフォンとスマートフォンではどいうった点が違ってくるのか、全力案内!の経験を通じて同氏が得たノウハウの発表である。
■ 【1】企画のポイント
企画の際にまず考えるべきことは、「そのサービスによって、誰に、どうなってほしいのか」「なぜ、それが必要か」という点である。そのためには、自身がユーザーになり切ることや、ユーザーに一番近い立場の人の意見を聞くことが重要とのこと。
「全力案内!」の場合には、iPhone版を開発する際に、さまざまな機能のアイデアがあったが、実際の初期リリースでは5つのフィーチャーのみに絞って実装を行ったという。その中には、フィーチャーフォン版ですでに提供されていた「ナビ機能」も含まれていなかった。「全力案内!」のコンセプトを実現するために、最も重要な機能のみに絞って実装し、スモールスタートで磨き上げていったそうだ。
■ 【2】仕様・設計のポイント
仕様・設計の段階では、まず実機を買い、そしてそれを使い倒すことが何よりも先決である。そうすることで、その機種の特性や問題点、ユーザーの利用シーンなどが見えてくる。「特に、ユーザーの日常において、どこで使ってもらえるかを考えることは極めて重要だ」と北村氏はいう。この段階で、フィーチャーフォンとスマートフォンでは、さまざまな前提が異なってくるという。
- フィーチャーフォン
- 操作性の前提
- 物理キー中心の操作
- 片手で使える
- 見た目の前提
- 画面サイズがある程度限られている
- プラットフォームの前提
- SUID認証
- マイメニュー登録
- 操作性の前提
- スマートフォン
- 操作性の前提
- タッチ中心の操作
- 両手で使う場合もある
- 見た目の前提
- 画面サイズが多様
- Androidでは画面密度の違いもある
- プラットフォームの前提
- GPSやセンサ、Wi-Fiなどが使える
- APIによる課金
- アプリ間連携が可能
- マルチタスク
- 操作性の前提
フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行の場合、現実的にはUIやサービス仕様は再構築が必要で、特にスマートフォン特有の操作性を考慮することや、フィーチャーフォンの機能をどこまで実装するのかを明確にすることなどが重要とのことである。
■ 【3】開発・テストのポイント
開発・テストの段階では、特に1人当たり複数台の実機が必要となる。実機がなければ分からないことが、たくさんあるからだ。
そして、実機を使って開発するうえで大事なポイントは「節電」である、と北村氏は強調した。バッテリへの影響はアプリの評価に大きく影響する。特に「全力案内!」の場合は長時間続けて使われるケースもあるため、センサを繋いでの実測とバッテリ計測アプリを併用しながら開発を進めたという。
また、フィーチャーフォンとスマートフォンではライフサイクルが大きく異なるので、その違いにも注意する必要があるとのこと。
テスト段階では、特にGPSや各種センサ、Bluetooth、SDカードなどといったデバイス固有の機能へアクセスする部分は入念にチェックする必要がある。可能であればターゲット機種ごとに確認するのが望ましいという。
また、課金系のAPIについては、通信キャリアによって課金遷移が異なるので、注意が必要とのことだ。
■ 【4】デプロイのポイント
デプロイの段階では、アプリのサイズに気を付ける必要がある。スマートフォンの場合、大容量アプリの配布も可能だが、ユーザーの通信環境や端末容量を考慮しなければならない。
SDカードによるインストールを許可しない場合には、端末の内蔵メモリを圧迫する可能性もあるので、最終的にアプリがどれだけのサイズになるのかをアナウンスする気遣いも必要とのことだ。
■ 【5】リリースのポイント
iPhoneの場合、App Storeでの配布には審査が必要で、場合によっては差し戻されることもあるので、それを前提としたスケジュールを組まなければならない。
その一方で、審査に入って以降は差し戻しや旧版へ戻すことはできないので、その点にも注意が必要となる。
■ 【6】運用のポイント
Webサービスの場合、「リリースすれば完成」というわけではない。安定した運用がサービスの評価を大きく左右する。スマートフォン特有の問題としては、マーケット側のスケジュールなどがアプリの販売などに大きく影響してくる点が挙げられた。
例えば、App Storeでは一斉に価格変更が行われたケースもある。そのような事態に対応するため、マーケットのアナウンスや開発者向けメールは注視しておかなければならない。その他、利用者統計情報などを参考にマーケットを動きを把握することも重要だと北村氏は指摘している。
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