米グーグルは10月19日、香港で開催されたイベントでモバイル向けOS(基本ソフト)の最新版「アンドロイド4.0」を発表した。日本ではNTTドコモが11月にも、同OSを搭載する韓国サムスン電子のスマートフォン「ギャラクシーネクサス」を発売する予定。10月14日に登場した米アップルの「iPhone4S」の強力なライバルになる。
今回発表された最新版はグーグルにとって、スマートフォンとタブレット端末の両市場で覇権を握るうえで、重要なものとなる。
グーグルはこれまでスマートフォン向けには「2.0系」、タブレット端末向けは「3.0系」と異なるバージョンのアンドロイドOSをリリースしていたが、最新版ではこれを統合した。今後登場するアンドロイド端末の搭載OSはスマートフォン、タブレットともに4.0系になる。
グーグルがOSのバージョン系列を統合した背景には、アプリケーションの互換性の問題がある。アンドロイドOSは、iPhoneやiPadに搭載されている「iOS」に比べて搭載台数のシェアは上回っているものの、対応アプリの販売金額では水をあけられている。スマートフォンやタブレット端末のアプリ市場でダウンロードされている有料アプリのうち、8〜9割はiOS向けとも言われている。
iOS向けアプリが強い理由の1つに互換性の高さがある。iPhoneとiPadは基本的に同じバージョン系列のiOSを搭載しているのでアプリの開発がしやすく、ユーザーも互換性をあまり意識せずにアプリを購入できる。一方アンドロイド端末は、スマートフォンとタブレットで異なるバージョン系列のOSを搭載しているため、アプリの互換性が低い。
こうした互換性の問題が、アプリ開発者とユーザーの双方にとって障壁となっていた。グーグルは新版OSでバージョン系列を一本化。互換性の問題を減らすことで、アプリ市場の活性化を狙う。
今回の新版は、アンドロイド陣営がアップルに対抗するための有力な武器になり得るだろう。一方で、アンドロイドOSを採用する日本の端末メーカーにとっては、必ずしも手放しで喜べるものでもなさそうだ。
新版ではOSの操作性や標準搭載のアプリなど、様々な部分で機能強化が図られている。例えば、カメラ機能ではパノラマ撮影や連写モードなどを新たに搭載。セキュリティー機能として、端末の所有者がカメラをのぞき込むだけでロックを解除できる「顔認証技術」も追加された。このほか、端末同士を近づけるだけでアドレスや音楽、動画などを交換できる機能も備える。
こうした機能の多くは、日本製の携帯電話ではそれほど目新しいものでもない。むしろ日本勢にとっては、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)で培ってきた「お家芸」とも言える技術だ。これらの機能がOSの標準として搭載されることは、メーカー間の端末の差別化が難しくなることを意味する。これまで日本勢が優位とされてきた機能の面で、海外勢に追いつかれることになりかねない。
だからといって、アンドロイドOSがスマートフォン市場の一角を担うようになった今、同OSを「搭載しない」という選択肢はない。アンドロイド陣営とアップルは世界各地で特許紛争を繰り広げており、新版の登場により日本勢がこの争いに巻き込まれないとも限らない。日本のメーカーは皮肉にも、新版の登場で一層、厳しい戦いを迫られることになりそうだ。
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